フェス主催者インタビュー|KOYABU SONIC主催・小籔千豊

2008年からスタートし、今回で9回目の開催となる「KOYABU SONIC」(コヤブソニック)。途中に休止期間を挟みつつ、ここ数年は主催者の小籔千豊自身の音楽活動もどんどん比重が大きくなってきている中で、音楽界からもお笑い界からも注目度は高まっている唯一無二のフェスティバル。今回は、そもそもこのフェスが始まったきっかけや、小籔さんが持つ音楽への想いなどを語ってもらった。

KOYABU SONIC主催 / 小籔千豊


-小籔さんが「KOYABU SONIC」を始められるまでにはさまざまな経緯があるとお聞きしました。

僕は吉本新喜劇へ入る以前にも漫才師をしていたんですけど、それまでは毎月単独イベントもするし、ラジオも出たりして発表の場がなんだかんだでありまして。でも新喜劇へ入った途端に一番ランクが下になったので、セリフも1週間で「ありがとう」だけ、その翌週は「ごちそうさん」だけ、というような状態でした。それだけで1週間が終わっていくのに耐え切れず、何か発表したくなって、ストレス発散のためにも自分でイベントやろうと。そうしたら、同じ頃に新喜劇にいたレイザーラモンが「僕ら企画やったことないんで一緒にやらせてもらいたいです」と言ってくれたので、それなら3人で一緒にやろう、となって組んだのが『ビッグポルノ』というユニットでした。

-ユニット名からしてかなりインパクトがあります(笑)。

新喜劇はまさに“お年寄りから子どもまで”に向けられているわけですけど、「ならば年寄りと子どもが嫌がりそうなことをやろう」と。同じことやってもアカんのでね、真逆のことをしようということで“なんとかポルノ”みたいな名前がいいんじゃないか、と。どぎつめのコントしたり、変な映画撮ったりしようか、と思っていました。すると、ちょうど同じ頃に音楽活動も結構やっている二丁拳銃がオールナイトライブをやるということで15分くらい出て何かやってくれないか、と言ってくれて。

-そんな流れだったのですね。

その頃ぼくらのユニットはお客さんが150とか200人くらいの規模。そのオールナイトライブは600人以上いるところで開催されるものだったので、自分たちの企画の告知になると真剣に考えまして。でも出番は夜中の1時半とかで、大人気のFUJIWARAさんとかも出てる場で自分たちがコントやったって、来たお客さんの印象に残らんだろ。寝て起きたら忘れてるで、と。僕らの今の目的は、その場でウケることじゃなくて、自分たちのイベントへと来てもらうことだから、その人たちが寝て起きてもまだ覚えているような、なんか脳に傷つけるようなことやろう、と。そしたら、二丁拳銃の音楽もあるイベントだし、ラップとかいいんじゃないか、という話になって。下ネタばっかり入れたラップやったら「なんかそんな奴おったな」と覚えててくれた人が5人でもチケット買ってくれたらいいんじゃないかなって。それが、ビッグポルノが音楽を始めるきっかけでした。

-ビッグポルノは音楽のためのユニットということでもなかったんですね。

20歳くらいの頃から僕はうっすらと、心のどこかで「スチャダラパーさんのように面白いラップやる人がいるわけだし、芸人がラップやったら面白いんちゃう?」とは思っていました。でもその下ネタラップまでは何もやっていなかった。で、まあ自分たちでラップ作ってやってみたところ、まあ下ネタばかりだし会場前方の女性とかには全くウケてないものの、一番後ろの男らが腹よじれて笑っているのがわかりまして。

-さっそく反応があった(笑)。

そうなんです。それ見たときにこれいけるかもと思えて、自分たちのイベントでも下ネタラップをやるようになったんですよね。いつもビッグポルノ企画のエンディングではラップをやって、そのうち「新曲ないんですか?」と聞かれるようになってきたので、「おっぱいの歌」、「おしりの歌」とラップの持ち曲が増えていきまして。だんだんと曲が増えていくにつれ、もうコントとかっていうより音楽イベントと化してきて、しかもお客さんのウケもいい。そうこうするうち、そろそろ他所で対外試合をやりたいな、ってなってくるわけです。でも僕らなんか誰も音楽の場に呼んでくれない。どうしよう、となった時に、コンビニで“サマソニ”って書いてあるのを見つけまして。

-なるほど、大きなフェスですしね。

「サマソニて聞いたことあるな…。あれ、これ東京だけかと思ったら大阪でもあるやん」となり、出たいですといろいろな方向からアプローチしてみたものの、まあ最初は無理でして。(レイザーラモン)RGに「サマソニ、結果どうでした?」と聞かれ、「いや無理だったわ、サマソニ、ケチや。」と。今考えたら僕らレベルで突然出られるわけないんですけどね。

-いやいやいや…(笑)

でもまあ、「残念やなあ」「そうですねえ」「でもなんかもう腹たったからサマソニは一生出えへん。お前も出んなよ。サマソニだけはNGや。ホンマ腹立つわ。サマソニの横でコヤソニやって潰したろか!」ていうボケでね(笑)。それを受けて、普通の後輩とかだったら「いやそれ無理でしょ、なんやそれダッサい、コヤソニて。そんな変なフェス、誰も来るかいな」っていうツッコミだと思うんですけど、RGは「小籔さんミュージシャンの知り合い何人かおるから、ぽいことできるんちゃいます?」ってなって。「いやあさすがにちょっとミュージシャンの方にお願いするのも恥ずかしいしなあ」と思いつつも、ビッグポルノを最初やるってなったときに吉本にすごい舐められていたのを思い出して。

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コヤソニ開催までの道のり

KOYABU SONIC 2018

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