【GREENROOM FESTIVAL】音楽フェスとしてのグリーンルームの進化──コロナ禍以降を振り返る20周年特別鼎談

20周年GREENROOM FESTIVALの見どころは?

──ここで、さらに磨きのかかってきている今年のブッキングについて教えてください。

釜萢 まず頭にあったのはジェイコブ・コリアーでした。彼の音楽性や環境問題への意識も、グリーンルームの理念にぴったりだったので、彼のヘッドライナー出演を決めるためにずっと動いていました。20周年の祝祭を一番表現してくれるのはジェイコブだなと思ったんです。どんな編成でどんなフィナーレになるのか、現地で楽しんでいただきたいです。
そして土曜日のヘッドライナーはカマシ・ワシントン。土曜日の夜にあのグルーヴを楽しんでもらえる。アニメの新譜もめちゃくちゃかっこいいですしね。そして金曜日は、ボブ・マーリーのレガシーをグリーンルーム的に表現したステージとして、YG・マーリーが出演します。

──各曜日で色もそれぞれ異なるようにも感じます。

そうですね。日毎もそうだし、過去からの流れというか、2019年のトム・ミッシュや2024年のジャングルなど、自分たちの中ではひとつのストーリーとして繋がってるんです。その中にグリーンルームで伝えていきたい音楽感がある。それが20周年を迎えるなかで、ジェイコブやカマシ、YG・マーリーがそれを象徴しているんじゃないかなと。

──今年のラインナップは例年以上に新しいチャレンジがあるし、20年のストーリーも見えてくる、音楽フェスとしても唯一無二のラインナップだと思います。コロナ禍以降の流れとしてKREVAさんなどのヒップホップのアクトに加え、再結成というタイミングのRIP SLYME、初参加のENDRECHERI.にも驚きました。邦楽のアクトはどういう軸でブッキングしているんですか?

吉田 釜萢が主に海外のアクトを決めていき、それに合わせる形で僕は邦楽のアーティストのブッキングを進めていきました。今だからこそオファーできる、過去未出演のアーティストを意識してリストアップしました。

釜萢 並行して動いている形ですね。どんどん新しい才能を見せたいですし、グリーンルームはプロモーターやアーティストのツアーをやっている会社ではないから、基本的に忖度は全くない。良いと思ったら数字とか関係なく声をかけている。RIP SLYMEはグリーンルームが船でやっていたステージにも出てもらっていたし、そこで楽しんでくれている姿を何年も見ていたから、20周年にはぜひ出てもらいたかったです。

──20周年だからこそ声をかけたというアーティストはいますか?

釜萢 初年度のヘッドライナーとして出演してくれたトミー・ゲレロは絶対に出演してほしかったので実現できてよかった。

吉田 日本勢だと、このタイミングでRickie-Gに出演してもらえることにはストーリーを感じますね。また2010年代、自分がお客さんとしてグリーンルームに遊びに行っていた頃の思い出もあるんですが、MONKEY MAJIKの出演も嬉しいです。往年のファンを裏切らない流れも作りながら、アイナ・ジ・エンドなど新しいアーティストもいる。他のフェスではなかなか体験できない特別感が作れるんじゃないかと思います。

釜萢 それと今回、ルディメンタルが出演します。「Waiting All Night」という曲のMVが大好きで、そこでは怪我をしたBMXライダーが復活していくドキュメンタリー撮影している。グリーンルームのカルチャーと重なる部分があります。そこで土曜日の夜、ルディメンタルで踊らせたいとシンプルに思った。前からチャレンジはしていたんだけど、20周年という大義でまとめることができた。

Rudimental – Waiting All Night(ft. Ella Eyre)[Official Video]

──「Waiting All Night」のMVは、コロナ禍を経たグリーンルームの完全復活とも重なる部分がありますよね。さらに今年は復活どころか前夜祭的な形で一日追加されている。そこに「Praise Jah In The Moonlight」という世界的大ヒットを出したYG・マーリーが初来日ライブを行う。グリーンルームの挑戦が詰まっているように感じます。「初来日のYG・マーリー観た」と言える唯一の機会でもあります。

釜萢 ついにレゲエの新しいスターが現れたという衝撃を受けました。YG・マーリーのステージでどれだけ横浜のピースな空間を作れるか楽しみですね。YG・マーリーと一緒に、カイマニ・マーリー(Ky-Mani Marley)とザイオン・マーリー(Zion Marley)も来てくれる。マーレー一家が3人揃うので注目ですね。

──初のチャレンジになる金曜日開催ですが、どんな雰囲気で、どんなお客さんがくるのかすごく楽しみです。YG・マーリーもそうだし、グリーンルームの「踊らせる」を象徴するようなタキシードも登場する。

釜萢 タキシードは金曜の夜にばっちしなんじゃないかな。あとUMIの出演も嬉しいね。さらに、〈origami PRODUCTIONS〉チームも出演してくれる。〈origami〉の代表、対馬(芳昭)くんは戦友みたいな存在で、お互いインディペンデントでやってきた。10年ほど前のギャラリーステージに〈origami〉丸ごと出てもらったことがあって、今回の周年にあたり「origami SAI」(〈origami PRODUCTIONS〉によるショーケース)をやるようなイメージでいます。

吉田 夕方17時オープン、18時スタートなので、仕事や学校帰りに気軽に寄ってほしいですね。もちろん音楽もですが、極上のナイトマーケットも楽しんでもらえたらと思います。
横浜のあのエリアはサンセットが本当に素晴らしいので、飲みながらハイタッチしたりしてコミュニティを実感できたら最高だなと。

──実は金曜が一番、グリーンルームらしいかもしれませんね。凝縮されたコンセプトが確かめられる。音楽好き、フェス好きこそ金曜日は要注目ですね。

小島 私も金曜日が楽しみです。あと私個人としてはブッキングに直接的に関わっていないので、社内で出演アーティストの発表を聞くたびに「これからどうなっていくんだろう」って思っているんですよ(笑)。私にとってのグリーンルームのラインナップって、絶対外さない軸と実験的な軸があって、それがタイムテーブルに並ぶとものすごいバランス感になる。第1弾発表でなんとなく輪郭がわかって、最終的にはこういう流れを狙っていたのかと、いつも自社ながら感動します。

──ある意味一番のお客さんということですよね。それでは最後に、25周年、30周年に向けて、どのように進んでいくのか、展望をお聞かせください。

釜萢 次はエリアを大きくしていくことにチャレンジしていこうと思っています。横浜の魅力はまだまだたくさんある。グリーンルームとしては赤レンガも使いつつ、そこから歩いていけるいろんなエリアを活用してみたい。いろんなアーティストやコンテンツに触れられる新しい機会の創出にもつなげていきたいですね。

小島 私は会場の中のことを考えることが多いのですが、例えば装飾についてもいつも釜萢と議論を重ねています。キャンドルジュンさんたちが参加しているチームがいるんですけど、彼らも常にアップデートしている。そこからさらにもう一段階スペックを上げたりとか、お客さんの満足度を上げるようなチャレンジをしていきたいです。自分でも変化を作りながら楽しんでいきたいですね。

吉田 自分は横浜出身なのですが、赤レンガでこれだけの規模のイベントはなかったので、はじめて遊びに行ったときに衝撃を受けたんです。あのロケーションで、素晴らしいアーティストたちの音楽を聴ける感動。そんなグリーンルームを常に最大化していきたいと考えています。

──ありがとうございます。5年後、10年後のインタビューもぜひよろしくお願いします。

釜萢 10年後だと僕は61歳か。まだまだいけるかな(笑)

編集後記

コロナ禍の苦い思い出から今後の展望まで、じっくりと1時間以上語ってもらうことができた。今回のインタビューとあわせて、ぜひ15周年インタビュー記事でグリーンルームの20年の歴史を味わって欲しい。またインタビュー後にオフィスに飾られているカラフルなビーチサンダル(リサイクルアート)を見つけて、立ち話がスタート(下記写真下に記載)。サステナブルな取り組みもグリーンルームの歴史を語る上で大切な要素。会場でも様々な取り組みが行われているのでぜひ現地で体感してみてほしい。


「ビーチカルチャーの中で、ビーチサンダルって年に何個かダメになっていく。それをこういうアートに変えていくことにはすごく共感できるから、こういった取り組みは毎年やっています」


「今年もプラカップを少なくしていく試みをしていて、20周年の記念デザインでリフィルのアルミカップを作っています。どうしてもプラカップや紙カップは発生してしまうんだけど、紙カップを回収して鉢植えにするプロジェクトをやっていて、プラカップは再生プラスチックとしてキーケースやキーホルダーにするなど、いろんなリサイクルプロジェクトを走らせています。かながわ海岸美化財団っていう湘南の海岸を綺麗にしている団体のワークショップもあったり、「Save The Ocean」がコンセプトのフェスだから色々な取り組みをしています。」

出演アーティスト

5月23日(金)

YG Marley
Tuxedo
UMI
Ovall
Kan Sano
Michael Kaneko
Nenashi

5月24日(土)

Kamasi Washington
RUDIM≡NTAL
Emotional Oranges
東京スカパラダイスオーケストラ
KREVA
Awich
Def Tech
MONKEY MAJIK
RIP SLYME
The BONEZ
Tommy Guerrero
never young beach
Lucky Kilimanjaro
Rickie-G
Leina
MURO
grooveman Spot
Mitsu the Beats
RUI

5月25日(日)

Jacob Collier
The Yussef Dayes Experience
Tori Kelly
UA
ハナレグミ
.ENDRECHERI.
SKY-HI
アイナ・ジ・エンド
Kroi
SIRUP
toe
toconoma
BREIMEN
Furui Riho
冨岡愛
田中知之(FPM)
沖野修也
YonYon
ナツ・サマー

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