【Head In The Cloudsレポ】フェスもアジアの時代へ。88risingが創造するアジアのフェスシーンとは?

Inside HITC JAKARTA

アジア各国を代表する個性的なアーティストが一挙に楽しめるのがHITCの最大の魅力だが、アーティストラインナップだけでなく、会場全体の統一感や雰囲気が88risingらしくデザインされていたのがフェスティバルとして素晴らしかった。参加者の多くを占めるZ世代を意識した写真映えするスポットの豊富さ、88risingというブランドを理解し信頼していることが伝わるスポンサーブース、そして参加者を丸一日飽きさせない多様なアトラクションがこのフェスの満足度を高めていた。ブースに関しては、通信会社、飲食、コスメ、タバコ、アパレル、車、スタートアップなどの多種多様なブランドのブースがステージ後方に配置されているのだが、ひとつひとつのブースが工夫をこらした体験やアトラクションを用意しており、会場全体としての統一感を保ちながら、フェスティバルとして個性的な空間を作り出していた。アジア初開催でありながら、そのあたりのカルチャーとビジネスの見事なバランス感覚を実現できているのは88rising主催のフェスならではだろう。一部ではあるが、スタートアップのインスタレーションも体験することができるなど、コーチェラをはじめとした「音楽×アート」を打ち出している欧米のフェスからのインスパイアも感じられ、このあたりは今後さらに展開が楽しみになりそうだ。

フードに関しては、アジアの都市型フェスの中でよく見かけるような出店が多かったが、ラーメンや寿司などの日本食、さらに吉野家まで出店しており、こんなところでも日本食ブームを実感。また今回は会場でのアルコール類の提供がなかったのも特筆すべき点だった。宗教上の理由もあるが、過去に参加した同じジャカルタのフェスではアルコールブランドが協賛に入っているということもあったので、コロナ対策という側面もあるのだろう。その代わりではないが、喫煙に関してはかなりルールが甘く、喫煙率も高い。そのあたりは日本や世界の流れとは少し違っていて、発展途上のフェス感を味わえた。

アルコールがないことの影響か、そもそもの国民性なのか、ライブ中は日本よりも大人しい印象を受けるインドネシアの若者だが、会場でインタビューをしてみると、88rising周辺のカルチャーへの関心が高く、熱量を持って質問に答えてくれる若者が多かった。今年の春のコーチェラのことはもちろん、今回出演したYOASOBIや新しい学校のリーダーズについての話題や「いつかフジロックやサマーソニックに行ってみたい」という声も聞くことができ、日本のフェスの存在感も実感できた。HITCはジャカルタのすぐ翌週にはフィリピンでも開催され、今後アジア各国にてどのような展開をしていくのが気になるが、88rising所属アーティストや関連アーティストがさらにアジアのフェスに進出していく未来は容易に想像できる。そしてこのHITCがアジア全体のフェスシーンをさらに盛り上げるカンフル剤になることをこの2日間で確信したし、アジアのフェスの歴史がひとつ塗り替えられた瞬間に立ち会うことができたことを嬉しく思う。(現地で収録した音源も後日公開予定なので、興味のある方はそちらも拝聴ください!)

Text by 津田昌太朗

PHOTO REPORT

PEOPLE SNAP

Head in the Clouds Festival
日程:12月3日(土)・4日(日)
場所:インドネシア・ジャカルタ/COMMUNITY PARK PIK2
公式サイト

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