元祖・都市型フェスの仕掛け人「SYNCHRONICITY」麻生潤が語る、都市でフェスを続ける理由

日本を代表する都市型フェス「SYNCHRONICITY」を主催する麻生潤氏。「都市型フェス」という言葉が定着していなかった頃から、「都市」をテーマにしたフェスをスタートさせ、今年で14年目。

今年は3月末に開催される「KEENFEST」にも参画し、続いて4月の東京・渋谷での「SYNCHRONICITY’19」、さらに5月には初の大阪開催となる「SYNCHRONICITY’19 OSAKA」が控えているという超多忙なスケジュールの中、自身が手がけるフェス、さらに都市型フェスの今後について語ってもらった。

SYNCHRONICITY主催 麻生潤氏

-3月末の「KEENFEST」、続けて東京、大阪での「SYNCHRONICITY」の開催と多忙なスケジュールの中、今日はありがとうございます。

こちらこそありがとうございます。4月1週目に東京・渋谷での「SYNCHRONICITY’19」、その前の週、3月30日(土)・31(日)に代々木公園で開催される「Spring Love 春風 2019」内にて、アウトドアシューズブランドのKEENによる「KEENFEST」が行われるので、3月は毎日バタバタと過ごしています。

-「KEENFEST」はどういった経緯で手がけることになったのですか?

毎年KEENのYOGUIで、「SYNCHRONICITY」のコラボレーションモデルを作っていて、もともとお付き合いがあったんです。それとはまた別軸で、本国アメリカで「KEENFEST」というKEENの魅力を体験できるフェスがあって、その日本版をやりたいということでプレゼンさせていただきました。

-プレゼンとかあるんですね。

タイミング的にも、規模的にも「Spring Love 春風」とご一緒できたら面白いと思って、提案させてもらって、参画させていただけることになりました。「Spring Love 春風」もそういうった取り組みは初めてらしく、自分でもワクワクしています。

-出演者も「SYNCHRONICITY」とは一味違った感じですよね。

代々木公園での無料開催ということもあり、より多くの人に来てもらえるし、普段フェスに興味がない人も足を運んでくれる可能性があるのもこのフェスの魅力。出演者は、元ちとせ、坂本美雨、toconoma、Dachambo、本門寺重須孝行太鼓保存会という、幅広いラインナップが揃っています。(KEENFESTは3月31(日)に終了)

KEENの世界観を体感できる都市型フェス「KEENFEST in Spring Love 春風 2019」が3月末に代々木公園にて開催決定

-「KEENFEST」の翌週には「SYNCHRONICITY’19」が開催されます。

そうですね、怒涛のスケジュールなので、楽しみでもあり、心配でもあり…(笑)。

-では早速今年の「SYNCHRONICITY」について聞かせてください。

実は、今年の「SYNCHRONICITY」は 当初1Dayでの開催を予定していたんです。会場のスケジュールが取れず、2日開催にすることが決まったのは開催まで半年を切ったくらいのタイミングで…。もちろんリスクはあったんだけど、「SYNCHRONICITY」の次のステージやお客さんの要望など考えた結果、2日間での開催に踏み切りました。

-2日開催になったことでできること、フェスとして表現できる幅も増えましたか?

2日開催にすれば、単純に時間としては倍になって、出演するアーティスト数も増えます。そうすることで自分たちが表現したい世界が広げられるし、新しい挑戦ができる。2日開催でやるからには、今までの「SYNCHRONICITY」らしいラインナップに加えて、突き抜けた新しさも出していきたいなと。

-具体的に「新しさ」というと?

1日目は「SYNCHRONICITY」らしさがありつつも、振り切ったブッキングを意識しました。常連の渋さ知らズオーケストラではなくSOIL&”PIMP”SESSIONSがトリを務め、インストバンドも多数出演し、アルカラ、cinema staff 、大森靖子(バンドセット)も初出演。あとボロフェスタやアイドルも出演する西村ひよこちゃんのステージも「SYNCHRONICITY」的には新しい風かなと。アーティストとして個人的に注目しているのが、Ghost like girlfriend。ソングライティングの能力が非常に高くて、普段はライブを観てからオファーを出すことが多いですが、YouTubeで見つけて色々調べていくうちに、これはもうどうしてもご一緒したいと思って想いだけで声をかけさせてもらいました。

-2日目はどうですか?

1日目はちょっと振り切った新しさを意識したので、2日目は今までの「SYNCHRONICITY」らしさを広げていくことを意識しました。とは言え、常にカルチャーの先っぽの新しいところに踏み込んでいくのが「SYNCHRONICITY」なので、フレッシュな息吹は感じられると思います。O-EASTでは、渋さ知らズオーケストラ、ZAZEN BOYS、初年度、及び、10年前の「SYNCHRONICITY」に出演してくれた犬式も。ほかには、VUENOSのkillie、ATATA、WRENCHなどの濃厚なラインナップにも注目してほしいですね。2日目のニューカマーでいうと、Momは、トラディショナルではありながら、今っぽいポップさもあって、これからが本当に楽しみなアーティストです。

-今年も150ほどのライブが楽しめますが、どのようにラインナップを決めているのですか?

基本的には自分で音源を聴いて、ライブまで観て決めます。ただ、年齢とともに関わるアーティストも情報量も多くなるので、ちゃんとアーティストを見る「目」を持っている人からブラッシュアップされた意見をもらうことや任せることも増えました。そういったブレーン的な人の意見はもちろん、「SYNCHRONICITY」のボランティアスタッフの意見も参考にしたりします。若い人は若いアーティストのことを知っているし、何がいいかを感覚的に理解している人もいるので、よく意見はもらいますね。そういった声を自分でふるいにかけて反映した方がイベントとして広がりが生まれると思っています。

-アーティスト側から逆オファーも多いと聞きます。

ありがたいことにそういったお話をもらうことも増えました。アーティスト、マネージャー、担当の方含めチームだと思うので、熱心な方の逆オファーはとても大切にします。情熱のある方と長い関係性を築いていくことは、「SYNCHRONICITY」にとって自分にとって大切なことのひとつです。先程話した自分以外の意見や、事務所やレーベルからの逆オファーなども含め、トータルで「SYNCHRONICITY」らしさが出るように調整していきます。

-麻生さんのSNSなどを見ていると、普段からアーティストの関わりも多いように思います。

もちろん音楽が大事だけど、それ以前に人間ありきだと思っているのでアーティストとの関わりもとても大切にしてます。100組以上いるので必ずしもそういうわけにはいかないのですが、出演してもらう全員とお酒でも飲んで語り合いたいくらい。刹那的じゃなくて長い関係性を築いていきたいです。

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