FM802 DJ竹内琢也が気になるあの人にインタビュー vol.05 | 社長(SOIL&”PIMP”SESSIONS)

SOIL&"PIMP" SESSIONS 社長 FM802 インタビュー

FM802のDJ竹内琢也が音楽業界の気になる人にインタビューする「BEAT EXPO 10-minutes GRAVITY × Festival Life」。第5回目となる今回は、2016年10月から半年間の充電期間を経て復活を遂げたSOIL&”PIMP”SESSIONSのアジテーター・社長に、今注目している若い世代のアーティストや自身の海外フェスでの経験などをお聞きしました。(interview 2017.4.25)

Festival Life × FM802 BEAT EXPO 10-minutes GRAVITY
vol.05 社長(SOIL&”PIMP”SESSIONS) interview by 竹内琢也

-社長はSOIL&”PIMP”SESSIONSでアジテーターという役割を担当されていますが、具体的にはアジテーターはどういうことをしているのでしょうか?

“お客さんとステージを繋ぐ役割”ですね。僕らはボーカルのない、インストゥルメンタル・ジャズバンドなので、どこで声をあげたらいいかとか、どう踊ったらいいのかというのが分かりにくい部分もあると思うんですよ。そこで、僕が声と身振りで「どうぞ、いま騒いでください!」とわかりやすく煽ったりします。ライブでそんな言い方をすることは絶対ないんですけど(笑)。アジテーターは、”お客さんと一緒にライブを作るための指揮者”みたいな感じですね。

-国内では、アジテーターが存在するバンドってそんなに多くないですよね。

アジテーターは、もともとレゲエやスカにルーツがあるんですよ。日本で最初にアジテーターをやっていたのは、東京スカパラダイスオーケストラのクリーンヘッド・ギムラさん。彼が1995年に亡くなったあとには、冷牟田 竜之さんがアジテーターを担当していましたね。レゲエでは、マイクを持って喋る人を「DJ」、レコードをかける人を「セレクター」と呼びます。なので、レゲエのアジテーターはDJということになりますね。

-海外でライブをするときに、アジテーターとして”言葉の壁”の難しさを感じることはありますか?

もちろんありますよ。でも、基本的に英語であれば理解してもらえますし、それ以前に音楽という言語をやっているわけなので、そこまで気にしないです。ただ、英語はできることに越したことはないですよね。今の若い世代の子たちって、英語もできるんです。きっと努力なさってるんだと思います。若いときから、海外でやるぞという意識を持っているんでしょうね。

-SOIL&”PIMP”SESSIONSは国内外を問わず、いろいろなフェスに出演されていますが、特に印象的だったのはどのフェスですか?

初めて出演した2003年の「FUJI ROCK FESTIVAL」ですね。このときはまだアマチュアで、CDを1枚も出していない状態だったんですが、FIELD OF HEAVENのトップバッターに抜擢して頂いたんです。いま考えるととても光栄なことですね。バンドがステップアップしていく最初の一歩だったんじゃないかな。

-初めて出演したFIELD OF HEAVENはどうでしたか?

出演したのは一日目の最初だったので、演奏を始めたときは人が少なかったですね。それでも、ステージ前にいつもライブハウスに来てくれる常連さんが駆けつけてくれていました。フジロックでは知名度のない状態でしたが、お客さんは音を聴いて興味を持てば、足を止めてくれるんですよね。最終的に40分間のステージを終えるころには、後ろの方まで埋まっていました。その経験は、自信になりましたよ。そこからすべてが始まったとも言えます。

-初めて海外で出演されたフェスは、2007年の「Glastonbury Festival」(グラストンベリー・フェスティバル)ですか?

うちのバンドはジャズフェスティバルにも出演していたので、初めて出演した海外フェスは「MONTREUX JAZZ FESTIVAL」か「North Sea Jazz Festival」のどちらかでしたね。でも、大きなフェスということになると、グラストンベリーになるのかな。

-グラストンベリーへの出演は、Gilles Peterson(ジャイルス・ピーターソン)に認められたことがきっかけとして大きいと思うのですが、どのような経緯でジャイルスのもとにSOIL&”PIMP”SESSIONSの音源が届いたんでしょうか?
(※ジャイルス・ピーターソンは世界的に有名なレーベル「Acid Jazz」や「Talkin’ Loud」の設立者)

Talkin’ Loudとも契約していたジャズDJグループ「United Future Organization(U.F.O.)」の松浦 俊夫さんという方が、ジャイルスに「このバンド、きっと気に入ると思うよ!」と紹介してくれたことがきっかけで、ジャイルスの担当しているBBCのラジオ番組で曲をかけてもらったんです。

-フェスで行った国は何ヶ国くらいありますか?

現時点(2017年4月)で29ヶ国は行ってますね。アメリカやヨーロッパ以外にも、マレーシアやシンガポール、ベトナムに行きました。ベトナムでは、戦隊モノのヒーローショーをやるような大きな広場で演奏したんですよね。ベトナムの地元バンドも出演していました。

-国によって、お客さんの印象は変わりますか?

僕は”国によって”というところを意識しないようにしているんです。そのときにそのフェスに集まった、その瞬間のお客さんのリアクションで、その国のことを語ることはできないので。それでも、このフェスはノリが違うなと感じたりすることはありますよ。

-例えばどういうときですか?

クロアチアで演奏したときは、アンコールの要求が拍手ではなく”ステージを叩く・地面をストンピングする”でしたね。地響きみたいな感じになって、「おお、これはステージに出て行かないとヤバいぞ!」と感じました。

ハイレベルな若手がいる日本の音楽シーンは、これからどんどん面白くなる

FM802 BEAT EXPO - SOIL&"PIMP"SESSIONS社長

-SOIL&”PIMP”SESSIONSは、「夏びらき MUSIC FESTIVAL 2017 大阪」(2017年7月1日(土)服部緑地野外音楽堂)に出演されます。僕も当日のMC / DJとして参加するんですが、共演アーティストの中で気になるアーティストはいますか?

基本的に「夏びらき MUSIC FESTIVAL」の出演者は仲がいいアーティストばかりなんですが、そのなかでも今年はシンガーソングライターのiri(イリ)が気になっているんです。以前CDを聴いてみたんですが、声が太くて驚きましたね。最近の”20代前半の世代”が、上の世代を突き上げてくる感じが「ヤバいな!」と思っていまして。

-SOIL&”PIMP”SESSIONSは、時代のパイオニアとしてシーンを切り開いてきたバンドですが、最近のSuchmosやWONK、そしてiriのような”20代前半の世代”を社長はどのように見ていますか?

本当にレベルが高いですね。やりたいことがはっきりと見える音づくりをしているし、だからこそ目的に向かってものすごく練習していると思うんですよ。だから技術も高い。それに加えて、僕たちが扱えないテクノロジーを駆使してたりするから、自分たちも頑張らないと本当にやばいなと思います。この”突き上げ感”は今まで感じたことのないものですね。その中でもiriの声って魅力的だし、ライブで見てみたいなと思います。

-こういうシーンと社長は、直接的な繋がりはあるんですか?

先輩面してよくライブ観に行ってます。

-社長が来ていたら、怖いと思いますよ(笑)。

目立たないように、こっそりと行ってますよ。ライブも面白いですしね。

-社長が20代のときと比べて、時代が変わったから今の音楽シーンができていると感じることはありますか?

ありますね。僕はJames Blakeが1つのキーパーソンになっていると思っているんです。彼がダブステップのフォーマットを使用しながらも、ロックのオーディエンスをロックしたのは事件だったと思うんです。それ以降、ああいった音をライブハウスで鳴らすことを追求していった世代が次の「ポストJames Blake」なんじゃないかなと思っていて。そんな音が全世界で同時発生しているけど、日本が特に豊かなんじゃないかというのが勝手な僕の持論です。

-なぜ、日本が特に豊かだと感じるのでしょうか?

「ハイレベルな音づくりをする若い連中が多くいる世代」が存在する日本の音楽シーンは、これからどんどん面白くなると思うんです。歌モノとかインストとかそういう分け隔てもないし、ロックなのかダンスミュージックなのか、仕切りも境目もない。本当の意味でいろんな垣根を取っ払って、気持ちの良い音を鳴らしているのが今の”20代前半の世代”だと思うんですよ。

-彼らを音楽的に括る上でブラックミュージックの影響が挙げられますが、それだけでは決してないということですよね?

もうそのレベルの話は通過して次のステップに行っているんじゃないかと思うんです。飽くまで僕の考えなので、正解かどうかは分からないですけどね。

インタビュー後記 by 竹内琢也

2016年10月から半年間に及ぶ充電期間を経て、2017年4月に活動再開したSOIL&”PIMP” SESSIONS。4月21日に、梅田クラブクアトロで行われたRHYMESTERとの対バンライブに行ってきましたが、本当に素晴らしいライブを見せてくれました。7月1日(土)には、大阪 服部緑地野外音楽堂で開催される「夏びらきMUSIC FESTIVAL 2017 大阪」に出演!社長も気になるシンガー、iriとのイベント共演です。僕もMC / DJとして参加しますので、ぜひお越しください!

Text by 峯原拓也
interview by 竹内琢也
DATE:2017.4.25

>>SOIL&”PIMP”SESSIONS: https://www.jvcmusic.co.jp/soilpimp/
>>FM802 : https://funky802.com
>>BEAT EXPO : https://funky802.com/expo/

▶︎竹内琢也
20歳のときにワールドミュージックを紹介する番組でキャリアをスタート。現在はFM802 Monday&Tuesday 19:00~21:00「BEAT EXPO」、Thursday&Friday 5:00~7:00「DASH FIVE!」を担当。選曲、構成、ミキシングを手がけるアメリカンスタイルでもオンエアをしている。BECK、NORAH JONES、CLEAN BANDIT、ALABAMA SHAKES、OWL CITYなど海外アーティストへのインタビューも多数。

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