【Clockenflap 2025】香港クロッケンフラップ主催者に訊く、フェスの原点と今後の展望

2025年12月5日(金)~7日(日)に香港にて開催される「Clockenflap 2025」(クロッケンフラップ)。今年は日本からVaundy、ELLEGARDENらがラインナップされ、日本からの注目度も例年以上に高まっている。

これまでFestival Lifeでは現地レポート参加方法をまとめた記事なども展開してきたが、今年から日本発のパッケージツアーもスタートするということで、主催チームのメールインタビューを実施。Mike Hill(マイク)、Justin Sweeting(ジャスティン)、Jay Forster(ジェイ)、Simon Bratt(サイモン)の4名に、フェスの成り立ちから今後の展望を語ってもらった。

フェスが生まれたきっかけ&特徴

-クロッケンフラップがスタートしたきっかけについて教えてください。

マイク: クロッケンフラップは、いくつかの流れが合わさって始まりました。ジェイ(共同創設者/アートディレクター)と私は、90年代後半から「Robot」という名義でエレクトロニックやDJイベントを行っていました。一方で、ジェイとジャスティン(共同創設者/音楽ディレクター)は「RockIt」というフェス(2003年〜2006年に香港で開催)に携わっており、そこでの経験もありました。

きっかけは本当に偶然なのですが、ジェイと同じオフィスで働いていたとき、彼がふと「音楽フェスをやろうと思ってる」と言ったんです。「それ面白そうだね、手伝うよ」と答えたのが始まりでした。最初のチャンスは意外なところからやってきました。英国領事館が、イギリスのアーティストを呼ぶためのスポンサーをしてくれたんです。そのタイミングでジェイがジャスティンを呼び、3人がチームになりました。

でも一番の原動力は、個人的な思いでした。私たちは皆、イギリスのグラストンベリーのようなフェス文化の中で育ちました。あの体験は本当に人生の一部のようなもので、当時香港ではそのような場がなかったんです。だからこそ、自分たちが恋しく思っていた“あのフェス体験”を、自分たちが暮らしている街に作りたかった。「自分たちの街に必要なものをつくりたい」という純粋な思いからクロッケンフラップは生まれました。

-昨今はアジアでもたくさんの音楽フェスが行われています。その中で、クロッケンフラップならではの特徴はどのようなところでしょう?

ジェイ: クロッケンフラップは、単なる音楽フェスではなく、「香港という街そのものを体験できる」特別な場です。都市文化に深く根ざし、参加者が共有する発見や驚き、そして記憶の共有が、このフェスを特徴づけています。私たちはビジュアルアートやパフォーミングアートを積極的に取り入れ、観客を“見る側”から“探求する側”へと変化させるような没入型プログラムを作っています。”クロッケンフラップ”という名前自体も、最初は奇妙に思えるかもしれませんが、今では“無限の創造的可能性”の象徴になっています。

また、家族連れにも優しいフェスです。親子で楽しめるクリエイティブなワークショップやプレイゾーンを設けています。さらに、食も大切な要素。香港を代表するフードベンダーを厳選し、食体験を文化表現の一部として取り入れています。多様で豊かな香港の食文化そのものを味わえるのも特徴のひとつです。

-欧米、そして日本を含むアジアのアーティストをラインナップする基準やバランスを教えてください。

ジャスティン: 設立当初から私たちは、香港の魅力を体現するように、西洋とアジアのアーティストをバランスよく組み合わせてきました。新進気鋭の新人からレジェンドまで、独自の切り口で時代に応じてキュレーションしたラインナップを作り上げることが、このフェスの強みだと思います。

また、日本のアーティストは、クロッケンフラップのラインナップを考える上で非常に重要な存在です。DIY系のインディーズから大規模なステージをこなすヘッドライナーまで、日本の音楽シーンには本当に素晴らしい才能が多く、私たちはそれをどんどん取り入れていきたいと考えています。

今年はチケット付きツアーパッケージも販売!

-日本人も多く参加するフェスですが、日本からの来場者のイメージや、今後さらに増やすための取り組みや目標などありますか?

ジャスティン: 日本の観客は本当に情熱的で礼儀正しい。また、フェス文化に慣れている方が多く、私たちがこだわる細部への努力を理解し、評価してくれる、とてもありがたい存在です。

サイモン: クロッケンフラップのラインナップは、国際的かつアジアの最先端アーティストと新鋭のタレントを融合させており、音楽に冒険心のある日本の観客にも強く響く内容になっているかと思います。香港の美しいハーバーフロントを舞台に、アートインスタレーションと国際的な雰囲気を組み合わせ、旅・発見・文化交流が一体となった体験を提供します。

また今年はジャルパックと連携し、フェス旅行パッケージを提供します。日本の音楽メディアとも協力し、「普通のフェスを超えた、行くべき目的地」として発信していきたいと思っています。

【Clockenflap2025】香港クロッケンフラップのチケット付きツアー販売は11月4日(火)まで

今年は新プロジェクト、今後はアジア展開も!?

-それでは主催者目線での今年の見どころを教えてください。

ジャスティン: 音楽プログラムには本当に多くの要素があり出演枠を得るのは非常に競争が激しいので、ラインナップに入っている全てのアーティストに注目してほしいですが、いくつかのハイライトを挙げるとすれば、Vaundyですね。金曜のメインステージを締めくくる彼は、以前からぜひ香港に招きたかったアーティストで、今年ようやく実現しました。しかも今年唯一の日本国外公演になります。

また、Chilli Beans.も以前から注目していたバンドで、出演が決まって本当に嬉しいです。他にもRikon(離婚伝説)など、今まさに勢いにのっているバンドをクロッケンフラップで紹介できることを光栄に思います。

ジェイ: アート面では「Minimax: The Planets」という新プロジェクトが目玉です。これは2年間かけて開発された移動型・モジュラー式の劇場作品で、フェス空間の中でパフォーマンスのあり方そのものを再定義します。

サーカス、ダンス、シアター、ライブ音楽、舞台デザインを融合し、メインステージの合間に自然発生的に公演が展開されます。“流れの中で出会う宇宙”をテーマに、フェスのあらゆる場所を体験型空間に変えていく試みです。「壁のない劇場」として、移動の瞬間を“発見と驚きの時間”に変える、クロッケンフラップの創造性とアートへの挑戦精神を象徴するプロジェクトになるので期待していてください。

-クロッケンフラップの今後の展望を聞かせてください。

マイク: 私たちのビジョンはとてもシンプルです。「常に再評価し、進化し続けること」。それが今日までこのフェスを、意味のある存在として保ててきた理由だと思います。音楽はもちろん、フェスとしての体験自体も、常に改善を重ねています。今後は地域展開にも積極的に検討していきたいと思っています。シンガポールや台湾、そしていつか日本でもクロッケンフラップを開催できたらと考えています。

そして長期的な目標は、「いつか行ってみたいフェス」として世界中の人の“バケットリスト”に載ること。グラストンベリーのように、行くこと自体が夢になるフェスにしたい。ただ、成長は目的ではなく手段。今の時代、デジタル化が進むほど、人と人が直接つながる“リアルな体験”が貴重になっています。クロッケンフラップは、そのつながりを生む場であり続けたい。だからこそ、常に進化しなければならない。それが私たちの使命だと思っています。

-では最後に、フェスを創る、キュレーションする上で大事にしていることは?

マイク: 僕にとって重要なのは、結局のところ「人」と「目的」の2つ。まず第一に大切なのはチームです。長年かけて、私たちは小規模ながらも強くて親密なグループを築いてきました。このチームが機能しているのは、メンバー全員が自分の仕事に心から情熱を持って取り組み、そして誇りに思えるほど高いプロフェッショナルなスキルを身につけているからです。でもそれ以上に、クロッケンフラップに関わる全員が本当に“気持ち”を込めている。その思いや個人的な関わりが、最終的な作品にも感じられる。それこそがイベントの“魂”なんです。

そのうえで、僕の根本的な哲学は「継続的な改善への信念」です。先ほども言いましたが、ただイベントを開催するだけでは不十分。常に学び、再評価し、進化し続けなければならない。それが唯一、真に意味のある存在であり続け、観客に深いレベルで響く体験を生み出す。終わりのないプロセスですが、フェスを生き生きと、そして意義あるものに保ち続ける原動力でもあります。

ジャスティン: 私たちは、来てくれた観客の皆さんに最高に楽しい時間を過ごしてもらい、その中で創造的なインスピレーションを得てほしいんです。クロッケンフラップのようなイベントは、私たちが「みんな一緒にいる」という感覚を持ち、人間として根源的な「集まり、つながる」という欲求を満たす場でもあります。

キュレーションの観点から言うと、私にとって大事なのは「バランス」です。クロッケンフラップは多くの人にとってフェス文化への最初の入り口なので、非常に幅広い層に向けたものにする必要があります。すべての人がそれぞれにとって意味のある体験を楽しめるようにするためには、単なる寄せ集めではなく、全体がきちんとつながりを持って調和するように、細心の注意が必要です。

ジェイ: 私がクロッケンフラップに込めた思いは、「人々をつなげ、日常を超えた体験を提供したい」ということです。単にパフォーマンスを披露することではなく、フェスが終わった後も人々の心に残り続ける“瞬間”を生み出すこと。ビジュアルアートやパフォーミングアートは、日常からの逃避手段であると同時に、観客に内省のきっかけを与える、貴重な機会だと思っています。「キュレーター」「パフォーマー」「観客」の三者によるリアルタイムの対話のようなものです。それぞれが自分のエネルギーを持ち寄り、その交流の中でフェスの魔法が生まれる。人々が覚えているのは“何を見たか”だけではなく、“それを体験したときにどう感じたか”なんです。

私にとってキュレーションのプロセスは非常に直感的で、本能に導かれるものです。1年を通して、自分の興味を刺激するものを吸収し、それらを他の人と共有することで形を成していく──その結果として、風変わりなアイデアが生まれることもあります。その瞬間には本当に魔法のような、生きる喜びがあります。読書をよくするのですが、時間をかけてそうしたさまざまな経験や思考が絡み合い、ときには時代の空気を捉えることもあるんです。


Photo:Clockenflap公式
Text:津田昌太朗
協力:香港政府観光局/ジャルパック

主催者おすすめ香港スポット

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インタビューされた人
Mike Hill(マイク)
Festival Co-founder, Festival Director and CEO

香港には素晴らしいアウトドアシーンがあります。街中から20分ほどで、自然に囲まれたトレイルに出られるんです。
特にランタオ島、長洲島、ラマ島などの離島はおすすめ。サンセットピークのハイキングは格別ですよ。


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インタビューされた人
Justin Sweeting(ジャスティン)
Festival Co-founder and Head of Music

私も自然派。市街地からすぐ山に入れます。少し足を延ばして離島のトレイルを歩くのも最高。今の季節は特におすすめです。


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インタビューされた人
Jay Forster(ジェイ)
Festival Co-founder and Artistic Director

離島はまるでタイムスリップしたような感覚になります。地元の人が営む小さな店や食堂が並び、手作り感があって“アナログな香港”を感じられます。都会の喧騒とは違う、静かで心落ち着く場所です。


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インタビューされた人
Simon Bratt (サイモン)
COO

音楽好きには「Vinyl Hero」(深水埗)や「The Listening Room」(尖沙咀)がおすすめ。ライブも常にどこかで行われています。食べ物なら「オーストラリアン・デイリー・カンパニー」の朝食や、「添好運」の点心。「譚仔三哥」の麺や「ベイクハウス」のエッグタルトもクロッケンフラップチームの大好物です。

出演アーティスト

12月5日(金)

Vaundy (JP)
Jacob Collier (UK)
Sparks (US)
Panther Chan 陳蕾 (HK)
Passenger (UK)
Digitalism (DJ SET)(DE)
Azabu Punks (JP/HK)
關勁松的 Astrology (HK)

12月6日(土)

Rich Brian (ID)
Beth Gibbons (UK)
Chilli Beans. (JP)
Phum Viphurit (TH)
Rikon 離婚伝説 (JP)
AKASAKI (JP)
Soccer Mommy (US)
Robot Swing (TW)

12月7日(日)

Franz Ferdinand (UK)
Yoga Lin 林宥嘉 (TW)
ELLEGARDEN (JP)
TV Girl (US)
Jeremy Zucker (US)
Godspeed You! Black Emperor (CA)
yeule (SG)
Marcin (PL)
Andr (TW)
Riria (UK)
RSD (UK)
Puuluup (EE)

JALで行く 香港「Clockenflap MUSIC & ARTS FESTIVAL 2025」チケット付きツアー
発売日: 2025年9月3日(水) 10:00
出発日: 3泊4日コース 2025年12月5日(金) /4泊5日コース 2025年12月4日(木)
出発地: 3泊4日コース 東京(羽田) /4泊5日コース 東京(羽田、成田)
最少催行人員:1名
開催日:2025年12月5日(金)~7日(日)

ツアー商品のポイント
●「Clockenflap MUSIC & ARTS FESTIVAL 2025」の3日間通しチケット付き
●当ツアー参加者限定で出発前に公式グッズを割引購入可能。当日、現地でお受け取り
●移動に便利な100香港ドル分チャージ済みのオクトパスカード1人1枚付き(現地所定場所で要引換)

Webサイト

ツアー詳細

fesbasho-09
香港政府観光局
URL:https://www.discoverhongkong.com/jp

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