絶景から発酵へ!?新しく生まれ変わる 「ハイライフ八ヶ岳」の魅力を探る

「ハイライフ八ヶ岳」は2017年にスタートし、「標高1600mで行われる日本一標高の高いフェス」を謳い文句に、音楽と八ヶ岳の雄大な景色を味わえる“絶景音楽フェス”として、人気を博してきた。

2020年は制限をもうけた形で有観客開催をしたり、2021年は突然の中止を受け、会場を変えて冬に屋内型フェスを行ったりと、コロナ禍以降も様々な形でフェスを続け、シーンを牽引してきた。特に2020年の開催は、関東圏では初の数千人規模のフェス開催となり、フェス主催者や関係者も多く駆けつけ、そのノウハウが全国のフェスへと伝播していった。

コロナ禍のハイライフは、「絶景」という特徴もさることながら、その会場が持つ圧倒的な自然環境と広大なスペースを武器に、「withコロナ時代のフェス」をいち早く提案し、実現してきた。このフェスがテーマにも掲げている”開拓精神”を体現するような3年間だったと思う。

そんなハイライフだが、今年は、これまで開催してきたサンメドウズ清里から会場を変更し、小淵沢にある女神の森のウェルネスガーデンとセントラルガーデンで行われることになり、これまで掲げてきた“絶景音楽フェス”という看板を下げざるを得なくなった。

「フェスには、人格がある」―― 数多くのフェスを取材する中で、時折この言葉を耳にしてきた。「フェスが乱立しているとも言われる状況の中でなぜフェスを開催するのか、他のフェスとの違いは何か、なぜその場所で開催するのか、そもそもなぜフェスを開催するのか…」フェスを作る人たちは日々そういったことを考えながら、自分たちのフェスを作りあげていく。立ち上げ当初は何か意義があってはじめたわけでなく、「ただ音楽フェスをやりたかっただけ」と正直に教えてくれる関係者も多い。しかしながら、フェスを何年も続けていく上で、さきほどのような”問い”と向かいあう姿をよく目にする。その結果として開催されるフェスは、やはりそのフェス独特の”人格”のようなものをより濃く纏うようになる。

ハイライフに話を戻すと、ここ3年は「withコロナ時代のフェス」をどこよりも早く、そして安全にやり遂げること自体が、このフェスの特徴、ある意味人格になっていたように思う。そんな中、数多くのフェスが様々なやり方でフェスを復活させ、そういった点でもハイライフは十分に役割を果たしたと言えるだろう。そして、もうひとつ、人格の最たる部分を占めていた「絶景」も手放すことになったわけである。

主催チームは過去最高に困惑したはずだ。「コロナ禍での一早いチャレンジ」も「この会場だからこそ味わえる絶景」もこのフェスの根幹であり、まさに人格そのものだったのだから。先ほど例にあげた問いを常に自分たちに投げ続けるチームだからこそ、今年の開催の“意味”、そして自分たちの新しい“人格”を求め続けたはずだ。

そんな中で、2022年のハイライフは「WANDERLUSTワンダーラスト」(“世界を探求したい”という強い欲望)をテーマに、「開拓 / 実験 / 発酵」という3つのアイデンティティを掲げ、新たな方向へと舵を切った。公式サイトにこれらの言葉が掲げられたとき、「開拓 / 実験」のふたつに関しては、すぐ理解できた。これまでハイライフが辿ってきた歴史や実際にやってきたことと重なっていたし、まさに自分も知っているハイライフの人格に近かった。

そしてもうひとつ、「発酵」である。世界中数多くのフェスをこの目で見てきたが、初見は正直「?」だった。発酵をテーマに盛り込んだフェスなんて聞いたことがないし、その中で何が行われるのかはよく分からない。音楽フェスなのに発酵をテーマにしたエリアがあるらしい。ますますよく分からない。

「発酵サーカス」というエリアが設けられ、山梨が世界に誇るワインやクラフトビール、味噌などの発酵文化を堪能できるほか、トークコンテンツも実施される。

なんだか美味しそうな匂いはしてくる。トークコンテンツにはstarRoさんや勝井祐二さんも登場し、勝井さんは発酵をテーマにした音楽も奏でるらしい。それはぜひ聞いてみたい。でも全貌は見えてこない。「マツコの知らない世界」でフェスが取り上げられることがあれば、「発酵をテーマにしたフェスがあるんです」「なんだよそれ」のやりとりをしている姿は見える。むしろそれくらいしか今のところ見えてない。

後日公開するが、あまりにも分からないので主催者と出演者にもインタビューを行った。それをチェックしてもらって、生まれ変わったハイライフについてより深く知って欲しいと思うが、こんなに「分からない、分からない」と書いているのに、何だか気になってくるのである。おそらく世界初であろう、発酵をテーマに掲げたフェスのことが気になってくるのである。

何が起こるか分からないものにワクワクしているんだと思う。新しい人格に生まれ変わるハイライフに期待しているんだと思う。もしかしたらそこで新しいヒトに出会えるかもしれないし、自分の居場所が見つかるかもしれない。予想もしなかった趣味ができてしまうかもしれない。「好きな音楽を聞いて、美味しいものを食べる」以上の体験が味わえる気がしてくる。でも行ってみないとよく分からない。

そんなことを考えていると、ちょうど2年前、2020年9月に八ヶ岳に向かう車の中で、同じような気持ちになったことをふと思い出した。

「本当にこんな状況でフェスなんてやれるんだろうか。よく分からないけど、自分のこの目で見てみたい。」

なんだかよく分からないけど面白いものや新しいことに出会えそう―― フェスに行く理由なんてそれだけで十分だし、それこそがフェスの醍醐味なのではないかと思う。

Text:津田昌太朗
Photo:ハイライフ公式提供

ハイライフ八ヶ岳2022

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