「DRIVE IN AMBIENT」が示したリアルイベントの可能性〜岩壁音楽祭クルーが挑戦したコロナ禍の音楽体験

2020年6月6日(土)に山形・唐松観音にてドライブイン形式のニューノーマルな音楽イベント「DRIVE IN AMBIENT」が開催された。新型コロナウイルスの影響によって、全世界的に人が密集するイベントは規制や自粛をせざる得なくなり、ここ日本でも音楽イベントやフェスは開催中止もしくは延期を余儀なくされている。そんな状況でコロナの感染予防に重要なソーシャルディスタンスを保ちながらもリアルな場でイベントの実施を模索する中で注目されているのが、車を使ったドライブイン形式でのイベントだ。参加者は会場に車で集まり、そしてそのまま車に居ながら音楽を楽しんで終わったらそのまま車で解散、といった直接の接触を避けつつも野外で音楽を体感できる形のイベントとなっている。

このドライブイン形式のイベント自体は1930年代にアメリカで映画を見に行くスタイルとして生まれたもので、歴史は古い。徐々に時代の流れによって縮小してきたこのドライブインスタイルは奇しくも人と接触できない新型コロナウイルスの影響によって人々に娯楽を提供する手段としては復活し始めている。

そういった波は日本にも来ており、いくつか開催され始めているが、巨大な岩壁を背に開催するインディペンデントフェス「岩壁音楽祭」も本来の開催を延期しながら新しい開催方式であるドライブインイベントに可能性を感じて完全招待制のアンビエント・ミュージックに絞ったドライブインイベントを開催。コロナ禍以降、編集部としても一切のフェス取材ができていなかったわけだが、久々となるテキストでのフェスレポートをお届けする。

岩壁音楽祭クルーが挑戦したコロナ禍においてのリアル音楽体験

会場となった山形県唐松観音は周囲を緑に囲まれた閑静な環境だった。17時にオープンし、係員の案内でそれぞれ割り振られた駐車スペースに誘導されていく。開催までは岩壁音楽祭クルーが制作した岩壁ラジオがFMの電波を使って放送されており、周波数を合わすと放送が楽しめる。車自体のスピーカーから聴こえるため、メインスピーカーから少し離れた距離にいる車もしっかりと聞こえる仕組みとなっていた。

ラジオを聴きながら周囲を見渡すと、この新しい試みに参加者のほとんどが大きな期待を持って臨んでいたのが見てとれた。かく言う自分も緊急事態宣言の影響で長らく音楽イベントはおろか外出すら久々といった状況だったため、“人と同じ場に集まって同じ音楽を聴く”といったコロナ禍以前なら当たり前にできた体験をいかに求めていたのかを実感した。

そんな期待感を胸にいだいて迎えた開演18時。仙台を拠点に活動するアーティスト・Nami Satoが橋の上に組まれた演奏スペースに姿をみせ、心地よいアンビエント・ミュージックを奏で始めた。



久々に野外で聴く音楽はやはり格別だ。車の後部をステージに向けて駐車したのでバックドアを開放し、足を外に放り出しながら自然を目の前にして音楽に耽る。他の参加者も思い思いのスタイルで久しぶりとなる野外での音楽体験を楽しんでいた。アンビエントミュージックと自然が包むゆったりとした1時間。ちょっと短く感じた時間設定は人が車内で待機でき、トイレに行かずに済める上限ということで決めたそうだ。(トイレでの人との近接を避けるため)

従来の“音楽をみんなで楽しむ”といった体験を今の状況で享受するには、感染リスクも最大限に抑えなければならない。ルールの設定に参加者への周知、そして会場となる場所や周辺地域への配慮、もし感染が出たときの対応想定など、イベント主催者にとって通常の開催とはまた違った意味で大変な準備だったのは想像に難しくない。


現在ウイルスの感染抑制と日常生活の復帰は様々な領域で議論がされているが、いち音楽ファン、フェスラバーとしてイベント領域で少しでもこういった前進がみられることはとても嬉しく、また迅速に開催に踏み切って成功させた「岩壁音楽祭」のクルーに最大限の称賛を贈りたい。この「DRIVE IN AMBIENT」は今後も継続していく予定とのことで、次回7月後半の開催も近々アナウンスがあるそうだ。10月末には延期となっている「岩壁音楽祭」も控えているのでこちらも開催を楽しみに待ちたい。

Photo by Official
text by Etoo

「DRIVE IN AMBIENT」アフタームービー

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