「サマソニ」20年の歴史を支えたのは、徹底的な現場主義!クリエイティブマン・清水直樹氏が明かすブッキング裏話

―ちなみに、同日開催の「ウッドストック 50」は、寝耳に水だと仰っていましたが……(笑)。



ホントに全然知らなかったからさ(笑)。ただ、もうブッキングが8割〜9割は決まっていたから、特に「サマソニ」に影響が出るっていうことはなかったかな。それに「ウッドストック」だから、50年前の当時出演したレジェント系が出るだろうと思ったし、あとは日本ではなかなかブッキングできないヒップホップの大物とかね。このご時世にフェスでヒップホップ・アーティストを出さないのってありえないし、その2つが中心になると予想すると、そこまでダメージは無いなって。

―今年、ビヨンセやアークティック・モンキーズの名前があったらドラマティックだなと思ったんですが、やはり10年前とは何もかも状況が違いましたか?


10周年(2009年、この年も3日間開催だった)で出たビヨンセを20周年にも出すっていうのは、もちろん頭の片隅にはあったけどね。ただ、10年前のビヨンセはフェス出演に積極的だったんですよ。当時はロック・フェスがまだ女性アーティストに対してオープンじゃなかったから、そこを僕らも一緒になって切り開いていきたかったし、タイミング的にもあそこしか無かったと思う。そして、2018年の「コーチェラ」で彼女はあれだけのステージをやってのけた。だから「サマソニ」には出ないだろうなと思ったし、あのセットで来られても正直困っちゃうというか(笑)。「ビヨンセの『サマソニ』」で終わっちゃうからね。

―女性アーティストという観点では、ビヨンセ、テイラー・スウィフト、レディー・ガガ、アリアナ・グランデのすべてが出演したことのあるフェスって、世界でも「サマソニ」だけだと思うんですよ。で、去年はビリー・アイリッシュ、一昨年はデュア・リパが出演していて、キャンセルにはなってしまったけどアデルも2008年に出る予定だったじゃないですか。


ケイティ・ペリー(※)もね!
※2009年に出演予定だったが、ドクターストップによりキャンセル。


―そうでした(笑)。世界中のフェスで女性アーティストが主役となりつつある今の状況を、清水さんは予見されていたのでしょうか?


予見というか、音楽業界でも映画業界的でもずっと「女性が少ない」と言われてきたわけじゃないですか。それは昨今のジェンダー・ギャップの問題とかも含めてね。それに対して、早い時期からオープンだったというのは間違いなくありますね。バンドだとどうしても男性が多くなるから、逆にソロ・アーティストは女性を中心にブッキングしようってバランスを取ることもあったし。それを経て、今はポップ・アーティストが主役の時代になってきている。そういう意味ではホントに、自分でもブレずにやって来て良かったなって思います。


―それこそ去年、ビリー・アイリッシュをあのタイミングで、あの規模のステージ(ソニック・ステージ)で見られたのは凄いことだなって。

今となっては伝説と言えるかもね。2009年のレディー・ガガのときだって、最初は小さなダンス・ステージに出てもらう予定だったけど、「これヤバいよ」となって急遽深夜の「MIDNIGHT SONIC」に変更したし、大阪はメイン・ステージに変えたもん(笑)。そういうことが数週間・数ヶ月レベルで起こるっていうのを日々体感しているし、これもフェスをやる醍醐味かもしれないな。


―では、今年の日別のラインナップについて詳しく聞かせてください。東京初日(18日大阪)にはThe 1975やペール・ウェーヴス、さらにトゥー・ドア・シネマ・クラブのような「サマソニ」と共に日本でのファン層を拡大してきたバンドが再集結します。ギター・ロックに元気が無いと言われる時代において、彼らにはどんなことを期待しますか?


基本的には「ロック」のフェスとして始まっているし、いわゆる洋楽のロックが好きでこの世界に飛び込んできた人間なので、思い入れはありますよね。ただひとつ言えるとしたら、「ポップ・フィールド」で戦えるロック・バンドがもっともっと出てきて欲しいし、それを応援してあげたい。そういう意味でThe 1975はその最右翼だと思っていて、実際にそうなりつつあるし、「サマソニ」でもずっと推しているバンドのひとつです。だから、未来あるアーティストを毎年何かしら拾い上げて、「サマソニ」でプッシュしていく。それは我々がやらなきゃいけないことだと思っています。


―振り返れば、カサビアンもアークティックもそうやって「サマソニ」と共に日本でのファン・ベースを広げていった印象があります。


みんなが「ロック」を聴かなくなったらどうしようって思うこともあるけどね(笑)。さっきも言ったように、「コーチェラ」があれだけ時代に合わせて変化しているわけだから。まあ、日本はまだまだバンドが強いから、すぐにそうなるとは考えられないけど。

―続いて2日目(16日大阪)ですが、意外にも初出演となるフォールズと並んで、ブリング・ミー・ザ・ホライズンやキャットフィッシュ・アンド・ザ・ボトルメンのようなUKではヘッドライナー級のバンドが揃いました。同時に、BABYMETALやMAN WITH A MISSION、CHAI、東京スカパラダイスオーケストラ、オロノ率いるスーパーオーガニズムといった、海外で活躍する日本人アクトも充実。海外との温度差を埋めるというか、このあたりのバランスは意識されましたか?


やはり海外に照準を合わせているバンドが「サマソニ」に出る/出たいっていうのは、すごく自然なことだと思いますね。しかも、レッチリはバンドマンなら誰もが大好きでお手本にする存在じゃないですか。そこにこれだけのデカいアーティストが集結するっていうのは納得できるし、ブッキングをする上でも助けられましたね。ベビメタやマンウィズだって我々とずっと一緒にやって来たバンドですし、「サマソニ」の20周年を祝おうっていう気持ちになってくれたんだと思います。

―東京のみですが、この日はサカナクションとコラボした「NF in MIDNIGHT SONIC」が決定しています。


サカナも2016年のレディオヘッド前にやってくれたし、過去には「SONICMANIA」にも出てくれていたから、20周年で何かできないか? って話になったんですよ。でも、今までと同じことはやりたくない。そこで生まれたアイディアが「『MIDNIGHT SONIC』をサカナクションに任せる」ってことだったんだよね。なので、今はそれぞれでブッキングを進めている最中です。


―海外のアーティストにも声をかけているんですか?


うん、最低でも2組は欲しいと思っていて、多ければ4組かな。サカナクション側からも「呼びたい」ってリクエストがあるからね。まあ、ムチャな要望もありますけど(笑)。そこは頑張って交渉していますよ。


―彼らは幕張メッセで大規模なワンマンも開催していますし、ある意味「ホームグラウンド」と言えそうですね。そして最終日(17日大阪)には、「コーチェラ」や「ULTRA」にも負けないエレクトロ・ミュージックの大物が多数出演します。

ここにはホント入魂したよね。ただ単純にDJやEDM系で揃えるんじゃなくて、その流れの中でもディスクロージャーやフルームがいたり、ヒップホップ・アクトもいて、日本のアーティストもバランス良くブッキングする。この日は「トータル・バランス」をかなり意識しています。


―「コーチェラ」で奮闘したBLACKPINKとPerfumeが出演するのも嬉しいポイントです。特にPerfumeは、2007年に大阪の「サマソニ」に出演して以来、フェスの顔的存在となりました。今や海外でも戦えるようになった彼女たちの活躍をどう見ていらっしゃいますか?


「コーチェラ」のステージは感動的でしたね。必ず見ようとは決めていたんだけど、「コーチェラ」ってとにかく色んなアーティストを見たいから、アタマ何曲か見たら移動しようかと思っていたんですよ。でも、結局最後まで見入っちゃったもん。「海外で戦う」っていう意思をしっかりと感じられるパフォーマンスだったし、お客さんが次々と吸い寄せられていって、気づいたら身動きできないような魅力を放っていましたね。2週目の生配信が決まったのも、1週目のライヴが評価されたからだと思いますよ。

―いっぽう、BLACKPINKは絶賛ワールド・ツアー中ですが、フェスティバルとしての出演は「コーチェラ」と「サマソニ」だけなんですよね。どうやって彼女たちと事務所を口説いたのでしょうか?


実は、BLACKPINKが日本武道館でやったデビュー前のライヴ(2017年7月のデビュー記念ショーケース)にも呼んでくれていたんだよね。で、彼女たちは他のK-POPアーティストとは違う見せ方をしていきたいと事務所からも相談されていた。海外アーティストのサポートもやりたいし、いつかは「サマソニ」にも出たいと。で、タイミング的にも今年だなと思っていたし、チェンスモとゼッドの日なら彼女たち自身も出たいだろうなと思って、逆オファーしました(笑)。


―音楽性的にも、EDMとは相性が良い気がします。


「コーチェラ」でも色んなところで彼女たちを見かけたし、すごく楽しそうだったね。「SAHARA STAGE」でやったBLACKPINKのライヴも見に行ったんだけど、みんなが当たり前のように合唱できる凄さというか。マーク・ロンソンも見に来ていましたよ。なんかもう、K-POPが市民権を得たんだという事実をまざまざと見せつけられましたね。

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