フェスに特化したポッドキャスト番組『Festival Junkie Podcast』(MC:津田昌太朗)の6月10日配信回では、ゲストに関西国際大学現代社会学部 准教授の永井純一氏がリモート出演し、移動と集会の自由を制限された社会における音楽フェスの行方を掘り下げた。
フェスが実現可能な社会とは?
「ロックフェスの社会学」の著者でフェスと社会について日々研究している永井准教授が語る、これからのフェスのあり方。そもそも研究の根本的な問いが変わってきているという。
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津田:今までのフェスがどういうものだったかと考えると、移動と集まることが制限なくできていた、と。
永井:僕の中で、研究の根本にある問題意識というか、よく「問いを立てる」というような言い方をするんですが、その問いの立て方が完全に変わったと思っています。
津田:というのは?
永井:これまでは「フェスの楽しさって何だろう」とか「なぜみんなフェスに行くのだろうか」というようなことを素朴に考えていたところがあって、そういうことを話してきたわけだけど、今フェスができなくなった中で、フェスができるのはどういう社会の状態や気分なのか、どういう社会でフェスが可能なのかっていうのが、まずスタート地点になりましたね。
津田:問いが変わるということですよね。
永井:そう考えたときに今までフェスを成り立たせていた、もっとも基礎的な部分で、人が集まることと移動することが自由にできていた。これが今ストップして、制限がかかってくるのが今の状況。ここが止まったときにフェスがどうなっていくのかが今考えないといけないことかなと。フジロックも集まることが難しいってことももちろんあるけれど、移動の問題ですよね。
津田:お客さんやアーティストの動き、海外からアーティストが来れないとかってことですよね。そもそも移動や集会の自由が制限されていた状態の社会って今まであったんですか?
永井:ジョン・アーリーという社会学者がいるんですけど、「移動性」というものを現代社会のひとつの特徴だと位置付けているんですよね。昔はもっと固定されていて、旅行に行くということはほとんどなかったけれど、だんだんと移動が可能になっていった。
津田:交通手段が進化したり。
永井:津田くんが海外フェスにがんがん行けるのは、まさにそれじゃないですか。飛行機が価格も下がって、使いやすくなって。
津田:日本のパスポートがあれば、ほとんどの国に入れるし、英語さえある程度できれば、そういう自由がありますよね。そんなこと今まで考えたことなかったですけどね。
永井:考えたことなかったですよね。
津田:集まる自由は歴史上制限されたことがあったんじゃないかとは思います。戦争のときとか?
永井:お祭りごと自体をやっちゃいけない雰囲気もありますからね。僕らにとって有名な話だと、クリミナル・ジャスティス・アクト、いわゆるイギリスのレイブ禁止法なんかもありましたからね。[続]
番組内で語られたテーマ
10:30 コロナ禍の国内フェスの現状
12:00 フェス文化の象徴としてのフジロック
15:30 フェスが実現可能な社会とは?
16:00 移動と集会の自由を奪われた社会
19:30 フェスはもっとローカル/ドメスティック化する?
20:30 コロナ禍のフェスの新しい動き
22:30 定着したコーチェラの世界配信
24:00 時空を飛び越えたがる日本人の国民性
25:00 日本人とストリーミング配信の相性
27:00 フェスのフリーミアムモデル化?
28:00 ターニングポイントは7月のTomorrowland
30:00 チャイルディッシュ・ガンビーノの画力
34:00 フェス増えすぎ問題
34:30 フェスは街の図書館に?
37:00 メジャーフェスはモール、ローカルフェスは商店街
40:00 フェスは社会にとって役に立つのか?
41:00 地域社会におけるフェスの役割
42:30 ローカルフェスの成功事例
46:00 ポストコロナのフェスと行政の関係
53:00 フェスを語ること
【番組情報】
番組名:『Festival Junkie Podcast』
配信日時:毎週金曜深夜配信
Spotifyページ
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