フェス主催者インタビュー|スティーブン・グリーン(RockCorps主催)

-日本でも数多くの団体と協働してボランティアが活動する場所を増やしていらっしゃいますが、NPOやNGOはどのように選択していますか?

ポイントは、既に地域に根付いている団体であり、ボランティアを受け入れられるような進行中のプロジェクトがあること、です。そして「RockCorps」のセレブレーションと呼ばれるライブイベントに一度参加した人たちが、そのライブのあとも「楽しかったね!」と再び参加しに来ることができることも大事です。つまり、継続的にボランタリーな活動をできる受け皿がある、ということですね。福島でも、1年目にボランティアとして参加した人が、翌年にはスタッフになっている、というようなケースが出てきていてとても嬉しいです。

-福島を中心として日本では4年間続いてきて、遂に今年は5度目の「RockCorps」ですね!ここまでの手応えや、これからの課題と思っていることを教えていただきたいです。

4回やってきて思うのは……、日本の状況はユニークで他の国とは状況が違うな、ということです。たとえばイギリスでは『ナショナルボランティアオーガナイゼーション』というような組織もあり、NGOコーディネーターという職業も一般的に知られている。政府にもボランティア担当部署がありますし、ボランティアマネジメントに関する研修が大学であったりもします。つまり公的な団体がボランティアコーディネートやオーガナイズをしている。一方、日本にはほとんどそういう仕組みってありません。けれども、日本の人たちは優しさや相手を慮る気持ちを持っているし、他者に親切にすることを大切にする価値観も根付いていますよね。だから僕にとっては、むしろそういった組織がないことをとても不思議に思うくらいなのですが!でも、そういう組織がなくても共感や互助の精神があるということが、とても素晴らしいわけで。

そうやって今までボランティアをコーディネートする仕組みがなかったところに、この「RockCorps」のようなプラットフォームが入ることで、日本の特徴とよくマッチしていると感じています。それがひとつめの手応えです。

もうひとつは、特に若い人たちのことで。今の日本では「働き方改革」や「ワークライフバランス」ということが言われはじめていますよね。つまり、ただ働くだけでなく、人生の中に何か意味を見出す必要があるのではないか、と言われるようになってきている。そんなときに「仕事の時間」「家族との時間」と並び「自分の暮らす社会のために貢献すること」「コミュニティの中でいろいろな人と繋がる時間」が入ってきているようです。

こういう要素を複合的に考えてみると、長い目で見た個々人の人生のあり方と、自分の周囲にあるコミュニティと繋がることは、とても関係していますよね。もちろんこういう新しい考え方や価値観が浸透するまでには、ある程度時間がかかるものだとも思いますが、こういう人々のソーシャルな活動への関心やニーズが高まることで、より「RockCorps」の仕組みも機能するのではないかと今は感じています。

-時代の変化とともに社会とのつながりとして当然、自分のいる社会への貢献を人々がしたいと思うようになっている、ということですね。けれども、なんとなくですが、日本人は“誰かのためにやったこと”に対してもらう“報酬”に少し引け目を感じやすいのでは、とも思ったりするのですが…

いいえ!そこはご心配なく。「RockCorps」のライブは“報酬”ではなく、あくまでもみんなでボランティアを讃えるお祝いごとという意味合い。だからこそ“セレブレーション”という言葉を用いています。ライブでパフォーマンスをするアーティスト自身も、事前のボランティアに参加していますしね。

私たちがメッセージとして発している「Give, Get Given」にもいろんな側面があります。

自分の4時間を与えて、ライブチケットをもらう
自分の4時間を与えて、友達とのつながりをもらう
自分の4時間を与えて、その地域とのつながりをもらう

などなど、人によってさまざまに捉えられるはず。

そう、昨日僕も福島県の郡山でボランティアをしてきたんですけど、なんと、「RockCorps」のボランティアで出会い、結婚して、子どもが生まれたという人たちにも会いました。ボランティアきっかけで、って素敵ですよね。同じ目標や想いを持った人々が出会い、繋がり、幸せが連鎖していくのが見えてとても嬉しいです。

-「Give, Get Given」というワードも出ましたが、こういったある種の新しいコンセプトを社会に紹介していくときに、スティーブンさんが大切にしていることは何でしょうか?

何か新しいことを始めるときというのはいつだって、あらゆる困難が付き物ですね。だからこそ、味方となってくれる友人が大切です。最初はどうしたって批判をされるものですから。自分を支えてくれる、情熱を共有できる仲間が必要です。

そしてこれはソーシャルなことに限らず、どんな起業家にとっても大事なことだと思いますが「自分のなかに信念があるか?」そして「なぜそれを信じているか?」を心の中で問い続けることでしょうね。誰かに批判されたとしても、それに打ち勝てるだけの信念がないと、新しいことって続かないですから。起業家に起こる10の事柄のうち、恐らく9つは“bad thing”でしょう。でもいかにその1つだけの良いことを、ともにしてきた人たちと共有し、セレブレーション(祝福)できるか。それが成功する起業家とそうでない人との違いだと僕は思います。

ⓒRockCorps supported by JT

-ちなみにスティーブンさんにとっての最初の「仲間(Supporter)」は、どういう方々でしたか?

先ほどもお話ししたように、「RockCorps」の事業自体は友達とともに始めたのでその最初の友人たちはもちろんですが、当時、ニューヨークの市長だったマイケル・ブルームバーグ氏が「是非ニューヨークで開催してください」と手紙を下さったことが大変に心強かったです。あとは、アメリカの「City Year」というかなり大きいチャリティ団体にも構想を持ちかけたところ、最初こそ「どちらさまですか?」とは言われたものの(笑)「でもいいね、やろう!」と言ってくれたことでしょうか。ニューヨーク市長の応援と「CityYear」の協力、このふたつは僕たちにとって、とても大きな仲間だと思える存在でした。

-なるほど。それではあらためてここから日本の「RockCorps」で挑戦していきたい部分があれば最後に教えてください。

今後、「RockCorps」と協働するひとつひとつのボランティア活動が、単発ではなくサステナブルに、ボランティアの土壌、ひいてはカルチャーとしても成長していける仕組みにできれば、というのが私の大きな思いでもありますね。

たとえば今の日本では、2020年の東京オリンピックボランティアについても話題に上ることが多いですよね。そこも実は、僕は興味を持って見ています。というのも、今後なんと、東京都とIOC合わせても計12万人の人を募集する、と……!いや、これはとても大変なことです。けれどもその12万人というのは東京オリンピック限定ではなく、たとえば関東エリア周辺の他のボランティアのためのリソースとして今後も持続していくものとして考えることはできないでしょうか? ソーシャルな活動が、一発屋ではなくいろいろな活動に繋がっていくような風にしたいですね。スポーツの祭典だけで見てみても、2019年にはラグビーの国際大会、2022年には大阪でのマスターズゲームがありますし、2025年には大阪で国際博覧会もある予定です。そういったものも含めて、自主的に動いて何かを作りたいと考えている人たちが持続的に活動できるプラットフォームと、そのことの打ち上げ、労い的な意味合いで「RockCorps」が仕組みを担えればいいなと思っています。

オフィスで仕事をした後のぐったりとした疲れとはまったくの別物の、楽しい疲労感がボランティアの魅力。ぜひ今年の夏も多くの方にボランティアに参加してもらい、「RockCorps」を味わってみてほしいですね。

Photo: Official提供 /Yuya Eto(Top/Interview)
Text:鈴木絵美里

RockCorps supported by JT 2018

ボランティア募集・実施期間:8月31日(金)まで
募集人数:4,000人予定
参加資格:ボランティアイベント参加時点で満16歳以上の方
実施場所:東京都・神奈川県・千葉県・福島県

セレブレーション日時:9月1日(土)
時間:12:00~17:00 (開演13:00) ※開催時間は変更になる場合あり
会場:幕張メッセ
参加資格:「RockCorps supported by JT」が実施するボランティアイベント参加者
公式サイト 

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