5G新技術を活用し、3ch同時生配信で開催されたラブシャのオンラインイベント「SPACE SHOWER SWEET LOVE SHARE」ライブレポート

PHOTO:岸田哲平

SPACE SHOWER TVによるオンラインイベント「SPACE SHOWER SWEET LOVE SHARE supported by au 5G LIVE」(略称:ラブシェ)が8月29・30日に行われた。

1996年に始まった野外音楽フェス「SWEET LOVE SHOWER」(略称:ラブシャ)。今年は25周年の記念すべき年だったが、新型コロナウイルスによる感染症拡大防止の観点から、開催を断念せざるを得ない状況に。それを受けて、今年は初のオンラインイベントとして開催された。

KDDI(au 5G)の協力の下開催された「ラブシェ」では、まず、複数の映像を視聴者端末が同時受信し、ブラウザ上で切り替えて視聴できるマルチビューアーシステムを採用。視聴者は、Mt. Fuji ch. 、WATER FRONT ch.、 SPACE SHOWER TV STUDIO ch.という3つのチャンネルを自由に行き来することができた。「SWEET LOVE SHOWER」といえば、ステージ同士が近く、短時間で移動できることで知られている。その特性をオンライン上で再現した形だ。

特にWATER FRONT ch.では、ARを用いて「SWEET LOVE SHOWER」のWATER FRONT STAGEを彷彿とさせる装飾を再現(Mt. Fuji ch.でも一部のライブでARを使用)。「ステージの装飾がきれい」「本当にあるみたいに見える」といった視聴者コメントも多く見受けられた。また、各チャンネルにはチャット機能も搭載されていて、視聴者同士で感想を共有することも可能。離れていても音楽の素晴らしさを一緒に体感できるように。そんな想いが込められた“音楽LOVEをSHAREする2日間”が実現した。

GLIM SPANKY/PHOTO:関口佳代
BLUE ENCOUNT/PHOTO:岸田哲平

SPACE SHOWER TV STUDIO ch.では、SPACE SHOWER TVにゆかりのあるアーティストが複数組ゲストとして登場。「SWEET LOVE SHOWER」にまつわる思い出などをトークしながら、過去のライブ映像を楽しんだ。25年間の歴史が垣間見える映像のなかには、会場が日比谷野外音楽堂だった頃のライブ映像や、すでに活動していないバンドのライブ映像など、貴重なものも。たくさんの観客が一緒になって音楽を楽しむ光景を見ることにより、フェスの素晴らしさを改めて思い出し、共有することができた。

Mt. Fuji ch、WATER FRONT ch.では、2日間で計14組のアーティストがライブを披露(8月30日(日)に出演を予定していた岡野昭仁さんは虫垂炎が発症した為出演を見合わせ)。初日のWATER FRONT ch.に登場した高橋優は、ARの技術に驚きつつ、「どこからどこまでがARだと思いますか?」と視聴者とコミュニケーションを取りながら、夕景をバックに5曲を弾き語りで届けた。「必ずまた『SWEET LOVE SHOWER』は開催されるだろうし、またみなさんに生で届けられる日を楽しみにしています」と、ラストには「明日はきっといい日になる」を演奏。

Mt. Fuji ch.で初日のトリを務めたのはKEYTALKは、メンバーが誰よりもライブを楽しんでいるのだということが画面越しに伝わってきた。定番曲大放出のセットリストを締め括ったのは「MONSTER DANCE」。配信でも熱量マックスのライブを見て、夏を実感した人、フラストレーションを発散できた人も多かったのでは。

KEYTALK/PHOTO:AZUSA TAKADA

2日目のトップバッターは、マカロニえんぴつ。「遠心」、「イランイラン」をはじめとしたレアな選曲にチャット上がざわつく。“音楽が好きだ”という想いで手を取り合っている人たちの存在、音楽の力をコロナ禍で思い知ったと語るのは、はっとり(Vo/Gt)。「また青空の下で音楽しようぜ」と、熱い想いを「ミスター・ブルースカイ」に込めた。

Creepy Nutsは、7曲中4曲が、4日前にリリースしたばかりの新譜の収録曲だった。「世の中がどうなろうが、自分たちにできる仕事はラップとDJしかない」と語ったのはR-指定。ステージに立つ者の生き様を歌った「サントラ」で見せた熱量が、特にその言葉を体現していた。

Creepy Nuts/PHOTO:岸田哲平

KICK THE CAN CREWは、3人ともオールブラックの衣装で登場。一糸乱れぬマイクリレーも圧巻だったが、「ユートピア」「アンバランス」といったミドルナンバーがこの日の白眉だろう。KREVA曰く、「骨董通りのファミレスで書いた」という初期のミドルナンバー。数年を経て今の3人が歌うそれらは、懐の深い曲に成長していた。

2日間のトリは、12年連続出演のTHE BAWDIES。画面を突き破りそうなほどの勢いでシャウトするROY(Vo/Ba)を筆頭にバンドの演奏には気合いが漲る。「SWEET LOVE SHOWER」との縁の深さを感じさせる熱演だった。MCではROYが、そもそもロックンロールは悲しみ・苦しみのどん底から這い上がるエネルギーから生まれた音楽であることに言及。「だから転がり続けることを止めません」と断言する彼らの頼もしさはこの上ない。

ラブシャにおけるTHE BAWDIESのライブでは恒例の「スウィート・ラブ・シャわっしょーい!」……ではなく、今年限定の「スウィート・ラブ・シェあっしょーい!」で終了。プログラムを終えた各チャンネルでは、打ち上げ花火の映像とともに「See you next year at Yamanakako」というメッセージが表示された。

THE BAWDIES/PHOTO:西槇太一

今年は残念ながら例年通りの開催が叶わなかった「SWEET LOVE SHOWER」。しかし、今回「ラブシェ」がもたらした新しい音楽体験は、アーティストとオーディエンスの心を繋ぎ留めてくれるものであったはずだ。

なお、uP!!!では、9月5日(土)12:00~9月7日(月)12:00にアーカイブ配信を実施(30日公演は視聴チケット購入者のみ視聴可能)。さらに、SPACE SHOWER TVでは、この2日間を特集した特別番組が10月17日(土)21:00~24:00に放送されるので、お見逃しなく。

Text:蜂須賀ちなみ

ラインナップ

8月29日(土)

LIVE ACT
KEYTALK / SHE‘S / ズーカラデル / 阿部真央 / 高橋優
TALK GUEST
OKAMOTO‘S(ハマ・オカモト / オカモトコウキ) / SUPER BEAVER(渋谷龍太 / 柳沢亮太) / THE BAWDIES(ROY / TAXMAN) /やついいちろう
SWEET LOVE SHOWER LIVE SELECTION 1996-2019
あいみょん / ASIAN KUNG-FU GENERATION / EGO-WRAPPIN‘ / サンボマスター / TRIPLE AXE / MISIA / 矢沢永吉 /ゆず / UNICORN / UNISON SQUARE GARDEN / レキシ ~信玄餅スペシャル~ 

8月30日(日)

LIVE ACT
KICK THE CAN CREW / Creepy Nuts / Saucy Dog / FAB!!〜Frederic Acoustic Band〜 / BLUE ENCOUNT / THE BAWDIES / マカロニえんぴつ / GLIM SPANKY(アコースティック2人編成) / ホリエアツシ(ストレイテナー)
TALK GUEST
go!go!vanillas(牧 達弥 / ジェットセイヤ) / 10-FEET(TAKUMA / NAOKI / KOUICHI) / 04 Limited Sazabys(GEN / KOUHEI) / きゃりーぱみゅぱみゅ / the telephones/ the telephones(石毛 輝 / 長島涼平 / 松本誠治) / ヤバイTシャツ屋さん(こやまたくや / しばたありぼぼ / もりもりもと) / THE ORAL CIGARETTES(山中拓也 / あきらかにあきら) / クリープハイプ(尾崎世界観 / 長谷川カオナシ) / BLUE ENCOUNT(田邊駿一 / 辻村勇太)
SWEET LOVE SHOWER LIVE SELECTION 1996-2019
[Alexandros] / andymori / 忌野清志郎 & NICE MIDDLE with NEW BLUE DAY HORNS / UA / 奥田民生 / Official髭男dism / KICK THE CAN CREW /Ken Yokoyama / Cocco / サカナクション / Suchmos / Superfly / チャットモンチー / 東京スカパラダイスオーケストラ / DREAMS COME TRUE / 中村一義 / NICO Touches the Walls / back number / Perfume / BEAT CRUSADERS / FISHMANS / BOOM BOOM SATELLITES / ポルノグラフィティ / THEE MICHELLE GUN ELEPHANT / YUKI / ONE OK ROCK 

ポストコロナ時代のフェスはどうなる?フェスが社会のためにできること(FJPodcastゲスト:永井純一)

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