フェス主催者インタビュー | ONE MUSIC CAMP(兵庫・三田)

「みんなであそぶフェス」をコンセプトに兵庫県の山中にあるキャンプ場で2010年からスタートし、今年で9度目の開催となる「ONE MUSIC CAMP」。ローカルのフェスでありながら、昨年はアメリカのインディー・ロックバンド・Clap Your Hands Say Yeahが出演するなどフェスシーンでも稀有な存在感を示している。

集客も好調で、現在4年連続ソールドアウトの関西屈指の人気フェスは、普段は別の仕事をしている3人が中心となって運営されている。そんな3人に、フェスの成り立ちから今後の展望までを語ってもらった。

INTERVIEW:「ONE MUSIC CAMP」主催者

まずは自己紹介をお願いします。

野村: 野村優太です。物販やフードの取りまとめ、当日の警備回り、みんなが安心してあそべる環境をつくりつつ、外国人のアーティストブッキングなどもやってます。

深川: 深川浩子です。本職はフリーランスデザイナーで主婦です。主に「ONE MUSIC CAMP」のデザインや、ビジュアル面などのプロデュース、フェスのブランディングをしています。

佐藤: 佐藤大地、二児の父です。サラリーマンをしながら「ONE MUSIC CAMP」をやってます。主にアーティストブッキングや予算管理をやってます。

3人はどんな関係なのですか?

佐藤: まあ仲良しというか、それぞれの色があってうまく組み合わさっている、バンドのメンバーみたいな感じですかね(笑)。

普段は、みなさん別のお仕事をされているんですよね?

野村: そうですね。よく驚かれますが、普通の会社員やフリーランスのデザイナーをしています。よく言えばお客さんに近い、悪く言えば素人という感じで、義務感がないので逆にモチベーションが高いですね。

他にどういうスタッフが組織にいるのですか?

佐藤: この3人の主催チームと別で、ボランティア含め当日は30人くらいの人がスタッフとして動いてくれています。レギュラーメンバーのような形で、いろんなビッグフェスで仕事をしてきたカメラマンや舞台監督といったプロの方が、何か面白そうって言ってずっと一緒にやってくれてたりとか。

プロも巻き込みつつという感じなのですね。

佐藤: そうですね。他にもアウトドアの達人がドラム缶風呂やってくれたり。画家やミュージシャンなどのアーティストもいますね。最新のレーザーカッターを持ち込んでワークショップをやってくれる方や、最近では会社を経営してる人が行政への営業回りをしてくれたりとか。

深川: まだ学生で映像業界を目指している方がムービー制作をしてくれたり、面白そうって集まってくれた若い人たちが翌年から毎年お客さんとして来てくれたり、友人がスタッフとして支えてくれたりだとか。あと出店してくれた方がドローン撮影を申し出てくださったり!こういう繋がりがどんどん広がっていくのが嬉しいしフェスのコンセプトにもつながっているなと思います。関わってくださってる皆さんには感謝しかないですね。

“みんなであそぶフェス”とは?

「ONE MUSIC CAMP」のコンセプトは”みんなであそぶフェス”ですが、どういう意図で、どうやって決まったのですか?

佐藤: 自分がフェスやクラブ、ライヴハウスで体験してきた、知らない人同士でも音楽を通じて一体感を持てる感じというか。「この音楽最高だな!」って踊ってて、ふと隣を見たら全然知らない人が自分と同じようにテンション上がってて、そのとき「この人も同じなんだ!」って分かり合える感じっていうか。ことばでは説明が難しいですが、そういう自然な一体感って、素晴らしいイベントの中でも一瞬だったり、すごく貴重な瞬間だと思うんです。それをお客さんにも味わってほしくて、これをコンセプトにしました。

そもそもフェスをはじめたきっかけって何だったんですか?

佐藤: きっかけは、フジロックですね。20代の後半にフジロックに初めて行って、人生が変わるくらいの体験をして、実際変わったと思います。フェスをやろうなんて、考えたこともなかったし。でも何となく、音楽に関わることで自分たちにしかできないことや、熱い思いをもって何かをしたい、というのはずっとありましたね。フジロック見てこれだって気づいて、仲間に伝えて、皆が本気でやってくれたのが大きかったと思います。

深川: もともとバンドしていた「ただの音楽好き」だったんですが、一度は自分がフェスをしたらとか妄想するじゃないですか(笑) それが現実になるって最高だなと。しかも本業であるデザインでフェスの色を作っていけるなんて、コレは絶対やりたいなと。後はさっきもバンドのメンバーに似ているって話が出ましたけど、絶妙に主催チーム3人の方向性が合致していて、こんなメンバーなかなか集まらないよなって。これなら絶対面白いものができるって確信して、やるしかないなと。

野村: 意識をしたことはなかったですが、思い返すとフジロックに行ったことでかなり影響を受けました。元々違うフェスをやっていて、ひょんなことから「ONE MUSIC CAMP」に参加することになったのですが、佐藤とたまたま知り合って自分たちの理想とするフェスを語り合って一緒に作ることになりました。個性がバラバラのメンバーが集ったからこそ今のフェスが作り上げているなあと感じています。

「ONE MUSIC CAMP」の特徴を教えてもらってもいいですか?

佐藤: プールがある。山奥のキャンプ場なのに(笑)。アスレチックもある。この2つは大人にもこどもにも大人気ですね。他のフェスにはまずない要素だし。

野村: もう一つは東南アジアやアメリカからもアーティストが出ます。小さい規模のフェスでは外国人はほとんど出ないし、大きい規模のフェスでもあんまりないですね、アジアからアーティストを出すっていうのは。もちろんフジロックやサマソニは別ですけど。この点にはこだわっています。

深川: ビジュアル面のブランディングとしては、できるだけ良い意味で「フェスっぽくないもの」というのを意識してます。例えばグッズとか。記念に買っていただくのももちろんですが、普段から使えるもの、着られるものを作って日常でも使ってもらえてたらいいなと。いつかどこかでONEのTシャツ着てくれてる人と遭遇できないかなーなんて想像したり(笑)。

次ページ:人気の秘訣・ローカルフェスのこれから…

1 2