フェス主催者インタビュー | GREENROOM FESTIVAL(神奈川・横浜)

GREENROOM FESTIVAL 主催者インタビュー

2005年にスタートし、今年で14年目を迎える「GREENROOM FESTIVAL」の運営中心人物2人にインタビューを実施。お話を伺ったのは、GREENROOM CO.代表取締役でフェスのオーガナイザーを務める釜萢直起さんと、イベント統括ディレクターの杉下正樹さん。サーフカルチャーやビーチカルチャーをバックボーンに持ち、横浜赤レンガ倉庫および周辺を会場として、成長し続けているGREENROOMの裏話を語ってもらった。

GREENROOM CO.代表 / オーガナイザー 釜萢直起

―今年で14年目の「GREENROOM FESTIVAL」は、発足から今までコンセプトが明確なフェスですよね。

そうですね。サーフカルチャーやビーチカルチャーをルーツにしたカルチャーフェスティバルで、「MUSIC」「ART」「FILM」という3つのカテゴリーから構成されています。今はそこに「MARKET」やいろんなエリアを増殖中という状態ですね。全体のコンセプトとしては「Save The Beach, Save The Ocean」という言葉を掲げて、フェスの前にビーチクリーンライブをやったり、ゴミ箱の設置をしたり、海とビーチを守る活動をしています。

―毎年カッコいいデザインのポスターが印象的ですが、このメインビジュアルにGREENROOMの主要素が凝縮されているように思います。「MUSIC」「ART」「FILM」そして「YOKOHAMA」。

確かに。このビジュアルはすごくこだわってます。メインはイラストではなく写真でいきたいなといつも思っていて。まずは写真選び、それからロゴとかを国内外のアーティストと一緒に作っていくっていう作業を毎年やっています。

―写真といっても、誰かがサーフィンしている様子や浜辺の風景を切り取っていて、前年開催時の写真とかは使わないですよね。

なんかね、それダサいなあと思って、やりたくないんです(笑)。音楽だけのフェスではないし、バックグラウンドにあるカルチャーの匂いみたいなものを大事にしているので。GREENROOMでは海のカルチャーの“匂いもと”を伝えていきたいんですね。それも、海外と国内の両方表現できたらいいなというか。自分の憧れとしてカリフォルニアやオーストラリアの海岸線みたいなものもありますし、僕自身も湘南に住んで原宿で働いて横浜でイベントやってる身なので、横浜や東京の世界観を海外の人たちにも伝えたい。そういうのを自分なりの解釈でアウトプットしている感じですね。

―スローガンの「Save The Beach, Save The Ocean」についても少しお伺いできますか。

きっかけとしては、ダムの問題だったり温暖化の問題だったりで世界的に砂浜が減ってるっていう現象を昔からすごく危惧していて。今、ハワイとかの観光地では大量に砂を投下してるんですね。僕の家は海まで歩いて10秒くらいの所で、常に砂浜と共に暮らしてるような感じでもあるし、夏も冬も海に入るので、海の変化には敏感なほうで。もしビーチがなくなったら、サーフカルチャーもなければ、海の家をはじめそこで生まれてるコミュニティも根こそぎなくなってしまう。それってみんな困るんじゃないかなと思うんですよ。だから今の状況をまずみんなに知ってほしかった、やれることをやりたいという思いで掲げました。

横浜大さん橋ホールから赤レンガ倉庫へ


―「GREENROOM FESTIVAL」は2005年に横浜大さん橋ホールで初開催されました。始まったきっかけは?

2004年にカルフォルニアのラグーナビーチで「Moonshine Festival」というフェスを見たことです。ヘッドライナーがジャック・ジョンソンで、オーガナイザーはジャックのマネージャーのエメット(・マロイ)と、フィルマー兼サーファーのクリス・マロイ、現地のアートギャラリー「The Surf Gallery」のオーナーであるウィル(・ペナーツ)の3人ぐらいでした。

当時、日本のフェスというのは、なんとなくコンサート的なものだと思っていました。でも「Moonshine Festival」の場合、ライブエリアもあって映画のエリアもあってアートエリアもあって、自分が思っていた“フェス”とは違う形が広がっていて。ミュージシャン中心というより、ペインターとかフォトグラファーとかフィルマーとかが直接話もできるような距離感で参加していた。これを見た瞬間にすごく心を動かされて、自分も日本でやりたいなと思ったんです。運良くオーガナイザーのチームも紹介してもらえたので、彼らに相談したら「日本でやろうぜ」ということになり、動き出した矢先に、あちらが資金難で潰れてしまって。でも自分的にはすでに火は灯ってたので、見よう見まねで2005年2月に開催したのが最初ですね。(壁に飾ってあるポスターを指して)これがその時のポスターです。

―その後、回を重ねるごとに動員が増して2010年、赤レンガ倉庫に会場を移しました。14年の歴史の中で1つのターニングポイントはそこなんですかね。

うん、赤レンガに移ったのは一番大きいですね。それを境にコンテンツの幅もすごく広がったし、作り方もだいぶ変わりました。

―制作上のポリシーはありますか?

基本的に「感動体験を与える」「笑顔を持って帰ってもらう」っていうのはもちろんあります。あとは「前の年を越える」こと。初年度600人くらいから始まって、毎年、動員もクオリティも前の年を越えていこうと邁進してきた14年間だったなと思います。

うちは閉じない方向性でいたい


―GREENROOMならではの魅力はどういうところだと思いますか?

海の前でやってるっていうのは1つの特徴ですね。だから船がステージの1つとして出せてるし、「Save The Beach, Save The Ocean」をコンセプトにしてる以上、海風を感じながら楽しんでもらうっていうのもすごく重要だし。あとは横浜っていう、東京からの距離感も魅力なんじゃないかなと思っていて。ストレスがないようにしたいので、近さだったり、無料エリアがある自由感は保っていたいんですね。

―無料エリアの充実度はすごいですよね。アートコンテナを模したショップ群で買い物したり、ヨガに参加したり、ギャラリースペースで絵を見たり、昨年からついに無料エリアにライブステージもできて、1日楽しく過ごせてしまいます。

ぶっちゃけ無料エリアにいても有料エリアのライブが少し見えたり聴けたりしちゃうけど、うちは閉じない方向性でいたい。やっぱり海は開かれているべきっていうか、本来海岸では老若男女遊べるじゃないですか。有料エリアは黒幕で囲って見せないみたいな考え方はないですね。

―クルーズしながらDJが楽しめるPARADISE SHIPステージがあるのもこのフェスの特徴だと思います。これはアメリカの船上フェスにヒントを得ているとか。

フロリダ~マイアミからカンクンまで行く「ジャムシップ」とか、アメリカはけっこうクルージングフェスが多いんです。ジャンルもレゲエの時もあればジャズ、ロック、エレクトロの時もあって。日本でも、音楽聴きながら1泊くらいかけて沖縄行くとか、奄美大島行くとか、いつかやりたいんですけどね。

―2018年のラインナップは現在追加発表中ですが、今年の見どころを教えてください。

なんと言っても見てほしいのはSublime With Romeですね。若い頃、「Santeria」を聴きながらコロナビール飲んでビキニの女の子を眺めるっていうのは原体験でしたからね(笑)。個人的にもSlightly Stoopidの作品のライナーノーツを書いたり、Sublimeのトリビュートアルバムにコメント書いたりもしてたから、すごく思い入れがあるし、フェスを始めた時からオファーし続けてきたバンドでもあるので、出演が決まった時は本当にうれしかったです。14年目にしてやっと手が届いたなって。

みなとみらいと手を組んでより広く

―オーガナイザーとして「GREENROOM FESTIVAL」を今後どうしていきたいと思っていますか? これからの展望と理想形を聞かせてください。

方向性としては、みなとみらいともっとガッチリ手を組んでやっていきたいですね。やっぱりフェスには余白っていうか、寝転がれるところだったりいろいろな場所が必要で。そういう意味ではみなとみらいの海沿いにまだ公園はたくさんあるし、去年から新設したPORT STAGEがあるMARINE & WALK YOKOHAMAのエリアなども広がってるので、場所とうまく組みながら広げて「SXSW」みたいに街を回れるような形で作っていけたらなと。そのほうがいろんな楽しみ方ができるし、1カ所に何時間も固まってるって窮屈だと思いますから。

「GREENROOM FESTIVAL」は2015年からハワイでもやっています。海を渡ってハワイまでは行けたので、最終的にはカリフォルニアでやりたい。僕が見たルーツ、「Moonshine Festival」の開催地に戻っていきたいっていう思いは強いですね。

―なるほど。またGREENROOM CO.としては、雪山でライブとスノーボードとスキーが楽しめる新フェス「Snow Light Festival」を開催したり、鎌倉にある「GREENROOM BEACH CLUB」でビーチウェディングプランを打ち出したりと、手がける事業は多彩になっていってると感じます。このあたりを展開している意図はなんでしょう?

やっぱり「GREENROOM FESTIVAL」の延長線上にはありますよ。お客さんを喜ばせたり感動させたりするっていう意味ではウェディングパーティもフェスと同じなので、フェスで作ってきたノウハウっていうのは活用できるんじゃないかなと思ってます。普通のウェディングではなく、海の匂いと砂浜があって……と、「BEACH CLUB」ではフェスと同じコンセプトでやってますね。

「Snow Light Festival」に関しては、元々うちの会社はスノーボードの関連会社のプロモーションをずっと担当していて、山とも近しいんですね。山にもスキー、スノーボード、スノーサーフ、バックカントリーなどいろんなカルチャーとアートがあって、海外ではスノーリゾートフェスも成熟しているから、日本でも雪山で遊ぶカルチャーイベントが増えたら面白いと思って。今年初回でまだ小さい規模ですけど、長く続けて年々大きくしていきたいですね。会社としても「スポーツ、ファッション、ミュージック、アートで人を感動させる」というのがテーマなので、これからもシンプルにそこを目指していこうと思います。

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