【ラッシュボール主催者インタビュー】コロナ禍でフェスを開催し続けられた理由。今年のガイドラインも発表

神戸新聞との共同企画「フェス主義!祝祭の現在地」では、関西圏で開催されるフェスの主催者や出演アーティストへのインタビューなどを発信します。

今回は、8月27日(土)・28日(日)に大阪府泉大津市で開催される「RUSH BALL」(ラッシュボール)をピックアップ!ラッシュボールといえば、フェスの中止や延期が相次いだ2020年、そして緊急事態宣言下の2021年にもフェスを開催し、多くのフェスの指針になりました。そんなラッシュボールの、プロデューサーであり、グリーンズコーポレーション執行役員の力竹総明さんに、決断の背景や地元との関係などを聞きました。(※本インタビューは7月末に実施)

INTERVIEW:力竹総明さん(RUSH BALLプロデューサー)


-2020年、2021年は全国でフェスの中止や延期が相次ぎました。ラッシュボールはスタンディングエリアを柵やネットで仕切って客同士の距離を空けるなど、独自の対策をして開催しました。

すさまじい量の備品が必要になりました。例年、鉄柵は150枚くらいなんですけど、2020年は400枚くらい。(週末の開催に向けて)火曜くらいから仕込んで。前例がないのでああでもない、こうでもないと。とにかく当日はやり切って、終わってみたら請求書がすさまじい金額で、うん千万円という赤字でした。

2020年のことはあまり思い出したくないけれど、SiMのボーカルのMAHが柵を見て虫かごって言ってましたね。緑のフェンスがばーっとあって、しかもSiMの演出でオーディエンス全員を座らせるっていうのがあって、そのフェンスの前に座らせたらみんな網の中に入っていて、それで虫かごだなって(笑)。

-当日の運営や来場者の反応は?

上手(ステージ右側)からお客さんに入ってもらって、バンドの演奏が終わったら下手から出てもらう。完全入れ替え制で、朝の11時から夜まで、ぐるぐると繰り返しました。ロックバンドが多くて、暴れたいお客さんやあおるアーティストもいる。初めはどうなるか怖さもあったんですけど、3組目のバンドくらいからお客さんも要領が分かって、ほぼアナウンスなしで回りました。2020年に開催できたのは本当にお客さんのおかげです。

-熱中症対策も徹底して行ったと。

スタンディングエリアではマスクを着けてもらったんですが、ステージから離れたシートエリアでは、距離を保った状態であれば外していいですよっていうことにしました。日傘OKのエリアも設けて、それは結構効果ありましたね。

-全国的に中止や延期が相次いでいた2020年に、なぜフェスを開催しようと?

関西のイベンターってお互いライバルではあるけど仲が良くて、2020年の春に8社で集まって、『このままではまずいよね』って話をしたんです。ゴールデンウイークで緊急事態宣言になってロックダウン近いことになったときに。そこから初めて行政に僕らから歩み寄って、行政側も『これまずいな』って言ってくれて。それから大阪市と一緒に、矢井田瞳やKANA-BOONのライブの配信を6月にやったんです。

※8社:キョードー関西、夢番地、サウンドクリエーター、ソーゴー大阪、清水音泉、ウドー音楽事務所、スマッシュウエスト、グリーンズ

-それは8つのイベンターで共同で?

8イベンターで組んだ、初めての最初の仕掛けで、それから大阪城ホールとか、野音とかの広い空間だったらできるよねっていうので8イベンターでやっていった感じですね。主催をメインイベンターが取るんだけど、全員でバックアップするみたいなことの繰り返しでした。それの流れがあったからこそ、2020年のラッシュボールができたって感じですね。

-みんなでつないでいったということですね。

そうですね。そういう流れがあって、『屋内だったらこうだけど、野外だったらこうだよね』とか。あとダスキンさんともつながったのも大きかったですね。やっぱりダスキンさんは、いわゆる衛生っていうことに対してのイメージが強いんです。消毒とかうんぬんじゃない。「日常の衛生」っていうので、すごくイメージがよくて。2020年から尋常じゃないぐらい、僕らも手伝ってもらったんですけど、すさまじいくらい忙しいのに、その隙間を僕ら業界に時間を割いてくれました。

-2020年のフェス開催のときには、怖さはなかったですか?

5月くらいに銭湯に行ったんです。寝風呂でぽーって上を見ながら、開催できない理由をいっぱい挙げてみた。でも、一つ一つ対策を考えてみたら、『あれ、やれるんじゃね?』って。やれない理由が世の中にはびこっていた。その反動もあって『やれる方法を探してみよう』って、スイッチが入ったんです。

-それはイベンターとしての矜持ですか。

どうなんだろう。一生懸命に闘っているミュージシャンにとって、ステージは命綱じゃないですか。やっぱりお客さんに会いに来てもらって、そこでお金も動く。僕らもそこで生かされている。そのステージをなくすのは嫌だなっていうのはあったかもしれない。ミュージシャンにストレスなく演奏してもらって、お客さんにはどかんと音楽を浴びせて、魅了する。もちろん収支がどうのとかありますけど、本番が良ければ赤字だろうがなんだろうが、いいんじゃねえかって思っちゃうんですよね。

成功の鍵は「地元との連携」


-開催に当たり、地元の反応は?

『おまえらほんまにやるんか』という電話はありました。泉大津にはだんじり祭りがあって、みんな1年かけて太鼓とか練習するんです。だから、その方は『うちは今年やらへんのに、なんでおまえらよそもんが祭りやんねん』と。2時間説明したんです。最後にはその人も『おれもだんじりやりたかった。悔しいねん。ルールを作るんやったら、それをしっかり守って頑張って』って。匿名の問い合わせにも、こっちは名乗るようにしています。僕が何をやっているかをさらけ出す。すると向こうも『どこどこに住んでいる誰々や』って言ってくれる。互いの素性を分かり合えば、ちゃんと会話ができて、着地点さえあればもめることはないんです。

-2020年の開催後、通常はB to B(企業間取引)でしか示さない実施報告書をホームページで公開しました。

やろうと思えばやれますよという意味も含めて。でも、僕はこれを駄目なフォーマットにしたかった。批判してもらおうと。今後のより良い音楽の楽しみ方をみんなで考えていきたいと思って作りました。ただ本当は、この2年はあんまり思い出したくないんですよね(笑)。

-2021年は緊急事態宣言下での開催でした。

2020年は緊急事態宣言が出たらやめると決めていました。そこから1年で状況が変わり、2021年の8月は緊急事態宣言下でもガイドラインで5千人未満だったらイベントができるというルールになった。ただ物理的にはできるけれども、感染が広がっていたので、越境というか、エリアを広げるのはやめようということで、近畿圏からの参加だけをOKにしました。

-力竹さんが思うフェスを成功させる鍵はありますか?

やはり地元との連携だと思います。去年はサマーソニック(スーパーソニック)が千葉県とや行政とやり取りして実施することができました。フェスを無事開催するには、地元との連携をしっかりするしかないんです。地元といっても、県ベースだったり、僕らだったら大阪府ベースだったり。

-ラッシュボールと地域との関係は?

泉大津で2005年に初めて開催する時、会場へのバスの発着場所がなくて。探しに探して地元の人につながって、『ここ使っていいですよ』って言ってもらえた。それがなければ開催できていないです。渋滞の迂回ルートも教えてもらった。いろいろな人に助けてもらって今があります。地元との連携は絶対に必要です。都道府県だけでなく、開催地の市との連携が本当に大事。行政は街を活性化させるためにいろいろな施策を考えているわけで、僕らもその一部だと思っています。

-2020年、2021年の開催を経て、今年はどんな形での開催を目指していますか?

今はスーパーに行く時、前ほど気兼ねしないじゃないですか。だから会場でも、感染対策はしますけど、できるだけ普段通りに過ごせるようにしたい。自分が不安になる場所には近づかない。でも爆音が流れているのをちゃんと聴ける。2019年までは当たり前だった、ここにいようがあそこにいようが、それぞれが楽しめるっていう。もちろん、この2年で学んだことは、ふんだんに取り入れたいです。

-最後に今年のラッシュボールの見どころについて教えてください。

go!go!vanillas、SHISHAMO、キュウソネコカミ、KANA-BOONの4バンドは過去に、スペースシャワーのイベントで一緒にツアーをしたつながりがあって、その4組を集めるとどうなるかとか、ぱっと見たら分からないと思うけど、ストーリーは考えています。

今年のラインナップは、10代〜20代には分かってもらえると思うんですけど、40代以上の人は出演者の名前が分からないかも(笑)。10代〜20代の方は、夏休み最後の土日を楽しんでほしいです。できるだけ多くのアーティストを見てほしい。往年のファンの方も、もちろん楽しんでほしいし、今年だけじゃなく、来年はラッシュボール25周年なので、色んなアーティストの出演も含めて、待っていてください。

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2022年のガイドラインについて

本インタビューは7月下旬に実施しましたが、今年のラッシュボールのガイドラインも発表されています。参加予定の方は以下の公式サイトチェックしてみてください。

インタビュー協力:神戸新聞
写真提供:RUSH BALL オフィシャル

RUSH BALL 2022


本企画は神戸新聞との共同企画で、神戸新聞の紙面、および公式サイト「神戸新聞ネクスト」にて、特集企画「フェス主義!祝祭の現在地」として連載されています。「FREEDOM」主催のMINMIさんや「イナズマロックフェス」主催の西川貴教さんのインタビューも掲載中!

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