【Head In The Cloudsレポ】フェスもアジアの時代へ。88risingが創造するアジアのフェスシーンとは?

フェスもアジアの時代がきている。ワールドカップでのアジア諸国の活躍でアジアへの注目が高まっているが、フットボールだけでなく、音楽フェスにおいてもアジアの重要度が増している。K-POPの躍進やシティポップ人気など、アジアの音楽シーンやマーケットが世界から注目されるようになって久しいが、筆者が海外フェスをめぐりフィールドワークをはじめた10年前と比較すると、アジアへの関心の高まりは、世界中のフェス現場で感じる。実際にアジアのアーティストが自国以外のフェスで活躍する機会は増えたし、ここ数年で日本以外のアジアのフェスも数や規模が拡大し、特に東南アジアをはじめとした若年層の人口比率が高い国において、”音楽フェス”という文化が徐々に花開いてきている。

もちろんコロナ禍前からその傾向はあったが、2022年はその流れを決定付けた1年になったと言えるだろう。そしてその中心にいたのは、88risingだった。4月にアメリカ・ロサンゼルスで開催されたコーチェラでは、レーベル名義のショーケースを披露し、アジアルーツのアーティストを続々と登場させた。日本でも宇多田ヒカルのキャリア初のフェス出演が話題になったことを覚えている人も多いだろう。そもそも今年のコーチェラは、3年ぶりの開催で、2年間大きくストップした音楽シーン、そしてフェスシーンのリスタートの象徴としても捉えられていた面もあったが、そういった注目の場所で、ある意味特別待遇を受けて、堂々とアジアの音楽シーンのプレゼンテーションを行ったのが、88risingだった。そしてそのプレゼンテーションをさらに拡大した形で行っているのが、88risingが主催する「Head In The Clouds」というフェスだ。2018年にアメリカ・ロサンゼルスでスタートしたフェスだが、念願のアジア開催が実現。もともと2020年にジャカルタで開催予定だったが、パンデミックの影響で延期を経て、2022年12月、満を持して開催されるということで、ジャカルタへ飛んだ。本記事では、前半はフェスの基本情報、後半はステージと会場の様子を紹介しながら、アジアのフェスシーンが動いた2日間を振り返っていきたい。

Text(FEST PART):津田昌太朗
Text(LIVE PART):奥浜レイラ
Top Photo:Nareend

ステージレポート(DAY1)
ステージレポート(DAY2)
会場レポート&スナップ

About 88rising

88risingは日系アメリカ人のショーン・ミヤシロが2015年に立ち上げたクリエイティブ集団で、音楽レーベルを中心に、アーティストマネジメント、メディアプラットフォーム運営、映像制作、昨今は音楽フェス制作も自社で行う企業である。アメリカを拠点にしながら、アジア系アーティストを発掘し、現在「Smithereens」が世界的なヒットを記録中のJOJIをはじめ、Higher Brothers、Rich Brian、NIKIなど、今やアジアを代表する存在になった若手アーティストを多数擁している。日本人アーティストとしては、ATARASHII GAKKO!(新しい学校のリーダーズ)が所属している。

最近では、レーベルとして、2021年に公開されたアジア系マーベルヒーロー映画『シャン・チー』の音楽を手掛けたことも話題になったほか(日本からも星野源も参加)、2022年4月に開催されたアメリカ・コーチェラのメインステージでは「HEAD IN THE CLOUDS FOREVER」と称したレーベルのショーケース的なステージを披露。所属アーティストに加え、2NE1、aespa、宇多田ヒカルらが登場し、3年ぶりの開催となったコーチェラに華を添えた。ちなみに過去には、日本でも88risingのショーケース公演(2019年1月@ZEPP TOKYO)が行われ、Rich Brian、Higher Brothers、日本からはKOHHも出演した。

About Head In The Clouds

「Head in the Clouds Festival」(ヘッド・イン・ザ・クラウズ・フェスティバル、以降HITC)は、2018年にアメリカ・ロサンゼルスでスタートした88rising主催の音楽フェス。レーベル所属アーティストだけでなく、アジア系のアーティストがラインナップされ、これまでに日本からもKOHHやTeriyaki Boyzが出演したことがある。2度のアメリカ開催を成功させた後に、2020年3月に初のアジア開催(ジャカルタ公演)を発表していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期となり、その代わりにAsia Rising Forever Festivalというオンラインフェスを実施した。コロナ禍以降、2021年にはアメリカ開催を復活させ、2022年にはアメリカ開催に加え、インドネシア・ジャカルタ、フィリピン・マニラでの開催が実現した。(上記動画は2021年開催のもの)

ちなみに「Head in the Clouds」というのは88risingのコンピレーションアルバムのタイトルでもあり、これまでに「Ⅰ」と「II」の2枚がリリースされている。また同名の楽曲は「Ⅰ」の最後に収録されており、JOJIが歌唱している。

Tips for HITC JAKARTA

VENUE/ACCESS(会場アクセス)

2022年12月時点での、日本からインドネシアへの入国事情だが、ワクチン接種証明書もしくはPCR陰性証明書、さらにビザ・オン・アライバル(VOA)が必要となる。VOAに関しては、入国前に空港で手続きをするか、事前にインターネットでも登録が可能。値段は約5,000円。またPeduliLindungiという個人情報を登録するアプリも入国にあたり必須となっていた。ワクチン接種証明書もしくは陰性証明書に関しては、大型モール入店時などで提示が求められ、スマートフォンに英語版をいれておくと便利。もちろん紙の証明書でも問題ない。

フェス会場はジャカルタ北部のCOMMUNITY PARK PIK2という海辺のエリア。ジャカルタ中心部や空港などから30分〜1時間ほどに位置しており、東京でいうところの新木場やお台場、大阪でいう南港のようなイメージ。会場へは車かバスで向かうことになるが、ジャカルタ名物とも言える慢性的な交通渋滞により全く時間が読めないので注意が必要。また会場周辺には宿泊施設や買い物ができるようなエリアはない。

Grab/Gojek(配車アプリ)

ジャカルタの滞在で必須になるのが、GrabやGojekといった配車アプリ。Uberと同様のサービスで目的地の入力や支払いも全てアプリ内で完結する。もちろん通常のタクシーもあるのでそれらを利用しても問題ないが、英語が伝わらないドライバーも多いので、GrabやGojekの方が安心感は高い。タクシーを使う場合は「ブルーバード」という会社がおすすめ。

今回のHITCでは、Grabがオフィシャルスポンサーになっており、特に優先レーンなどがあるわけではないが、車乗り場ではGrabのスタッフが対応してくれた。(英語が話せるスタッフも数名いた)ただしフェス終了後は、アプリ自体が繋がりにくい状況になり、連日1〜2時間待つことに。初開催のためフェス側もタクシー会社・配車アプリ側もオペレーションがうまくいっていなかったが、同じ場所で開催されるとしたら来年以降はアップデートするはず。

STAY/ACCOMODATION(宿泊)

都市型フェスではあるが、会場近辺には宿泊施設はあまりない。一部会場周辺でairbnbで空き物件があったが早めの予約が必須になるため、ホテルの方が探しやすかった。今回取材チームは、入り時間の関係で空港周辺のホテルに滞在したが、会場まで車で30分圏内の西ジャカルタのホテルがベストな選択肢だろう。値段に関しても日本のビジネスホテルのような価格である程度のホテルに泊まることができる。フェス自体は昼過ぎからスタートするのため、午前中に街中の観光を楽しみたいという方は、ジャカルタの中心部の宿泊がベター。ただしどこも車移動は渋滞するので、比較的目的地に近く、かつフェス会場にもアクセスしやすいエリアを選びたい。

TICKET/ ENTRANCE(チケット/入場)

チケットは、インドネシアのネット通販Blibliにて購入可能。GA(一般チケット)とVIPに分かれており、2日通し券で、約2万円/4万円という価格設定になっている。国内向けの販売に加え、インドネシア在住者以外向けのチケット(International Ticket)があるのでそちらを購入し、フェス会場入り口近くのボックスオフィスにて、購入履歴を提示してリストバンドと引き換える仕組み。リストバンドをつけていれば再入場は可能だが、周辺施設はほとんどないため、基本的にはフェス会場で半日過ごすスタイルになる。GAとVIPの違いだが、前方エリアでVIPエリアがあるほか、飲食エリアもVIP用のエリアが用意されていたり、通行可能な優先レーンがあったりするので、より快適に過ごしたい場合はVIPの購入も検討してもよいだろう。

POINT (注意点など)

ジャカルタは11月〜4月が雨季のため、開催時期に変更がなければ雨が多い季節の開催になる。今年は事前の雨予報に反してほとんど雨が降らなかったが、雨具の準備はあった方が安心。ただ多くの参加者は小さなバッグ、もしくは手ぶらで参加している。そのためかエントランスでは無料でカッパが配布されていた。気温は30度を越し、湿度も高いので日本の夏に似ており、夜も半袖で問題ない。荷物が多い方向けに、会場内に有料のコインロッカーも用意されている。

会場では、物販や飲食エリアでほぼクレジットカードが使えるので現金は必要ない。ただし帰りのタクシーなどを急遽現金を使うシーンもあるかもしれないので、いくらかは手元に用意しておきたい。都市型フェスということもあり全体的に快適な環境で1日を過ごせるが、帰りの渋滞は世界トップクラス。複数の配車アプリを使っても1時間以上待つことも。初開催ということもあり、事前の案内ではシャトルバスの詳細が英語で出ていなかったが、現地では各エリア行きのバスもあったので、発着場所を調べてホテルの近くまで移動するのもあり。

次ページ
ステージレポート(DAY1)



1 2 3 4