今ジャカルタが熱い!東南アジア最大級のヒップな都市型フェス「We the Fest」レポート

今年の春に「THE WORLD FESTIVAL GUIDE」という海外フェスに特化したガイドブックを出版した。出版にいたるまで、100を越す海外フェスに実際に足を運んで、その体験を1冊にまとめたが、書籍というフォーマットの都合上、ピックアップしたすべてのフェスの詳細を記述することはできなかったので、掲載できなかった情報をウェブ上で少しずつ公開していきたい。

今回取り上げるのは、インドネシアの首都ジャカルタで毎年夏に開催されている「We the Fest」という都市型フェス。「インドネシアにフェスのイメージなんてない」という方がほとんどだと思うが、今世界中を巡る中で、個人的に面白いと感じるのがアジアで開催されるフェス、とりわけ若者の絶対数が多く、あらゆるユースカルチャーが進化しつつある東南アジアで開催される音楽フェスだ。

今年だけでもタイ、フィリピン、ジャカルタ、シンガポール、香港、韓国に足を運び、アジアのフェスにどハマり中。アジアならではの独特の空気、若者の熱量、これからさらに文化として発展していきそうな雰囲気は、アジア、特に今の東南アジアでしか味わえない。アジアのフェスに関しては、書籍では、ページ構成の都合上、大きく取り上げたのは、香港「Clockenflap」とタイ「Wonderfruit」あたりだったので、今回ピックアップする「We the Fest」を皮切りにいくつかのフェス情報を公開していく。(Text:津田昌太朗)

「フェス×旅」をテーマにした海外フェス完全ガイドブック「THE WORLD FESTIVAL GUIDE」発売決定!

About We the Fest

インドネシアで毎年7月中旬に3日間にわたり開催される都市型フェス。初開催は2014年。2017年からは現会場であるJakarta International Expo(国際展示場) にて開催されている。地理的には、ジャカルタの中心部からやや北に位置するが、それまではジャカルタの中心部の公園で開催されていた。気候を考慮して夕方からの深夜にかけて行われる。2017年までは8月開催だったため、サマーソニック出演アーティストがラインナップされることが多かったが、2018年からは7月末開催となり、フジロック出演アーティストが数組ラインナップされる形となっている。ジャンルはオールジャンルで、ヒップホップ、ポップス、ロック、地元の人気アーティストも出演する。EDM系のフェス「Djakarta Warehouse Project」なども手がけるIsmaya Liveが主催している。

出演アーティスト

2019年:Troye Sivan, Rae Sremmurd, Travis, Joji, Anne-Marie
2018年:James Bay, Lorde, SZA, Alt-J, Odesza
2017年:The Kooks, Phoenix, Big Sean, Kodaline, G-Easy

スケジュール

7月中旬〜下旬(2019年は7月19〜21日、2020年は8月14~16日開催予定)

開催地

インドネシア・ジャカルタ
Jakarta International Expo(国際展示場)

チケット&エントランス


チケットはインターネットから購入できる(英語表記あり)。購入したらe-voucherがメールで送られてくるので、当日は受付にそれを見せるとリストバンドに変更可能。3日通し券は15,000円程度。専用バーやラウンジのあるVIPチケットもあるが、そこまで長時間滞在のフェスではない&特に過酷な環境でもないので、通常パスで問題ない。他にもグループ割や1日券の販売も。2019年はウェブではソールドアウトになったが、当日現地受付でチケットの購入も可能だった。ダフ屋らしき人も結構いたが、英語も喋れなさそうだったのでわざわざリスクを犯さず、オフィシャルから事前に購入しておきたい。

昨今テロなども起きたことがある土地柄なのでエントランスがかなり厳重かと思っていたが、比較的ラフ。飲み物やタバコなどは回収されてしまうこともあるが、スタッフ次第という感じ。カメラなどは問題なく持ち込みできた。

アクセス

参加者はタクシーで来場するのが一般的。インドネシアは電車などの公共交通機関が他国に比べると発達していないので、ジャカルタでの移動はタクシーが基本。配車アプリのGrabかGojek(Uberの東南アジア版)は必須。2019年に参加した際はフェスにGojekがスポンサードしており、エントランスにGojek専用の待合所があって、配車してそこで待っていれば運転手が歩いて迎えにきてくれるので便利。会場近くに流しのタクシーもたくさんいるが、英語も伝わらないことも多いので、必ず配車アプリを利用したい。

また空港から会場まで向かう場合は、慢性的な渋滞しているので2時間かかることも。街の中心部からでも同じで、夕方は特に混み合っているので、見たいアーティストがいる場合は早めの行動がベター。

滞在スタイル


会場近く(徒歩15分以内)にいくつかホテルはあるが、近距離でも歩くという概念があまり存在していないのか、舗装されていない道路を歩くことになる。会場から最も近いHoliday Inn Express Jakarta International Expoは開催1ヶ月前には予約が埋まっていたので、もしどうしても会場から歩いて帰りたいという人は早めの予約を。ちなみに同系列で会場から幹線道路を挟んだHoliday Inn Jakarta Kemayoranはオフィシャルホテルにもセレクトされているが、歩道橋や横断歩道は一切ないので徒歩で行くのは難しい。タクシーの値段がかなり安いので、昼間は観光しやすい街中から夕方にフェス会場に向かうのがおすすめ。あまりに暑いのでフェススタートは夕方から。昼間は観光するなり、ホテルでゆっくり過ごすのもあり。

今回滞在したホテルは、Orchardz Hotel Industri。一泊5000円以下でバイキング朝食付きで清潔なホテル。フェス参加者の滞在もちらほら。ただし徒歩の場合は道なき道を20分歩くので一人や女性だけの場合はタクシーを使った方がいい。ホテルの目の前にコンビニあり。

会場内の雰囲気


圧倒的に若者が多く、ジャカルタのおしゃれな若者が勢ぞろいといった感じ。現地在住の友人に聞いてみると、こんなにも露出が高く(宗教上の関係で女性の露出は少ない)、英語の会話が飛び交っていることはジャカルタでも珍しく、そもそもチケット代も高いので、ある程度裕福な若者でないと参加するのは難しいとのこと。現地で話かけてみるとインターナショナル系の学校に通っているという若者も多く、外国の文化に興味を持っている層が仲間と一緒に訪れるヒップなイベントとして捉えられている様子。会場の装飾も手の込んでいて、H&Mをはじめとしたアパレルブランド、さらに現地の飲料メーカーなど、企業ブースも充実しており、コーチェラを意識しているような作りになっている。頭上に複数の傘が装飾として飾られているなどアジアっぽさもあり、歩いているだけ楽しいが、会場の作りはコンパクトなので、15分ほどで全体を回ることができる。かなり蒸し暑いが、屋内エリア(ステージ2箇所と物販など)も広く、クーラーが効いている&トイレも屋内のものが使えるので快適に過ごせる。また女性専用の着替え・メイクアップエリアがある。

食事&物販


食事も豊富で、現地の有名店のナシゴレンや日本食(ラーメン)なども充実していた。ラーメンはチャレンジしてみたが微妙…。食事の相場は500円〜1000円。お酒や飲み物は500円以下。現金やカードは使えず、リストバンドにチャージするスタイル。クレジットカードでも現金でもチャージ可能。会場のエントランス付近にも大量の屋台が出店しているが、フェス参加者はそこではなく中で食べている。現地民によると、こういうところに出店している屋台は水道がなく、同じ水でお皿を洗ったりしているので不衛生で注意とのこと。屋台で食べているのは音漏れを楽しんでいる層が多かった。ただ超ローカル感を味わえるので、それを楽しみたい方は自己責任で。

また、会場内にあるオフィシャル物販はかなり充実しており、オフィシャルTシャツでけでも20種類ほどある。Tシャツだけでなく、ロゴ入りのカバンや靴なども販売しているが、アーティスト物販はほとんど用意されていなかった。購入は現金&クレジットカード可。

出演アーティスト&ステージ


コンパクトな会場内にステージは3つ。メインとなる屋外ステージ1つと屋内ステージが2つ。そのうち一つは小規模で地元のアーティストが多く出演する。ジャンルはオールジャンルで、ヒップホップ、ポップス、ロック、地元の人気アーティストなど様々。

出演アーティストは日程の都合上、フジロックと重なる部分もあるが、日本の来日のないアーティストも多い。ちなみに今回の目当てであり、ベストアクトは88risingのJoji。今年アジアではマレーシア、インドネシア、韓国のみでのフェス出演だったが、ジャカルタでは圧倒的な存在感でヘッドライナー前にも関わらず、会場は超満員で、前日のヘッドライナーのTravisの倍はいたはず。その様子をFUDGEの連載コラムでも取り上げたので興味ある方はぜひバックナンバーをチェック!ヘッドライナーでは、Troye Sivanのインドネシアでの人気に驚かされ、現地アーティストでは、1日目に出演していた男女デュオEndah N Rhesaのライブに引き込まれた。

周辺の観光情報


フェス会場の周辺にはほとんど遊べるようなスポットはなく、南に下った中心地にクラブなどが点在している。昼間は独立記念塔(モナス)や「美しいミニ・インドネシア」という意味のタマンミニインドネシア公園なども初めてのジャカルタなら訪れるのもあり。街中には近代的なショッピングセンターがあるかと思えば、裏路地には道で食料や正体不明の品々が売られている通りなどもあり、まさにカオス。観光客なら一度は訪れるということで、最終日にはカタ地区にある「Café Batavia」へ。インドネシア料理はもちろん、植民地時代の名残を感じるヨーロッパ調の雰囲気も他の店では味わえない独特の雰囲気だったので、時間があればぜひ。また、外の広場で特に何もないのに多くの人が集まって駄弁っているだけの光景はこの場所ならでは。

2020年開催情報


年明けに2020年度の開催日程も発表された。例年はフジロック前の7月開催であったが、東京オリンピックの影響で日程が変更になったフジロック開催にあわせて、8月中旬の開催となることが明らかになった。あわせて割安の前売りチケットも発売もスタートしている。(2020年1月10日追記)

Text:Shotaro Tsuda
Photo:We the Fest Official(Nareend,Melina Anggraini,Syafira Muthiarys,)

We the Fest 2020
日程:2020年8月14日(金)~16日(日)
会場:インドネシア・ジャカルタJakarta International Expo(国際展示場)
公式サイト

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