「サマソニ」20年の歴史を支えたのは、徹底的な現場主義!クリエイティブマン・清水直樹氏が明かすブッキング裏話

今や都市型フェスの代表的な存在に上り詰めた「SUMMER SONIC(以下、サマソニ)」が、今年は20周年を記念して再び3日間開催される。欧米の音楽シーンとの温度差を埋める野心的なラインナップと、世界に先駆けてビヨンセなどの女性アーティストをヘッドライナーに抜擢してきた先見の明、そしてロックもヒップホップもアイドルもメタルもお笑いも一挙に楽しめる同フェスの歴史は、多様性が叫ばれる現代を予見していたかのように驚きと刺激に満ちたものだった。

今回は、そんな「サマソニ」を主催するクリエイティブマンプロダクションの代表、清水直樹氏のロング・インタビューを敢行。ここ数年世界を席巻しているラテン・ミュージックから、3日間できっぱりとカラーが分かれた今年のブッキング裏話、さらに知られざる「SUMMER SONIC」という名前の由来まで、リラックスした表情で語ってくれた。

CREATIVEMAN PRODUCTIONS代表 清水直樹氏

―今年の「コーチェラ・フェスティバル(以下、コーチェラ)」はいかがでしたか?


毎年どんどん新陳代謝してるというか、若いオーディエンスが増えている印象ですね。15年前はもっと大人向けのフェスだったし、アジア系もラップ・ミュージックもいない、ホントに白人だけのロックの祭典だった。それが今や人種も多様化していますし、20年でこれだけ様変わりしたフェスも珍しいと思います。

―昔は、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンが再結成の舞台として選んでいたぐらいですもんね。

「コーチェラ」を主催しているGoldenvoice(ライヴプロモーション大手の一つAEG Live傘下のプロモーター)のポール・トレットは、それこそオルタナティヴ・ロックとかパンクをずっと手がけてきた人だからね。彼の本来の嗜好はそこにあるはずです。

―BLACKPINKやPerfumeなどのアジア勢も奮闘していましたけど、現地での肌感覚としてはバッド・バニーやモン・ラフェルテといったラテン・ミュージックの盛り上がりが凄まじかったですね。MCもスペイン語のままだったりして。

うん、数年前からラテンの勢いっていうのは感じていたし、実は「GREENROOM FESTIVAL」をやっている横浜の赤レンガで「ラテンのフェスをやろう」っていう話もあったんですよ。ただ、あそこのエリアはフェスが多すぎるし、正直ムリだと(笑)。幕張メッセも候補には上がっているんですが、場所やタイミングも含めてまだ実現には至っていませんね。でも、「コーチェラ」で見たJ.バルヴィンやバッド・バニーなんかもそうだし、今まで招聘してきたピットブルみたいにマス・アピールのできるアーティストがどんどん出て来ている。彼らを中心に、いつかはラテン・フェスをやりたいとは思っています。

―ラテン・ミュージックがここまで世界で受け入れられているのは、なぜだと思われますか?


ラテンの一番良いところは、やはりノリが良いところ。ひょっとしたらヒップホップよりも日本人には取っつきやすい気がするし、言葉がわからなくても楽しいし、一緒に歌いやすいじゃないですか? そういう意味でも、もっと広がりがあるんじゃないかとは感じますね。

―郷ひろみさんの「GOLDFINGER ’99」(リッキー・マーティン「リヴィン・ラ・ヴィダ・ロカ」の日本語バージョン)とか、めちゃくちゃヒットしましたよね。

カヴァーはとにかく多いからね。J.バルヴィンの「Machika」っていう曲もマジか、マジかって空耳に聞こえるし、昔なら日本語版を出したら大ヒットだったんじゃないかな(笑)。最近はああいった海外のアーティストと連動したヒット曲が少なくて寂しいけど。


―では、20周年を迎える「サマソニ」について聞かせてください。B’zが日本人初のヘッドライナーを務める東京初日(18日大阪)、ラウド・ロックやパンクの精鋭たちが集結する2日目(16日大阪)、そしてEDMやヒップホップの注目アーティストが揃った最終日(17日大阪)と、3日間それぞれでカラーが際立っていますよね。

おっしゃる通り、今年はブッキングをする上で「カラーを日によって分ける」ということを考えていました。2日間開催の年はやっぱり両方とも来てもらいたいんで、あえてヒップホップのアクトを2日間に散らしていたこともあったんですね(笑)。でも、今年は3日間というのが決まった時点で、1日でもいいから来てもらえればと思って、ハッキリとそれぞれのカラーを打ち出すことにした。結果的には、すごく上手くハマったラインナップになったと思っています。

―東京2日目(16日大阪)なんて、ほとんど「PUNKSPRING」みたいですよね。

ヘッドライナーがレッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)に決まったのも大きいよね。チケットの売れ行きも3日間で一番勢いがあるし、みんなが求めるサマソニのラインナップというのが、この日に集約されているのは間違いない。

―ゼブラヘッドはサマソニ最多出演記録を更新するそうですが、20周年のアニバーサリーということでブッキングはスムーズだったのでは?

そうだね、核としては「3日間あるなら1日は冒険しよう」と考えていて。その「冒険」が何かというと、日本のアーティストを初めてヘッドライナーにすること。で、去年の夏の時点からB’zには声をかけていて、ほぼ決まっていた。ザ・チェインスモーカーズは単独公演のあの盛り上がりを見せられてしまったら、「次は『サマソニ』だね」という話に当然なるわけですよ。ただ、彼らも2016年のビーチ・ステージに出演してくれたときに「次はもっとデカいステージでやってやる!」って思っていたみたいで。だったらもう、他のステージじゃなくてヘッドライナーでどう? とオファーしたら快諾してくれました。レッチリの場合は、「サマソニ」との親和性も含めて絶対的なレジェンドを呼びたいと思っていたから、タイミング的にも完璧でしたね。

―アーティストとの信頼関係があるからこそのブッキングなんでしょうね。

フェスをやる上で重要なのって、「予算がこれだけあるから、あのアーティストを呼べます」っていうお金の話だけじゃないんですよ。しっかりとアーティストのことを考えて、日々のプロモーションを請け負っている会社がやった方が絶対に成功する。なぜかというと、彼らはフェスだけのために日本に来るわけじゃなくて、そこからどう自分たちが成長していくかを考えている。たとえば「フジロック(・フェスティバル)」ならスマッシュ、「サマソニ」なら我々クリエイティブマンっていう感じで、普段からアーティストとの関係性を築いているプロモーターがフェスを成功させているっていうのは、すごく理に適っていると思います。

―そもそも「サマソニ」って、クリエイティブマンさんの創立10周年(2000年)を記念してスタートしたフェスでしたよね。

うん、まずはプロモーターとして10年。そこまでいかないと自分にはフェスなんてやれないと思っていたし、そのぐらいの気持ちじゃないとアーティストにも失礼だからね。

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