博士のフェス探訪記 | 福島「LIVE AZUMA」篇

フェスティバルライフでもしばしば取り上げられており、ずっと気になっていた「LIVE AZUMA」に実際に行こうと思ったのは、公式HPに掲載された東北拉麺屋台村の紹介記事がきっかけだった。

紹介されているラーメンがどれも美味しそうだったのもあるが、フェスの主役が音楽だとすれば、決して主役ではない飲食エリアのいちコンテンツをこの熱量で紹介していることに興味を持ったのだ。フェスに対するただならぬ情熱というか、作り込みの凄みを感じた。

【LIVE AZUMAインタビュー】地元密着型フェスが愛される理由。80店舗の出店に加え、今年はラーメン、アートも強化!

関西から遥々福島へ

自宅(兵庫県)からフェスへ向け、飛行機、バス、新幹線を乗り継いでJR福島駅へ、そこからシャトルバスで20分ほど揺られ会場のあるあづま総合運動公園へ。ちなみにシャトルバスは路線バスを使ったものだった。観光バスも良いが、路線バスは味があって良い。

着いたところはたいへん静かな山の奥で、そこにたいへん綺麗で立派な野球場のほか、福島ユナイテッドFCのホームスタジアムであるとうほう・みんなのスタジアム、体育館、テニスコートなどがある。 全体的に整備が行き届いており、トイレも含めて清潔感がある良い公園だ。

ステージは2つで、メインステージとなるAZUMA STAGEは野球場に設置されている。クリエイティブマンが手がけていることもあり、どうしてもサマーソニックを彷彿させる。東京会場のマリンステージのようであり、大阪会場のマウンテンステージのようでもある。綺麗な人工芝を直接踏みしめることができるのが気持ちいい。静かな山奥でおこなわれるスケールの大きなスタジアムライブはなんとも浮世離れしており、独特の世界観に浸ることができる。

もう一つのパークステージはスタジアム周辺の駐車場に設置されている。こちらは屋台村の奥にあって、周囲が木々に囲まれているので、森の中でライブしているような雰囲気がある。ステージはローカルフェスによくある感じの大きさで、アーティストとの距離が近く、たいへんアットホームで心地よい。ふたつのステージのテイストが全く異なるが印象的だった。

ローカルフェスの面白さが詰まっている

ステージ以外の飲食、アート、クラフトなどはパークライフという無料エリアになっており、チケットを持っていなくても楽しむことができる。飲食だけでも 球場前、飲食街、福島フードパーク、東北市場酒場、そして東北拉麺屋台村とテーマごとにエリアが分かれており、どれも魅力的な食べ物で埋め尽くされていた。

ワークショップなどの出展も充実しており、 多くの来場者がブースの前で足を止めていた。珍しいところでは、移動水族館と移動昆虫館があり、子供たちの人気を集めていた。いや、ヘラクレスオオカブトは大人が見てもテンションが上がった。キッズエリアはただ子供が遊ぶだけでなく、福島の魅力やエコについて考える仕組みになっており、こちらも大人だけでも充分楽しむことができた。この辺りはローカルフェスの面白さが詰まっていたように思う。

また、福島テレビがブースを出したり、取材をしたり、お客さんとのコミュニケーションを積極的にとってイベントを盛り上げているのも印象的だった。きっと地元の人々に愛されている放送局なのだろうと想像した。

全体的に情報量が多く、会場を歩いて回るだけで福島に関する知識が増えたように思う。そのおかげで、フェス終了後に居酒屋でいかにんじんと円盤餃子を食べることができたのはいい思い出だ。

そして何よりこのフェスの居心地の良さは、落ち着いた上品なお客さんと笑顔でもてなしてくれるスタッフによるところが大きい。ある男性スタッフは、私が会場内でゴミを拾って歩いていたところ、後ろから駆け寄ってきて「ありがとうございます」と引き取ってくれた。夏フェスと違って穏やかな気持ちで参加できるのが、秋フェスの良いところだ。

「LIVE AZUMA」は何にも似てない?

「LIVE AZUMA」の持つ独特の雰囲気は、どのフェスでも感じたことがないものだったように思う。サマーソニックを秋に山の中でやっていると想像してもらえば、わかるだろうか。そこには祝祭と静寂が隣り合わせの浮世離れした感覚がある。それが首都圏ではなく、地方で、東北で、福島でおこなわれている意味は大きい。

あえて図式的にいうなら 日本のフェスは商業プロモーターが主導する大型フェスと、地方の音楽好きが仕掛けるローカルフェスに分けることができる。「LIVE AZUMA」には、この2つが融合したような魅力がある。具体的には、プロフェッショナルが制作するプラットフォームにローカルなコンテンツが落とし込まれている面白さである。大げさにいえば、これはフェスの再構築であり、ローカルフェスを再編するきっかけになるのかもしれない。

今後、フジロックにおける朝霧ジャムのような存在として、サマーソニックと連続性を持ったフェスとして「LIVE AZUMA」は定着するだろう。そしてフジロックとは、異なる価値観をサマーソニックが提示したように、朝霧ジャムとは異なる価値観を「LIVE AZUMA」は提示するだろう。それは資本とローカルの新たな関係を示すものであり、国内フェスの全く新しい展開を示すものになるかもしれない。

追記 ラーメンは2杯、美味しくいただきました。

Text:永井純一
Photo:LIVE AZUMA Official

著者:永井純一
関西国際大学現代社会学部准教授。博士(社会学)。国内外のフェスをめぐり、社会との関係を研究する。著書に『ロックフェスの社会学——個人化社会における祝祭をめぐって』(2016、ミネルヴァ書房)、『私たちは洋楽とどう向き合ってきたのか』(共著、2019、花伝社)、『音楽化社会の現在』(共著、2019、新曜社)、『コロナ禍のライブをめぐる調査レポート[聴衆・観客編]』(共著、2021、日本ポピュラー音楽学会)など。

ポストコロナ時代のフェスはどうなる?フェスが社会のためにできること(FJPodcastゲスト:永井純一)

音楽フェスは地元の宝。市長と教授とローカルフェスの明るい話をしよう【#FJPodcast 11月6日配信】

THE WORLD FESTIVAL GUIDE 海外の音楽フェス完全ガイド
津田 昌太朗
いろは出版 (2019-04-24)
売り上げランキング: 146,979
全国フェス検索