コラム ピックアップ

フェスな人005 | 夏の魔物・成田大致がフェスへの想いとユニット結成秘話を語る

%e3%83%95%e3%82%a7%e3%82%b9%e3%81%aa%e4%ba%ba05-2

10年前、19歳という若さで「AOMORI ROCK FESTIVAL 〜夏の魔物〜」というフェスを主催し、フェスシーンで一気に注目の的になった成田大致氏。それから一度も休むことなく青森でフェスを開催し続け、誰もが予想しない個性的なブッキングに加え、自身のプロレス的な言動で常に注目を浴び続けてきた。最近では、バラエティー番組「アウトデラックス」に出演するなど、その独特なキャラクターは10年前から健在なわけだが、こと自身の音楽に関しては順風満帆といったわけではない。

バンドの解散や度重なるメンバーの脱退を経て、自分の本当にやりたいことを模索したここ数年。多くの挫折を味わいながらも、ついに今月、自身が主催するフェス「夏の魔物」と同じ名前を背負ったユニットで1stアルバムをリリースした。今回のインタビューで話を掘り下げていくと、やはり彼の発想の根幹には「フェス」的な要素が散りばめられている。まさに「フェスな人」である成田氏に、自身の音楽活動、そして彼にとっての「フェス」を赤裸々に語ってもらった。

夏の魔物・成田大致氏にインタビュー

_mg_0124

——この「フェスな人」シリーズで初となるフェス主催者をお呼びしました。今日はよろしくお願いします。

夏の魔物のボーカルで、同じ名前の「夏の魔物」というフェスの主催者もやっている成田大致です。よろしくお願いします。

——Festival Lifeの読者にとっては、フェスの「夏の魔物」の印象が強いと思うのですが、ユニットとしての夏の魔物について、結成のきっかけから聞かせてもらえますか?

くるりさんの「京都音博」、氣志團さんの「氣志團万博」ってフェスにホスト役がいるじゃないですか。「夏の魔物」というフェスにはそれがないなと思って。俺自身音楽活動もしていたんですけど、そこに対する負い目があったんで、そこをフィーチャーもしたくないなと思ってホストユニットを作ったのがはじまりですね。

——以前はTHE WAYBARKというバンドで「夏の魔物」にも出演していましたが、そのバンドがホスト役という位置付けではなかったんすね。

ホスト役ではなかったですね。そもそも僕は見ての通り「酒・タバコ・ロック」みたいなものとほど遠くて。当時モッズスーツを着ていたからミッシェルとかハイヴスみたいなことをやりたいんだろうなってみんな思ってたと思うんですけど、聞くのも見るのも好きだけど自分自身はそんな感じじゃないなって思って。ライブとか作品を作っていく中で、本来の自分とものすごく遠いなって感じてたんです。ロックンロールは好きですけど自分でやるには・・・

——それで一気にスタイルを変えたんですね。

そうです。「実はこういうのやりたいんだ」って当時のバンドメンバーに言ったんですよ。それからバンド名をSILLYTHINGに変えて、アニソンとかアイドルソングとかロックとか、自分がやりたいことを全部ぶち込んだアルバムを全力で作ったんです。ただそれを今までモッズスーツ着ていた人たちにやれって言ってもできないというか。フランス料理作っていた人に中華料理作れっていうようなものですからね。俺が表現したかったものはバンドという形でやるには難しかったんですよ。

——そうやって今の夏の魔物の原型が出来上がっていくわけですね。

作品としては未完成のまま世に出したというか、「何かをやりたいんだろうだけど、結局大致は何したいの?」って言われることがその当時本当に多くて。

_mg_0160

——SILLYTHING時代はまだ模索中という感じでしたよね?

そうなんですよね。やっぱり俺が求めていたのはソロ的なことではなくて一緒に作る”バンド感”だったんですよね。それってサポートメンバーだと難しい。漠然とやりたいことがあるんですけど、どうすればいいかがわからなかったんで、当時は、作品とライブ、ビジュアルをリンクさせることができなかった。自分で自分がわからなくもなったりして。ただその時でもやりたいことははっきりあった。ただただやり方が分からなかったんですよね。

——バンドじゃなかったと。

そうなんです。俺がやりたいことはバンドじゃ表現しきれないということにやっと気づいて。それで打ち込みに移行していったんですよ。まあ、打ち込みのやり方もわからないんですけど(笑)

——それまで直球のバンドマンでしたもんね。

自分は楽器もできないし、曲は作ってるけど鼻歌なんで、とにかく作り方が分からなかった。なんて言えばいいんだろう、打ち込みをやるにしてもラーメンで言ったらトッピングを全部載せる感じでしたね(笑)卵も海苔も全部マシマシにしたら食べづらいですよね。そういう感じで色んなものを加えていって、当時はそれでいいと思ってたんですけど、どんどん伝わらなくなって、音楽からも離れていっちゃったんですよ。作品が完成しても打ち込みで無理やり作ってるんで、ライブで歌える子がいない。俺もバンドやめてからは前に出て歌うのをやめてたんで。

——当時はあえて端にいたようなイメージがありますね。

そうですね。ジャケットとか写ってても、半分見切れてるみたいな。みんなを盛り上げたい気持ちが強くて、一歩引いて盛り上げるような立ち位置にいたんです。ただ、2014年の「夏の魔物」終了後にメンバーほぼ全員がやめてしまったんです。

——そんな中、現メンバーでもある大内さんは残りましたよね。

そうなんです。そんな誰もいない中で大内さんだけ残ったんです。そうなったら俺歌うしかないじゃないですか(笑)

——そもそも大内さん(大内雷電(ライディーン))とはどうやって出会ったんですか?

そもそもはツイッターで大内さんをお気に入り登録してチェックしていたんですけど、彼がそのときやっていたバンドを辞めるっていうんで一緒にやろうって突然誘ったんですよ。全く面識なかったんですけど、タイムラインで見てて趣味が合いそうだから誘ったんです。会ってみたらやっぱりその感覚は間違ってなくて、それ以来ずっと一緒ですね。一緒に絵を描くにあたって感覚を共有できる大切な相棒なんですよ。

——アントンさん(アントーニオ本多)はどういうきっかけで?フェスの「夏の魔物」ではMCをしていましたよね。

そうですね。加入のきっかけはSILLYTHING時代にアントンさんに歌詞を書いてもらったんですよ。そのときに漠然とアントンさんと何かやりたいと思って、今に繋がったって感じですね。ここにたどりつくまでいろんなメンバーの変更とかありましたけど、俺が一緒に何かやりたい人と必然的に繋がっていったんです。自分が迷っていたときに、ふらっと行った大森靖子さんのライブで歌っていた塚本舞ちゃんと出会ったり。メジャーというフィールドで戦うなら、いずこねこのマリちゃんが絶対必要だと思って連絡したりだとか。

夏の魔物 「SUNSET HEART ATTACK」

——なんだかフェスのブッキングみたいですね。自分が出したい人を出すのがフェスで、自分がやりたい人とやるのがバンドみたいな。

そうですね。夏の魔物っていう名前にしたり、自分が真ん中に立つことを選んだことも全部フェスとリンクしているのかも。

——個人的には「夏の魔物」って名前つけたことで吹っ切れた印象を受けました。

そうですね。歌に真摯に向き合うこともなかったんで。都度都度一生懸命にやってはきたんですけど、改めて歌いたいことがあるとか、伝えたいメッセージがあるとか、普通はそういうことがあってバンド組むじゃないですか。でも当時の俺にはそれが欠けていたんで。自分のバンドだけど自分から遠かった。そういう意味で吹っ切れたのかもしれませんね。今はどこまでいっても等身大なんですよ。

<改ページ>

成田大致とフェス

_mg_0129

——19歳という若さで「夏の魔物」というフェスを主催したわけですが、そもそもの成田さんの、フェスの原体験って何ですか?

高校生の時にいっぱいフェス行ってたんですよ。フジロックとかライジングサンとか。それぞれに色んな感動があって。今でもよく覚えているのが、ライジングサンでフィッシュマンズが復活したんですよ。野外でフィッシュマンズの音楽が流れていて、ちょうど夕暮れでUAさんが歌っていたのかな。それにすごく感動して。自分の原体験として、10代の時にフェスに行きまくったというのが、やっぱりフェスをやりたいという気持ちに繋がっていますね。あと、フジロックに初めて行った時に、当時僕に彼女がいて。まあ高校生ですし、遠くに行くからはしゃぐじゃないですか。そしたら、彼女が一緒に来れないことがわかって、「これはチャンスだ!」と思ったんですよね(笑)今でも覚えてるんですけど、ROOKIE A GO-GOのステージがある辺で、東京に住んでいる先輩に「今日泊まりに行って良いですか」って連絡して。それで次の日の朝にテントを片付けてる時に、なんかキャンプサイトの通り道から知っている人が歩いてきてるなと思って見たら、それが彼女だったんですよ。

——サプライズですね。

普通サプライズで彼女が来たら喜ぶじゃないですか、来れなかったはずの彼女が来たんだから。でも俺は全然「あ、来たんだ。」みたいな感じのリアクションをしちゃって。そしたら、彼女に感づかれてバレてグリーンステージ付近で地球が割れるくらいの大げんかしていなくなっちゃて。もう連絡もつかないし、あの広い苗場の中だから探せないし。でも彼女はUAが好きだったので、きっとUAが終わった瞬間なら捕まえられるんじゃないかと思って待ってたんですけど、来ないし。その時のことは色々覚えてますね。RED MARQUEEでLOSALIOSを見てる時に彼女にぶん殴られたりとか。

——フジロック自体は楽しめたんですか?

楽しめたというか、そういういざこざがあった中で流れている音楽ってすごく鮮明に覚えてますよね。JETのライブとか観てたら「Are you gonna be my girl?」って歌ってて、「あーやっぱりそうだよな」って思うみたいな(笑)。よく覚えてますね、The White Stripesを一人で観たこととか。とにかくフェスで見たものって、野外ってこともあるのかもしれないけど、鮮明に覚えているんです。だからそういう記憶に残るものを自分でも作ってみたいというのが、「夏の魔物」を開催しようと思ったひとつの理由ですね。

——他にも好きなフェスとか、気になるフェスってあるんですか?

氣志團さんの「氣志團万博」は最高だと思います。やっぱり空間として、本当は俺がやりたいものはあれだなって思います。アーティストのチョイスもそうですし、煽りっぷりというか、空間の作り方の好みが(綾小路)翔さんと似てると思うので。というよりも自分が好きで影響を受けてるんですけどね(笑)。なので「夏の魔物」も「氣志團万博」みたいになっていければなと思います。例えば、氣志團という象徴がいるように、夏の魔物も同じです。象徴的なものをフェスもユニットも合わせて作っていければなと思ってやっています。

©AOMORI ROCK FESTIVAL '15〜夏の魔物〜

©AOMORI ROCK FESTIVAL ’15〜夏の魔物〜

——フェスの主催者でありながら、フェス出演者でもあるわけですが、「夏の魔物」以外のフェスに出るとかはどうなんですか?

常に出たいと思ってますよ。「夏の魔物」のホストユニットとはいえ、他のフェスには全然出て行きますよ。フジロックもライジングサンもJOIN ALIVEも出たい!関西ならOTODAMAに出るのが夢です。他にもアラバキはいつもお客さんで行ってるし、出演者としていつか出たいと思ってますね。もちろん氣志團万博も。

——フェスの出演を意識した楽曲作りをしているんですか?

そうですね。パーティーソング的なものだったり、どの時間帯で出てもどんな規模のステージに出ても戦えるような曲を作ってます。今年はTIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)に出たんですけど、こういう音楽とプロレスの融合みたいなユニットっていないじゃないですか。フェスという空間自体がクロスオーバーしてると思うんでけど、夏の魔物はまさにそういう存在なんです。TIFにも出るし、フジロックにも出たい。そういう振れ幅を持ってるバンドはなかなかいないんじゃないかな。

——存在というか発想がフェスの本質と近い気がします。

友達に「大致くんは「夏の魔物」という空間は作れるのに、バンドの作品で作れないのはなんでだろう」って言われたことがあって。確かにそうなんですよ、フェスに必要な起承転結というか、抑揚みたいなものが、以前は音楽活動に出せなかったんです。でも色々吹っ切れて、今の夏の魔物の活動ではそれが出来てると思うんですよね。

——今年の「夏の魔物」に行けば、アーティストとしての夏の魔物も、フェスとしての「夏の魔物」も存分に味わえると。

「夏の魔物」は今年で10周年なんで少しでも興味がある人には絶対来て欲しい。でもいきなり青森まで行くのは…という方もいると思うので、そんな方はまず9月16日(金)に恵比寿リキッドルームでファーストアルバム発売記念の「夏の魔物現象2016」というイベントに足を運んで欲しいです。そこで雰囲気を味わってもらって、それから10月1日(土)の「夏の魔物 10周年記念大会」に!

——では最後に、成田さんにとってフェスとはどんな存在ですか?

思い出がより特別なものになる場所かな。行くのも大変だし、天気もそうだし、それも含めた状況の中で音楽が鳴っている。そんな印象的なシーンを鮮明に覚えているし、色んな影響も受けてきました。今でもSEがなったシーンとかが思い出せたりするんです。あの感動はフェスでしか味わえない。そういう場にでてくときのアーティストの他では見られない”本気”を目撃しに行ってるんです。「やってやる!」みたいな。これを逃したら一生後悔するんじゃないかってのいうものが、観られるのがフェスの魅力ですね。緩いものには興味がない。だからこそ自分も、そういう本気を感じてもらえるものを作りたいと思ってます。

Interview & Text by Shotaro Tsuda
Photo by Chika Takami

夏の魔物 通常盤(CD only)
夏の魔物 通常盤(CD only)
posted with amazlet at 16.09.13
夏の魔物
ポニーキャニオン (2016-09-07)
売り上げランキング: 46,636

 

『夏の魔物』公式ユニット オフィシャルサイト
http://natsunomamono.com/dpg/

2016年9月7日(水)発売ファーストアルバム「夏の魔物」
http://mamonodpg.com/release_1stAL/index.html
・初回限定盤A(CD+DVD) ¥3,500(税込)/PCCA-04414
・初回限定盤B(2CD)¥3,500(税込)/PCCA-04415
・通常盤(CD only)¥3,000(税込)/PCCA-04416

【収録曲】※全形態共通
01:恋愛至上主義サマーエブリデイ
02:魔物、BOM-BA-YE 〜魂ノ覚醒編〜
03:恋の天国はケモマモハート
04:爆裂レボリューション
05:SUNSET HEART ATTACK
06:世界は愛と夢で出来ている
07:東京妄想フォーエバーヤング
08:バイバイトレイン
09:ダーリン no cry!!!
10:どきめきライブ・ラリ
11:リングの魔物
12:未来は僕等の風が吹く
13:サマーロマンサー

2016年9月16日(金)開場16:30/開演17:30 @恵比寿リキッドルーム
夏の魔物ファーストアルバム発売記念
「夏の魔物現象2016」10th ANNIVERSARY BOM-BA-YE

出演:人間椅子、大森靖子、生ハムと焼うどん、ベッド・イン、吉田豪、夏の魔物+魔物BAND(ウエノコウジ・森信行・越川和磨・ハジメタル)、クロユリ from 夏の魔物、※スペシャルゲスト:大槻ケンヂ、and more…!!

2016年10月1日(土)@青森県東津軽郡平内町夜越山スキー場
『AOMORI ROCK FESTIVAL’16 〜夏の魔物〜 10周年記念大会』

mm出演:夏の魔物withヒャダイン、曽我部恵一BAND(Vo,Gt.曽我部恵一 Ba.大塚謙一郎 Dr.オータコージ)、田島貴男(ORIGINAL LOVE)、大槻ケンヂ、人間椅子、BELLRING少女ハート、清 竜人25、藤井隆、POLYSICS、神聖かまってちゃん、グッドモーニングアメリカ、My hair is Bad、忘れらんねえよ、向井秀徳アコースティック&エレクトリック、ROLLY、SCOOBIE DO、うつみようこ、THE NEATBEATS、HINTO、バンドTOMOVSKY、ザ・チャレンジ、Wienners、アーバンギャルド、DOTAMA、Creepy Nuts(R-指定&DJ松永)、MOSAIC.WAV、SuG、ベッド・イン、クリトリック・リス、ジョニー大蔵大臣、早見優、こぶしファクトリー、バンドじゃないもん!、ゆるめるモ!、PassCode、生ハムと焼うどん、Maison book girl、ライムベリー、The Idol Formerly Known as LADYBABY、椎名ぴかりん、デスラビッツ、二丁ハロ、吉田豪、杉作J太郎、掟ポルシェ、久保ミツロウ・能町みね子、小山健、伊藤賢治、DJやついいちろう、DDTプロレスリング、スーパー・ササダンゴ・マシン、火野裕士、クロユリfrom夏の魔物、and more…
公式HP:http://natsunomamono.com/
チケットぴあ:http://w.pia.jp/t/nnm/

RELATED ARTICLES関連記事

LATEST ARTICLES最新記事