4つのバンドで表現をする川谷絵音が、音楽フェスの全盛期に思うこと

“みんなが聴いているもの”ではない音楽を知るということ


―シブめの音楽をどのように届けていくか、ということにもつながるのですかね。

いや、でもね、”シブめ”って判断してるのも、結局その人の主観。日本って「みんなが聴いてるものを聴かないと!」という強迫観念に囚われている人が多いと思うんですよ。学校のクラスで、みんなと違うもの聴いてたらいじめられるじゃないですか。日本で未だにCDが売れてるのも、基本的に自分で選び取ろうとしていないからだと思う。CDなんてもう海外では”音楽を聴く”ためには必要がない、グッズのひとつみたいなものになってきていて。で、一方ストリーミングは、徐々に増えてきているとはいえ、まだまだあんまりっていうのも日本独特だなあと。

―”みんなが聴いているもの”を聴いていることで安心する、と。

そう。それとフェスの状況って同じなんじゃないかなと。自分で選び取っていない。あるものにコミットしていくためでしかない、「”楽しんでいる自分”が好き」みたいな。まあ、それはそれでいいとは思うけど、もっともっといろんな音楽があるから。だからもしCDが無くなってストリーミングだけになったらリスナーからすれば月額でしかなくて、アーティストに払われるお金については見えにくくなるし「どれにお金払ってるから聴こう」という世界ではなくなるから、もっといろんな音楽を聴いてもらえるようになると思うんですよね。

―確かに。みんながそれぞれに選び取り、強い主流みたいなものが無くなっていくのでしょうかね。

それでも、テレビなどもあるので「主流」はあるはず。でも過去の成功による価値観が無くなったときに、もっと自由な世界になるんじゃないのかなって、音楽単体では、思いますよ。

― indigo la Endでも、ゲスの極み乙女。でも。新しい人に聞いてもらう、知ってもらうために、何か普段と違うことにフェスの場で挑戦してみようという思いがありますか?

ワンマンはやはり”ホーム感”があり、お客さんも曲の盛り上がる部分など聴き込んできてくれている。でもフェスだと通りがかりにちょっとだけ聞いたり、曲を知らない状態でライブを観ていることも多いので、普段よりちょっと緊張はします。MCに関しても僕の場合はあんまり変わらず、間が怖いので「誰かと喋ろう」と思うと、フェスのような大きい会場でもステージから変わらずお客さんに話しかけちゃいますから。「ああ、これで届いているのだろうか」とか、そういった不安は常にあるものの、やることはそんな変わらないです。

indigo la Endは、基本的には”音楽を演奏する”ということに集中し、あまりに突拍子もないこととかは絶対にしない、という自分達なりのスタイルがあるバンド。だから僕の中でも変えずに、ただただ演奏するみたいな感じです。ゲスの極み乙女。に関しては、去年のフェスでいきなり楽器を持たずに出ていったりとか、そういう実験みたいなことを、突然やったりしているかもしれない。

―フェスだからこその実験や挑戦をしてみた、ということですね。それはバンドの総意としてやっているんですか?

いや、特に総意とかではなく僕が「やろう!」と言い出したことをやっています。フェスもね、ずっと出続けていれば当然飽きてきちゃいますし、僕の場合はやっているバンドがひとつじゃないのもあって、そうやっていくつか出演していると本当に段々と感覚が麻痺してくる。夏は毎週末フェスにいるような状態で、途中で気が滅入ってくるわけです。開催場所が東京ではない場合も多いから「あれ?今どこにいるんだっけ?」となったりして。そういう意味でも、何か自分で面白いことしていきたいよな、とは思います。

今年からはさらにジェニーハイというバンドも増えていて、このバンドでもフェスに出ます。小藪さんやくっきーさんといった芸人さんがメンバーにいてくれるので、ゲスよりもさらに面白いことができそうだなとは思うものの、このバンドでまだ一度しかライブもやっていないので、逆に、もうフェスの場でジェニーハイの形を作り上げないといけないことになってきている、という。そしてジェニーハイに関してはフェスが最初で……最後かも?

―え!そうなんですか?!

いや、まあわからないですけど(笑)。北海道・岩見沢での「JOIN ALIVE」と山口での「WILD BUNCH」に出ることだけは決定しているんですけど、今のところなんと2曲しか無いんですよね。いや今、作ってはいますけど、よく持ち曲1〜2曲しかないバンドをフェスに呼んだなと思って。「一体どういうつもりなんだ!」と(笑)。もうMCとかでひたすらつなぐのかな……。楽しみにしておいていただければ。この夏は4つのバンドで、がんばります。

Text:鈴木絵美里
Yahooフェス特集より転載

川谷 絵音 (かわたに えのん)
1988年長崎県生まれ。indigo la End、ゲスの極み乙女。、ジェニーハイ、ichikoroのバンドメンバーであり、ボーカルやギターとして活動をしている。2018年8月29日にゲスの極み乙女。から4thフルアルバム『好きなら問わない』をリリース予定。

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