太陽の下で音楽を楽しむ幸福を!フェス専用バッグブランド「UNDERTHESUN」開発者インタビュー

昨年春にクラウドファンディングで目標金額の1,453%を達成した野外フェス専用のバッグブランド「UNDERTHESUN」(アンダーザサン)。保冷ポケットやカード入れなど、フェスやアウトドアで使うことを目的に作られたこのブランドを仕掛けたのは、明治23年創業の老舗バッグメーカー「水野鞄店」に勤めるフェス好き社員の伊藤翔太さん。現役営業マンの彼が、フェスが好きすぎて、会社を説得して立ち上げたアンダーザサンというブランドについて、そして音楽フェスへの愛を語ってもらいます。

明治23年創業の老舗バッグメーカーがフェス専用のバッグを開発?

-まずは野外フェス専用のバッグブランド「UNDERTHESUN」の成り立ちについて教えていただけますか?

コロナ禍がひとつのターニングポイントでした。弊社にも、もともと自社ブランドはあったんですけど、コロナ禍だからこそ、新しいチャレンジをしようという機運があって、個人的にも「これまでとは全く違うブランドでチャレンジしたい、やるからには自分の想いを込めたものにしたい!」と思い、自分の大好きな「フェス」を軸に何かできないかということで企画をまとめ、会社に提案したのがきっかけです。

-伊藤さんはもともと商品開発担当だったのですか?

それが全くでして…。今も現役の営業マンです。そんな立場でありながら、どうしてもやりたいという想いを会社に提案したところ、「とりあえずやってみなさい」と。本当に心の広い会社だなと今でも思っています。結果として商品も無事リリースできて、クラファンなども使ってうまく形にできたということもあり、ミライ推進事業部という、既存の仕事にとらわれずに、未来に必要なことをやるための新しい部署もできました。今は、そこでお客さんの新規開拓も含め、「UNDERTHESUN」のブランドマネージャー的なポジションとしても働いています。

-そもそもなぜ「フェス」をテーマにしようと?

まずはシンプルに自分が一番好きで影響を受けてきたカルチャーだったというのが理由です。そしてコロナ禍に入り、フェスに行けない生活になってしまった。でもいつか終わりが来るだろうし、何かしら大好きなフェスシーンに関わりたいと思うようになりました。こんな時代だからこそ、好きなものに何か貢献したり、還元できたりしないかなと。

-ちょうどそのタイミングで自社ブランドへの要望が高まっていたということですね。

まさにそうです。この暗い時代が終わってまたフェスに行けるようになったときに、フェス好きの方や、そもそもフェスに行ったことない人がワクワクできるようなものを作っておきたい。会社としても新しいチャレンジだけれど、まずは自分たちが使いたいというものを自社ブランドとして発信すべきじゃないかと。偉そうなことを言いましたが、今回の場合は自分たちというより、自分が一番のターゲットだったかもしれません(笑)。

-ブランド名の由来は?

名前は、読んでそのままなのですが、「アンダーザサン=太陽の下」という意味です。コロナ禍の前半は、家から外に出るのも憚られるような状況でしたが、「太陽の光を浴びる、外に出て普通に生活をする」ということが人間にとって大事だと改めて気付かされました。さらにフェスは野外で開催されることが多く、太陽の下で音楽を楽しむことってなんて幸せなことだったんだと思うようになり、それをそのままブランド名にしました。また「繋がりを繋ぐバックパック」ということも掲げていて、このバッグを持って色んなところに出かけて、新しい何かと繋がるきっかけになればという思いも込めています。

-ブランド名を決めてから商品開発に?

商品ありきでコンセプトを考えたのではなくて、とにかくフェスで使いやすいもの、フェス好きの人たちから反響があるような商品にするというのが最優先でした。それもあってまずは自分が使いたいものを作っていこうと。ターゲットを広げすぎて、あれもこれもつけようとするのではなく、新しいチャレンジとしてやるのだから、自分が本当に使いたい機能を付けて、自分が背負いたいものを作る。商品を通して伝えたいことが、フェス好きの人にしっかりと分かってもらえるものを作ろうと思いました。

-昨年実施したクラウドファンディングは狙い通りの結果でしたか?

やる前は正直めちゃくちゃ怖かったです。蓋をあけてみれば109人もの方が応援してくださり、漠然とした目標として100人を超えることができました。ブランドの構想が固まってから、UNDERTHESUN名義のツイッターを始めたんですけど、そのフォロワーさんが買ってくれたり、単純に音楽好きで、フェス好きが繋がって、買ってくれたりしたのが嬉しかったですね。購入してくれた方とは実際にフェスやライブでもお会いできたりもして。そういう繋がりをこれからも大事にしていきながらブランドを育てていきたいです。

最初に思いついたのは、保冷ポケット?

-ご自身がターゲットということで、どういったところを機能として盛り込んでいったのですか?

バッグの側面にあるペットボトルや缶などを入れる専用の場所に冷えた飲み物を入れておけるようになっているのですが、コンセプトを決めたから最初に思いついたというか、必ず盛り込みたいと考えたのが、保冷ポケットでした。フェスは水分補給が必須なので、できるだけ温くならないようにと考えた結果、この場所は濡れても大丈夫な素材に変えて、中にしみこまないように配慮し、保冷剤を入れられるポケットをつけました。スポーツドリンクでも水でも冷えていると爽快感がありますし、アルコール持ち込みOKなキャンプフェスなどであれば、冷えたお酒がすぐ取り出せて嬉しい。まずは飲み物の冷たさ問題が、これまでフェスに参加するときにで個人的にいつも気になっていたところだったので、こだわったポイントです。

-まさにフェス体験から生まれたアイデアですね。

そうです。また飲み物問題と同じ初期段階で考えたのが「光触媒」という生地を使うことでした。実は前職が家具屋でして、そのときに光触媒を使ったソファーとかベンチなど手掛けていました。太陽光の下で抗菌効果や抗ウイルス効果があるとされていて、時代的にも、ブランドのコンセプト的にもマッチすると思って今回採用しました。

-バッグのサイズはどういったフェスシーンを想定していますか?

基本的には、1DAYのフェスや1泊2日くらいのフェスに対応したサイズを目指して作りました。巾着で絞れる作りになっているので、行きと帰りで荷物のサイズが違う場合でもある程度対応できるようになっています。たくさんグッズなどを買っても安心かと。あと収納的なところだと、二層になっているのも特徴です。フェスではタオルやTシャツが汚れてしまうことがあるので、分けて入れたいという思いから最下層にも荷物を入れられる仕様になっています。例えばお土産用に買った新品のグッズとくしゃくしゃのTシャツが一緒くたになるのが嫌だと思って。さらにバッグの下にはループを持たせているので、ヨガマットや寝袋なんかもつけられます。

-実際に使ってみたら複数あるポケットが便利でした。

ありがとうございます。上部はガジェットポーチ仕様になっていて充電機、イヤフォン、鍵など、前掛けにしてすぐ物が取り出せるようになっています。バッグ前には、サングラスなども入れられるよう大きめのポケットが二つ。あと背面に隠しポケット的なものもあります。財布やスマホがどこに行ったか分からなくなるという経験もあったので、落とさないように、背面も活用してもらえたらと。

-それぞれのポケットに名前が付いているのも面白かったです。

フェス好きの方がニヤッとするような仕掛けというか、自分がもらったら嬉しいと思うことをやりたくなってしまうところがあって。初回ロットのみになりますが、6つのポケットそれぞれに手作業でつけています。

-軽さや持ちやすさにもこだわって作られたと。

はじめのサンプルが上がってきたときに少し重く感じでパーツを変えるなど試行錯誤しました。また弊社がランドセルを作っているのですが、そこで得た知見も活用しています。歩きやすさ、体への負担、背負い心地を何十年とかけて研究しているので、その経験も生きています。フェスはたくさん歩いて疲れるので、いかに背負いやすいかにこだわりました。実は、重さよりもどれだけ体に密着させるかはかなり大事で、背面パットの厚みを持たせたり、背負う部分のステッチの切れ込みを入れてできるだけ体に沿った作りにしたりと、ランドセルの技術も応用したバッグになっています。

-使用する際の注意点などありますか?

防水ではないので激しい雨には気をつけてもらえたらと。あとこれだけフェス専用と言いながら、使いやすさを追求していった結果として、普段使いも問題ないものに仕上がったので、もし僕のように家族がいてパートナーの許可のもとでの買い物をする方がいたら、「フェスでも使えるし、普段の生活でも使えること」(背中側にクッション性のあるPC収納も完備しているので問題なし!)をアピールしていただいて大丈夫です(笑)。

-さらに新商品も展開するとか?

基本的なデザインは一緒ですが、フェス好きの方の意見を反映して、新たに2種類のバッグを準備しました。フェス好きの女性の方から「もう少し小さいものが欲しい」という意見があって、少し小さめのもの、さらにショルダーバッグも作りました。5月末あたりに販売スタートになる予定なので、SNSや公式サイトをチェックしていただけたらと思います。

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