「ARIFUJI WEEKENDERS」主催チームインタビュー | 関西の人気フェス制作チームが仕掛ける、よりローカルを意識した新しいフェスとは?

兵庫県三田市の有馬富士公園にて、5月20日(土)に初開催される音楽フェス「ARIFUJI WEEKENDERS」(アリフジ ウィークエンダーズ)。企画したのは、同市で毎年8月に開催されている人気のキャンプフェス「ONE MUSIC CAMP」を運営するチームだ。普段は会社員やデザイナーとして働いている3人が手がける「ONE MUSIC CAMP」は、2010年の初開催以降、関西屈指のキャンプフェスに成長。毎年チケットがソールドアウトする人気フェスを開催しながら、このタイミングで新しいフェスを企画した狙いや三田市への思いについて、主催チーム3名に語ってもらった。

主催者インタビュー

-2010年に「ONE MUSIC CAMP」を立ち上げ、14年目の今年も8月26日(土)〜27日(日)に三田アスレチックで開催されます。これとは別に、5月に新しいフェスの「ARIFUJI WEEKENDERS」を企画した理由から教えてください。

佐藤大地(以下、佐藤):2019年に「ONE MUSIC CAMP」(以下、ONE)は10周年を迎えました。チケットは毎年ソールドアウトで、場所の大きさの制約もあり、お客さんがこれ以上入らないという事情があります。もっとやりたいこともいろいろあるんですが、厳選してやっています。だから、新しいフェスにトライしようと。約4年前から構想はありました。コロナ禍で足踏みしていましたが、去年ONEを3年ぶりに開催でき、いよいよ今年新しいフェスに挑戦することになりました。ただ、ONEをやめるわけではありません。規模がそれほど大きくないからこそ親密な空気があり、それを支持してくれているお客さんも多いんです。

-なぜ会場に有馬富士公園を選んだのですか?

佐藤:ONEの会場になっている三田アスレチックは大阪や神戸からも近く、森の中のキャンプ場という環境がすごく良いので、そこでずっとさせてもらっています。10年以上続ける中で地域のいろんな方々と仲良くなり、行政ともつながりができた。だから、新しいフェスも三田でやりたいと。広い場所を探していたところ、有馬富士公園を見つけ、行政とも交渉を重ね、ようやく「ARIFUJI WEEKENDERS」(以下、アリフジ)開催できる運びになりました。
 
-「ONE MUSIC CAMP」を続けてきた経験や地元との関係があるからこそ、「ARIFUJI WEEKENDERS」を開催できると。行政との関わりはいつからあるんですか?

佐藤:2018年から三田市の後援をいただいています。ONEの規模が年々大きくなる中、長期的に良いフェスをしていくためにも行政との関係もきちんとつくっておきたいと考えました。

深川浩子(以下、深川):挨拶に行ったら、行政の方もびっくりされていました。担当の方はフェスに行ったことがないということだったので、フジロックのことから話し、こういうことがやりたいんだと説明しました。そうしたら好意的に受け止めていただいて。後援をいただいたことで、地域住民の方にもイベントについて説明がしやすくなりました。

-地域住民との関係は?

深川:たくさんの出会いがありました。例えば、住民でつくる「高平郷づくり協議会」の皆さんにONEに出店してもらい、まきで炊いたご飯やみそ汁などの定食を販売してもらいました。これがお客さんに好評で。1日目にお酒を飲んで二日酔いの中、優しい味が染みるんだと思います。

-会場周辺の住民との関係はどうですか?

深川:数年前から毎年、ONE開催の前日に会場周辺の集落の15軒ほどを一軒一軒あいさつに回っています。地元の方にしてみたら、何をしているか分からないし、どんな若者が来ているかも分からないから、すごく不安だったと思います。以前は騒音の苦情もありました。でも挨拶を始めてからは「頑張りや」って声をかけてもらえるようになりました。「ご飯食べて行きや」と言ってもらうこともあるし、スタッフの送迎も協力をいただいています。「うちの息子、全然帰ってけえへんけど、ONEの時だけは友達を連れて帰ってくんねん」って言う方もいました。すごくうれしいことだなと思っていて、アリフジも周辺に住まれている方々とそういう関係性になれたらいいなと思っています。

「ONE MUSIC CAMP」の会場の三田アスレチックは民間の施設ですが、有馬富士公園は県立の都市公園です。行政との調整など実務面で大変なことも多いのでは?

深川:安全の確保や住民の皆さんの理解を得るため、提出する書類はすごく多いですね。ONEではざっくりと手書きの地図を書いていたんですけど、今回はどこに何を置くかなど白地図に正確な縮尺で示す必要があります。テントの設置も許可が要ります。会場が天然芝なんですよ。すごくきれいな場所なんですが、今まで大規模な音楽フェスが開催されていない公園なので、管理事務所も人がたくさん来て芝を踏み荒らすことにならないかとか、子どもが迷子にならないかとか、当初はいろいろと懸念をされていました。だから、打ち合わせを重ねながら一つ一つ問題をつぶし、決まりごとをつくっています。

佐藤:イベントを良くするため、行政の方にも非常に協力してもらっています。

-「ARIFUJI WEEKENDERS」と「ONE MUSIC CAMP」との大きな違いは何でしょうか?

佐藤:ONEの開催場所は、マイクロバス1台がすれ違うことも難しいような道の先にある山奥のキャンプ場です。一方、有馬富士公園はJR新三田駅から無料のシャトルバスに乗って10分ほどで着く場所。自然は豊かなんですけど、アクセスがすごく良いんです。音楽フェスで無料のバスを出しているのは珍しいと思います。僕らは三田の自然の中での体験ということにすごくこだわっているんですが、車がないと来られないなど参加のハードルが高いと、若い人はなかなか来られないと思います。だから、そのハードルをぐっと下げたい。学生さんでも気軽に来られるよう、学割入場券(7,000円、一般の入場券は8,500円)もつくりました。

深川:どうしてもフェスって暑いとかしんどいっていうイメージがあると思うんですけど、そのへんをうまく払拭できれば。気軽に来て、1日遊んで、気持ち良く帰れるようなフェスにできたらいいなと思います。

幅広いお客さんが楽しめるラインナップに

-今回、アリフジに出演するのはindigo la End、OKAMOTO’S、水曜日のカンパネラ、スチャダラパーなど13組。「ONE MUSIC CANMP」と出演アーティストの違いはありますか?

佐藤:僕らの好きな、個性があってクオリティーも高いアーティストがベースになっているのはONEと同じですけど、アリフジはより幅広い年齢層のお客さんに来てほしいという思いがあります。ONEは僕らが本当に好きなことをやっているという感じなので、どうしても僕らと同じ世代のアーティストが中心になるんですけど、アリフジはもう少し若い世代のアーティストもかなり入れています。

-ONEでは、アジアなど海外アーティストも呼んでいます。

野村優太(以降、野村):例えば、2017年には落日飛車(サンセットローラーコースター)という台湾のバンドや、Clap Your Hands Say Yeahに出演してもらいました。

佐藤:サンセット-はその後フジロックにも出たし、今年はサマーソニック、コーチェラ(米国)にも出ますね。

野村:僕は以前フィリピンのマニラに住んでいて、その時にめちゃくちゃかっこいいけど注目されていないアーティストをたくさん知ったんです。だから、そういうアーティストにフォーカスしたいという思いがあります。見たことないけど、すごく格好良いとか、心揺さぶられるようなアジアのアーティストを呼んで、新しい音楽体験を提供できたらうれしいなと思っています。

佐藤:今年のONEにも海外アーティストが出演します。来年以降、アリフジにもチャンスがあればアジアなどの海外アーティストを呼びたいですね。あとデジタルテクノロジーにも興味があって、Vtuber「シファル」の出演や、AR技術を使って会場でスマホをかざすと3Dが出てきたり、妖怪が出てきたりする仕掛けや、レーザーを使った特殊照明も実施する予定なので楽しみにしてもらえたらと。

-音楽以外にも飲食やショップの出店、ワークショップなどの体験コーナーも充実していますね。

佐藤:会場が広くなったので、出店にも力を入れておりフードと物販も合わせて約50店舗も出ます。主催者が直接食べに行ったり、アクセサリーやアパレルなどでクオリティが高い店舗を厳選してます。もともと地元のお店とのコラボをすごくやりたかったんです。ありがたいことに、ONEに出店したいという声もたくさんあるんですが、会場の広さの都合でお断りするケースが非常に多いんです。

深川:ONEでは少しのスペースで何をするか、せめぎ合いがすごい。

佐藤:アリフジでは例えば、三田肉流通振興協議会の協力を得て「三田肉」の限定メニューを販売します。人気洋菓子店の「パティスリーエン」(三田市)とのコラボスイーツや、創業107年の「狩場一酒造」(丹波篠山市)の銘酒「秀月」とコラボしたスペシャルカクテルなども販売します。

深川:フードや物販はもちろん、ワークショップやデジタル技術、装飾など素晴らしいクリエイターがたくさん来てフェスを作ってくれます。音楽がコアになっているフェスですが、彼らもお客さんに「新しい体験」を提供してくれる重要なアーティストのように感じています。

佐藤:あと環境について考える取り組みとして、太陽熱を使って巨大なクジラ型気球をこどもたちと一緒に飛ばしたり、使わなくなった衣料を再利用する「アップサイクルフェルト」でサコッシュやキーホルダーケースを作るワークショップなども予定しています。

三田のカラーを出すフェスに

-全国に大小たくさんの音楽フェスがありますが、「ARIFUJI WEEKENDERS」の強みはどういうところでしょうか?

佐藤:地元・三田のカラーを出しているところだと思います。やっぱり場所があって初めてイベントは成立するので、その土地の力を最大限生かすことが重要と考えています。そこの環境、人、食べ物などを体験してほしいですね。ONEを始めた頃は意識していなかったんですけど、行ったことのない場所に行ったとき、その土地のカラーが感じられると、楽しさにつながるということに気付いたんです。新宮晋さん(三田市在住の世界的造形作家)の風で動く大きな彫刻作品が野外展示されている「風のミュージアム」も見どころです。会場の大芝生広場に併設されているので、歩いて見に行って、遠くに音を聴きながらのんびりしていただくのも良いと思います。

-フジロックを主催するスマッシュが秋に「朝霧JAM」を行ったり、最近では「GREENROOM FESTIVAL」が秋に「Local Green Festival」を行ったりと、同じチームや会社が1年に複数回フェスを開催することも増えています。とはいえ、5月に「ARIFUJI WEEKENDERS」、8月に「ONE MUSIC CAMP」と連続して年2回フェスを開催することはかなり大変では?

佐藤:今それをひしひしと感じています(笑)

深川:実は去年の4月に子どもが生まれたんです。だから、てんやわんや(笑)

野村:すべて同時進行で準備しています。

佐藤:深川さんは普段デザイナーの仕事をやりながら子育てもして、フェスもやっている。フェス業界で女性のオーガナイザー(主催者)って珍しいんです。デザインは全て彼女がやっていて、そこにうちらしさが出ていると思います。

-今後「ARIFUJI WEEKENDERS」をどんなフェスに育てていきたいですか?

佐藤:この先ずっと続けるつもりでスタートしています。1年目はどうしてもいろんなハードルがありますが、少なくともお客さんには大満足してもらい、友達とかと一緒に絶対行きたいと思ってもらえるフェスにしたいです。フジロックに「フジロッカーズ」という言葉があるように、お客さんに「俺たちウィークエンダーズだよね」って言ってもらえるくらいになりたいですね。アリフジに参加したことをきっかけに、おもしろい出会いやコミュニティーが生まれればうれしいです。

インタビュー/写真:藤森恵一郎(神戸新聞)
編集:津田昌太朗

本企画は神戸新聞との共同企画で、神戸新聞の紙面、および公式サイト「神戸新聞ネクスト」にて、特集企画「フェス主義!祝祭の現在地」として連載されています。「サマーソニック」「ラッシュボール」など、関西の人気フェスの開催の裏側にスポットライトを当てた記事も掲載中!

ARIFUJI WEEKENDERS

出演アーティスト
indigo la End
OKAMOTO’S
水曜日のカンパネラ
スチャダラパー
CHAI
DYGL
toconoma
七尾旅人
BREIMEN
YAJICO GIRL
礼賛
KiX Sound System
Sifar

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