フェス主催者対談|松原裕(COMING KOBE)× 大原智(ITAMI GREENJAM)

いわゆるフェスと呼ばれてるものは祭りの生まれ変わり


大原: 僕は勝手に、自分と松原さんと照らし合わせて考えてみるんですけど、僕のエンジンは、好奇心半分、悔しさ半分なんですよ。いろんな人に影響されて、その中で見返したいという。そういうのはあるんですか?

松原: 全然ある。認められたい。承認欲求すごい。

大原: そうですよね。

松原: 元々、おかんと妹と風呂なしぼろアパート3人暮らしから自分の記憶はスタートしてるから、いわゆるハングリー精神はある。認められたいもん。だから、バンドやってたときとか、ライブハウスで働き始めた新人のときとかは、俺の名前も覚えなかった音楽業界の人たちが、ペコペコしてくるときがあると心の中でガッツポーズしつつ…。だからといって偉そうにはしないけど、これで見下された気持ちはクリアして、ちゃんと接する。それをすればするほどやりがいにはなるよな。

大原: なるほど、ハングリー精神はあるんですね。

松原: 全然ある。

大原: 「COMING KOBE」の話に戻りますが、15年やって、継続することは本当にいいことなのかっていう迷いってありました?

松原: 今はちょっと減ったかな。東日本大震災が起きるまでは、めっちゃ悩んでた。みんな地震について興味ないし、恩返ししましょうよって言っても熱さがないし、まだ言ってんのみたいな空気も感じるし…。でも東日本大震災が起きて、地震に対する関心が大きく変わってからは、継続することに意味があるっていう確信に変わった。

大原: やっぱあるんや。「ITAMI GREENJAM」のコンセプトは、音楽、ファッション、デザインとか、クリエイティブカルチャーと言われるようなものを活用してもっと社会を豊かにしようよというところなんですけど。

松原: 伊丹じゃなくて、社会なんだ?

大原: 伊丹って限定するつもりは全くなくて。仮に伊丹の人が、みんな豊かになったら、結果的に波及していくと思うので。でもこれってなかなか伝わりにくくて、どうしたらもっと伝わるかなと考えているんですけど。

松原: でかすぎたらピンとこないから、俺はもっと伊丹に限定したらええんちゃうかなって思うけどな。結果、波及するんだから、身近な感じがあるほうが、みんな現実味を帯びるというか。やたら伊丹にこだわりまくってるとかの方が、面白いと思うけどな。例えば、募金を募って 「ITAMI GREENJAM」で伊丹駅にクーラーがガンガン効いた待合室を作ろうとか。そんなんやって欲しいけどな。

大原: 「ITAMI GREENJAM」で募金を募って、駅前にあるアートオブジェみたいなものを作ってもらうとかもしたいなとは思ってるんです。分かりやすい形をしっかり提示して。

松原: でも、現実的に使えるものとかが身近でええんちゃう。これ便利やわみたいな。

大原: クーラーになったら、もうクリエイティブ的なもの関係ないですからね。

松原: そこに装飾したらええやん。ガラスの扉にペイントしてもらったりとか、なんでもできるよ。

大原: たしかに。

松原: 「ITAMI GREENJAM」のおかげで伊丹のまちがちょっと良くなってるとか、かっこいいと思うけどな。神戸は、そういう意味ではちょっとでかすぎるねん。

大原: そうですよね。神戸はでかいから、関わる人とか企業の数、来場者数が多くなりすぎて、抱えきれるかなって思ったことはないんですか?

松原: ちょっと不安になったときはあるけど、おれちょっと痛いやん?

大原: どういうこと?(笑)

松原: 俺はたぶん自信がすごいから、できる気しかせんから、まぁ大丈夫ってなる。ちょっと不安があるときはあるけどな。思ってもみないことになっていくこともあるし。

大原: 今年いろいろ関わってもらったんですけど、まさに僕らはそれが去年だったんですよ。

松原: まあそうやな(笑)。担当者から報告してもらったけど、「ITAMI GREENJAM」ってまじでこれやってたん?って。ほんまにびびってる。すごいなあって(笑)。

大原: ははは(笑)

松原: 「高槻魂」とか「ITAMI GREENJAM」も、街が小さいからなのか、そうやけど主催者の謎の求心力、ボランティアとか、そのコミュニティの結束力にはほんまびびってん。この求心力、原動力はなんなんやろって思ってる。それはすごい良さやと思って見てるかな。

大原: 僕は自分がそれだけのリーダーシップがあるとは思えないんですよ。だから単純に「ITAMI GREENJAM」というプロジェクトが力を持っているんだなと。

松原: 必要とされてて、みんなが大事にしてると。

大原: なので僕は「日本一の無料ローカルフェス」にしたいって言ってるんですけど、じゃあ一体何をもって日本一なんだと。それを考えたときに行き着いたのが、だんじり祭りとか阿波おどりとかだったんですよ。どこまでが実行委員で、どこからがお客さんか分からないみたいな。それくらい地域文化まで落とし込みたい。それを目標にしています。

松原: 今各地でいわゆるフェスと呼ばれてるものは祭りの生まれ変わりやと思ってる。

大原: 今後もっと増えると思います?

松原: 増えるんちゃうかな。

大原: でも継続できるんかなって。

松原: そういうことやねん。やってるから分かると思うけど、継続するのって大変やん。これをやるだけのバイタリティと地場愛と人を惹きつける求心力がないとあかんからね。

大原: みんな、フェスやりたいっていう初期衝動で始めるじゃないですか。でも、めちゃくちゃしんどいから継続するには、何故やるのかっていう自分の中の答えと軸が絶対に必要で。そのときに、この部分では他のフェスに勝ってるっていう部分が欲しくて。「COMING KOBE」には、ここは勝ってるというものを自分で作りたくて、それが地元の文化に落とし込む、祭り的要素だったんですね。

松原: そうやなあ。

大原: でも今年の「COMING KOBE」に行って感じることがあって。今年モッシュ・ダイブの禁止を大きく発信してたじゃないですか。実際に来場者が「COMING KOBE」を守ろうという意識でモッシュ・ダイブをやってなかったと。そのときに来場者も参加者っていうのが見えて、何か悔しかったんです。

松原: でも、やっぱりチケット登録があったりして、来場者を限定させてしまう以上、「COMING KOBE」は、「ITAMI GREENJAM」みたいな街のイベントにはなかなかなれないと思ってる。俺も目指すのは、おじいちゃんおばあちゃんも知ってて、孫を連れてふらっと来れるような、まちのイベントやったけど、ちょっとそれとは違うものになってると思うかな。愛されてて、みんなに支えられてるという意味では、今年の「COMING KOBE」は大原の言う通りやなって思ってるけど、音楽イベントの域は脱してないと思うなあ。

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クラウドファンディングあり?なし?

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