LOVE SUPREME JAZZ FESTIVALスペシャル対談 | 中村正人(DREAMS COME TRUE)× 社長(SOIL&”PIMP” SESSIONS)

2年連続の開催断念から遂に2022年5月、初開催が決定した「LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL」。出演決定時より、「あのドリカムがジャズフェスに出演!」と話題になっていたDREAMS COME TRUEの中村正人さんと、SOIL&“PIMP”SESSIONSから社長に登場いただき、日本での初開催を迎える本フェスへの意気込みや期待することを伺います。ドリカムへの想いは人一倍あるという社長の一面も見えてくる和やかなトークからスタートしました。(Text:Emiri Suzuki)

Love Supreme Jazz Festival 2022

中村正人(DREAMS COME TRUE)×社長(SOIL & “PIMP” SESSIONS)


-おふたりは今日が初対面でいらっしゃいますね。

社長:僕はこの世界に入ってからずっと「いつかお会いしてお話しできるだろう」と思い続けながら、デビュー以降この日を待っていました。で、今年でデビューから19年!

中村:19年!!すごい、もうベテラン!!

社長:マサさんに会えるまでは意外と時間かかりました(笑)。だから本当に、この同じフェスで名前が並んだのがすごく嬉しくて。

中村:いやいや、ありがとうございます。

-昨年は開催延期になってしまったわけですが、その当時の告知記事などでも社長は中村さんやDREAMS COME TRUEが楽しみというお話をされていました。

社長:僕、“ガチ”ドリファンだったんですよ。

中村:え?マジ?!「ドリ」って呼んでる!社長が(笑)!

社長:いま僕は44歳なんですけど、小6の時に従兄弟からアルバムを借りたのが最初で。そこから『DREAMS COME TRUE』、『LOVE GOES ON…』、『WONDER 3』、『MILLION KISSES』、『The Swinging Star』、『MAGIC』で、ここくらいから自分は洋楽に傾倒していくんですが、そこまでとにかくはまっていて。中学校の頃の日曜日、学校が休みで家にいるじゃないですか?まず朝起きて、ファーストアルバムをプレイヤーに入れるんですよ。で、そこから順番に聴いていって、1枚目から『The Swinging Star』まで聴くと、ちょうど昼飯っていう。日曜朝といえばドリ詣でから始まる、っていう。

中村:えええ、嬉しい。だってそもそも今こんなアルバムすらすら言える人いないですよ?僕ももう段々言えなくなってきてるくらいだから(笑)。

社長:それが本当にもう僕の、礎(いしずえ)です。


-中村さんはソイルのパフォーマンスなどはご覧になられたことはありますか?

中村:僕は動画で見ていました。「好き勝手やっているなあ!」って思って(笑)。アジテーターとか言って、好き勝手に自分でポジションを作っている社長とか。プレイヤーひとりひとりがうまくて、「音を鳴らす」ということのバックグラウンドがあるんだなって。僕はやっぱり、いい音を出している人が好きなの。ギターでもサックスでもペラペラじゃなくてね。海外のアーティストってみんな「うまい」かどうかよりも先に「いい音」が鳴るのね。ソイルはそれをやっているバンドなんだなあって。それが動画だけでも伝わってくるって、なかなか無いんだよ。いい音じゃないと伝わらない。

社長:嬉しいです。ありがとうございます。

中村:で、けっこうコワモテなんだけどいい人たちでしょう(笑)?パンクでファンク、アシッドぽいんだけど、ときどきスムース・ジャズみたいなこともやったりしてて。それもうまいし、偽物じゃない。そういうところがおもしろいよね。

社長:そこに着眼していただけるのはすごく嬉しいです。

-「LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL」では、もともと吉田さんのソロセットとしてあるものをドリカムとしてやる、という展開に期待が高まりますね。

中村:当初は、このフェスでもドリカムがそのまま出たとしてもまあ、ちょっとディスられるくらいで(笑)大丈夫かなって思っていました。ツアーの延長線上という形であればそこまで負荷なくいけるかな?と。でもコロナでこうやって1年延期になっちゃって、だったら上原ひろみちゃんと一緒にやってみるっていうのはどうかと僕が提案して。吉田はひろみちゃんともそもそも友人として仲がいいから逆に気を遣う部分もあったみたいだけど、ひろみちゃんも声をかけたらやるって言ってくれて。じゃあもうドリカムの最新のライヴのシークエンスではないね、となって、ひろみちゃんのアドバイスもあってのメンバーが揃って。……でもどうなるのかわかんない!僕、ベース弾きたくないもん(笑)!自分で首絞めてることになっちゃったから!

社長:僕らは今回は、SKY-HIと一緒にやろうと。

中村:そこだよ!ソイルはそういうことができるから。だって今もうSKY-HIでスタジアムいっぱいになるんだよ?すごいよねえ。もともと仲が良かったの?

社長:彼がラジオなどでソイルをセレクトしてかけてくれていて、そういったところから今回ご縁をいただいてできることになりましたね。

中村:いいなあ、もうなんか “クール!!”って感じで。うちらはそんなクールじゃないからなあ。僕だってそっちのソイルとSKY-HIのほうが観たいもん!

社長:いやいやいや(笑)。でも僕らソイルも上原ひろみちゃんとは仲良しなんで、どんなことになるのかは絶対に観たいです。

中村:知らないよ、どんな風になるか。だってあの上原ひろみと吉田美和ってふたりがいるんだよ?コントロール不可能でしょ。

社長:そこでマサさんがどんな顔をして弾いているのかも楽しみです。

中村:絶対もうベース弾かない。もう挨拶だけして後は椅子に座って聴いていたい(笑)

-(笑)。でもこうしてどちらもお互いの当日のパフォーマンスを観てみたいって思うようなラインナップになっているって、すごいことですよね。このフェスで、この日だけしか観られないことになっていますよね。

中村:新しいジャズフェスって感じになってるよね。僕らの頃のジャズフェスというのとはかなり違う感じ。でもソイルはジャズって言われるの?

社長:ええ。一応ジャズの端っこにいさせてもらっている、という感じですが、結構、多様化していますからね。下の世代にジャズを素養として持っている奴がどんどん出てきていて、振り幅もどんどん広がっていくし。西海岸なんてヒップホップとジャズはほとんど混ざっている感じですし、ミュージシャンもかぶっているし。

-まさに、ソイル以降という印象の世代の方々も今回のラインナップにはたくさん揃っていますよね。リスナー側からすると、ドリカムの場合は、1バンドだけでもドリカムワンダーランドをやってしまってきた、という時点ですごすぎて、外のフェスに出ていくというイメージがあまりつかなかったのですが、今回は思い切られた感じでしょうか?

中村:たとえば60〜70年代とかでファンカデリック、ブーツィー・コリンズ、アースウィンドアンドファイヤーのような大型インストバンドとか、あとはもちろんプリンスとか、そういうものをやりたくてやってきた延長に、ドリカムワンダーランドがあったんだけど。はじめの頃は巨大なCD売上を背景にやってみたものだったけれど、ちゃんとイベントだけでも成立するものにしていきたいと思って、そこから2003年は、一日中野外で音楽が楽しめて、飲食コーナー的なベースを作ってという形になっていったんだよね。

もちろんそれよりも前からフェスっていうのはあったけれども、アメリカやイギリスのフェスとはまた違ったものが日本では2000年代半ば以降にフォーマット化されてきて、すごくいいなあって思っているし。イベンターさんに知見が貯まって上手になってくると、我々もたとえばトイレや水場ひとつとっても、いい環境でできるようになってくる。なんかそういう意味ではワンダーランドをがんばってきてよかったなと思います。

DREAMS COME TRUE WONDERLAND: 1991年にスタートし、4年に一回開催されているDREAMS COME TRUEの風物詩。「史上最強の移動遊園地」と銘打ち、毎回コンセプトを変えながら大型ライヴを展開している。

-ドリカムワンダーランドは、先駆けでいらっしゃいますよね。

中村:みんな余計なことをやりたくないのよ、面倒だから。手間もかかるしお金もかかるし。飲食ひとつ呼んでくるって言ったって保健所とか消防署とかいろいろあるわけだけど。1995年のワンダーランドは今まで誰も何かしたことがない場所で何かをやろうっていうコンセプトでやったから、今の豊洲の市場ができたところもうちが初めてやったり大阪の舞洲も、北海道の石狩湾港も。セットが巨大で船で運ぶしかなかったから、湾岸でやるしかなかったっていうことなんだけどね(笑)。だからそういうフェスやエンターテインメントを持って歩く、というようなことは、我々の先輩も含めての受け継がれてきているもののなかで、ちょっとは力になれたかなって、未だにイベンターの方たちとは話してる。あの時ドリカムが無理言ってなければ今実現できていなかったことがいっぱいあると。その頃はわがままとかって取られたけれどね。……なんか、そんな想いはあるね。

-これも、「礎」の話ですね。

中村:でも本当に、西城秀樹さんはじめ素晴らしい野外でのライヴをやっているから。それこそヘリコプターで登場したり。そういう先輩たちの礎をもう一回掘り返してみるのも大切かなと思っていて。ドリカムが初めてだ、なんて言っているけど、既に西城さんがされていて、確かにそうなんです。だからここらへんで70年代の歌謡曲も含めて総括することも必要かなって思ったりもします。ちょっと話がずれちゃったけど。

社長:でも本当に船でセットを持って回らなきゃいけないっていう、あれを実行に移すってね!もうすごいですよ。当時、まだ音楽をやる前だった僕も、実際ワンダーランドにいったことはないんだけども、テレビの告知などであのステージを観て、まず初めてみた「センターステージ」という概念に衝撃を受けたことを鮮明に覚えてます。「360度で観れるなんていうやり方があるんだな」って。その時のぼくは、マイケル・ジャクソンを東京ドームで、豆粒くらいのサイズでしか観たことがなかったから。本当にすごいなあと思ったのを、まず今お伝えしておかなくちゃと思いましたよ。

中村:CDを皆さんに買っていただいていたからチャレンジができたっていう頃でもあって、超ラッキーだったよね。でも我々の前には米米CLUBさんもユーミンさんもいて。巨大なステージとエンターテインメントが合わさったものをやってきてくれていた。僕らはデビューの頃からユーミントラスと呼ばれるものを使わせてもらっているしね。うちは吉田が結構、フライング演出をするので。そういうのもインフラが整ってくるとどんどん挑戦できるようになるわけで。

-フォーマット化されることでインフラが整い、ミュージシャンも状況に慣れてきて…という流れで今の日本におけるフェスの状況や環境があると思います。ちなみに、今回のLOVE SUPREMEはどうしても英国からこれをもってきたい、という主催者の想いも感じます が、新しく期待することはありますか?

社長:本国の「LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL」が、いわゆるメインストリームのジャズとニューエイジのジャズが分け隔てなくブッキングされ、さらにはDJとかもブッキングされたりとかして。ジャズフェスの中ではかなりアバンギャルドな印象があってすごく羨ましいなって思っていたんです。そこから日本でも立ち上がるとなって、声をかけていただいて、僕は相当に嬉しかったです。ラインナップもまさにボーダーレスで、めっちゃ面白いじゃないですか?こういうことができるのは”LOVE SUPREME JAZZ”っていう看板があるからこそですよね。

中村:でも実質、カテゴライズされていないから…僕たち、責任重大だよね(笑)?

社長:いや、でも、ひろみちゃんですよ?!

中村:そんなやめなさいよ、ひろみちゃん頼み、みたいな(笑)

社長:ひろみちゃんと吉田さん、どう考えても観たいなあってなるじゃないですか。

中村:いや僕はSKY-HIのほうが観たい!

社長:替わりますか(笑)?

中村:そっちでベース弾こうかな。

社長:僕、ベース弾けないです(笑)


-SKY-HIさんとソイルも今回が初めてのコラボレーションなんですよね。とっておき感がありますし、その混ざり合いもアバンギャルドですね。

社長:もうスタジオに実際に入っているんですけど、この日のためにやる曲とかも作ったりして。リハーサルでなんとなく音合わせからしているんですけど、こんな感じって軽く日高くんが乗っけてくれたり口ずさんであわせてくれるだけで「ああこれ間違いないな」って手応えはありましたね。

中村:うちはなんかもうたぶんリハーサルしたって「リハーサルの意味あるの?」みたいな(笑)

社長:でもジャズの面白いところってそこじゃないですか?予定調和じゃないところっていうか。もちろん準備はするけども、当日、音が出てから、終わりの時間のこと以外は何も決まっていない、っていうのがジャズの面白さで。

中村:いやあ、気が重いなあ(笑)

-(笑)。お客さん自身もフェスってこういうものだ、という固定観念をコロナでイベントが減ってしまったことでちょっと忘れかけているからこそ、ある意味、今なら何をやっても快く歓迎されるのでは、などと思ったりもしますがいかがでしょうか。

社長:まあ、もう既に2年こんな感じじゃないですか。やっとコロナ禍でのお客さんの盛り上げ方っていうのをね、もう一回ゼロから作り出しつつありますが。…いや、アジテーターってお客さんに声出させるのが仕事だったのに、それができないんです。どうやってお客さんが声出せないところでも盛り上げるかっていうのを、やっとどうにか掴めてきた感じです。それでもライブの本数は、以前に比べれば圧倒的に少ないですし、まだまだ、見つけてないけれどできることがあると思うんだけど。でもそんななかでジャズフェスのいいところって、ロックフェスと比べてもお客さんのフォーカスする視点が幅広い気がしているので。盛り上がって踊ってイエイ、というのとは別のね。テクニカルな弾き方を観ていたり、アンサンブルの気持ちよさとか、ソリストの持っていく立ち姿だったり、魅力が細かくて広いのがジャズのいいところで、今回もそういうお客さんは多いと思うので、そこへ向けてのアピールの仕方っていうのはまた新しい学びになるんじゃないかなあと期待してます。ただただ盛り上げるだけじゃないっていう。お客さんからもらえるものもたくさんあるだろうなって。

中村:うちは、吉田がけっこう人見知りだからこうやって前に出て話したりするのは僕の役割になっているんだけど、僕も実は結構、だめなのよ(笑)。社長みたいなタイプの人はすごく好きでいけるんだけど…。フェスの現場ってミュージシャン同士も仲良くなっていってるけど、ドリは絶対にそれがなくて。誰にも会わずに控室に入って、誰とも言葉を交わさぬままそっと出て帰るタイプ。

社長:(笑)。でも僕は今回、フェスのバックヤードでおふたりにお願いして、スリーショットの写真を撮ることを目標にしていますから。

中村:社長なら絶対に大丈夫!

-そのあたり、ぜひ社長がどんどん斬り込んでいっていただいてドリカムにもフェスを好きになっていただきましょう!

Interview/Text:Emiri Suzuki
Photo:Kohichi Ogasahara

Love Supreme Jazz Festival 2022

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