2025年10月4日(土)・5日(日)に初開催される「MASHUP FESTIVAL kobe」(マッシュアップ)では、兵庫県内で独自のスタイルを育んできた七つのローカルフェスが同日に神戸へ集う。「ローカルフェスの万博」とでもいうべき前例のない試みを統括する大原智さん(一般社団法人GREENJAM)にその狙いと見どころをじっくり語ってもらった。
INTERVIEW:大原智(MASHUP FESTIVAL kobe)
—今回新しく立ち上げたフェスのコンセプトについてお聞かせください。
今回マッシュアップフェスを立ち上げた神戸は兵庫県にあるんですけど、兵庫のフェス事情っていうのは、とても面白くて。実はフェスの開催数はとても多いのですが、フジロックやロッキンみたいな巨大フェスっていうのはないんですね。じゃあ代わりに何があるかというと、草の根的なローカルフェスっていうのがたくさんある。これを一堂に集めることで、面白いことができるんじゃないかなというのが、スタート地点です。今回は5つのエリアを設けています。万博に例えるなら各エリアがフェスのパビリオンのような、ローカルフェス版万博のようなお祭り空間を目指しています。
ー兵庫県は面積が大きくて、「兵庫五国」(摂津・播磨・但馬・丹波・淡路)といわれるように、それぞれの地域で文化が違うということがよく言われています。なので、私も生まれも育ちも兵庫県ですが、実は「兵庫県」というものに対して、思い入れとかアイデンティティみたいなことを感じたことはないんです。
僕も実感としては「伊丹」「尼崎」「神戸」といった阪神間が生活と活動のフィールドで、兵庫県という大きな括りだと広すぎて、正直ピンとこない。ただし、いろんなお仕事で兵庫全体をひとつのまとまりとして意識する機会が増えて、この1〜2年で「兵庫県」というスケールにも愛着を持てるようになった。それと同時に、実は兵庫には「すでに面白いローカルフェスやプレイヤーが揃っている」と実感して、それらを束ねれば大きな力になるんじゃないかなと考えるようになりました。
特に今回の舞台になる神戸は、海・山・温泉といった兵庫の自然や文化が凝縮されている、兵庫全体を象徴できる「リトル兵庫」のような街だと思ってます。だからこそ、兵庫各地のフェスや文化を「神戸に集約する」形でマッシュアップをやりたいと構想しました。
ー大原さんが、その地域ごとの文化の違いを「多様性」とおっしゃってたのが印象的でした。そのあたりはフェスにも反映されているんでしょうか。
はい。今回参加するフェスは七つあります。まず、私が伊丹市で開催する「伊丹グリーンジャム」はフリーフェスで、地元のお祭りや文化祭のような特色があります。次に「パインフィールズ」は神戸の「太陽と虎」や「COMING KOBE」のチームが主催し、ライブハウス風のラインナップが特徴です。三田市の「One Music Camp」と「ARIFUJI WEEKENDERS」は同じ団体が主催している、ワークショップとかアクティビティに特化したフェスティバルです。三宮の飲食チームが主催する「ブジウギ音楽祭」で、ステージや音楽に加え、クオリティの高いフード出店が特徴です。最後は「爆発メルヘンシティ」と「六感音祭」で、こちらは女性のオーガナイザーが主催しており、マルシェやファッション、カルチャーに特化しています。という感じで、全体としてライブステージだけじゃなく、フード、アクティビティ、マルシェなどエリアによってフェスの特色が出ていると思います。
ー普通のフェスではステージによってサイズ感やアーティストの系統が違うということはありますが、ここまではっきりとエリアコンセプトが決まっているものは珍しいですね。たしかに「違うフェスを同時にやっている」と言っても過言ではない、というのがわかるエリアの特徴だと思います。
それに加えて、アーティストラインナップも充実しています。1日目は伊丹グリーンジャムは比較的パブリックでオープンなコンセプトなのでDef TechやPUFFYなど、広い方々に楽しんでいただけるラインナップになっています。パインフィールズはライブハウス的な感じが強い、HUSKING BEEや、w.o.dなどが出演します。One Music CampとARIFUJI WEEKENDERSはZAZEN BOYZやモーモールルギャバン、浪漫革命など、ロックやインディー系が特色、ブジウギ音楽祭はヒップホップやカルチャー寄りのアーティストが多く、どんぐりずやneco眠るなどが出演します。爆発メルヘンシティと六感音祭は、スカートや奇妙礼太郎さんなど比較的柔らかい印象のアーティストが多くなってます。
2日目はグリーンジャムがスチャダラパー、パインフィールズはHump Backや髭、One Music Campから石野卓球さん、サニーデイ・サービス、ブジウギ音楽祭からは民謡クルセイダーズや韻シストバンド、爆発メルヘンシティと六感音祭からは真舟とわさんや、ONIさんなど女性アーティストがたくさん出演します。良くも悪くも幅広すぎるラインナップになっています。
ーアーティストのコラボレーションなど、マッシュアップならではの企画はありますか?
例えば、1日目に出演するSARUKANIというアーティストと、カンボジアの国民的ラッパーであるG-Devithがこのフェスのための楽曲「SHAKE MAN」を制作してくれました。フェス出演を理由に、出演アーティスト同士がコラボ楽曲を作るというのは多分聞いたことがないと思います。また、複数の三宮のライブハウスが展開するステージも登場予定です。さらに、爆発メルヘンCityと六感音祭のステージでは、愛はズボーン儀間建太さんとHump Backの林萌々子さんの夫婦コラボライブだたり、高野寛さんとスカート澤部渡さんとのコラボなど、コラボを前提としたステージとなっていて、2日間に渡って様々なアーティストがコラボライブを展開します。
音楽以外も充実のエリア&コンテンツ
ー他にも特徴的なコンテンツはありますか?
たくさんあるのですが、二つ紹介させてください。一つは、神戸はアートやカルチャーがすごく盛んな町です、そんな三宮のカルチャーシーンのど真ん中にいるペインターやアーティスト、ミュージシャンたちが、メリケンパーク内にエリアを展開します。彼らの表現とキッズエリアが一体になった空間が登場する予定です。もう一つは、メリケンパーク会場内で開催される障害者のブレイクダンスの世界大会です。これは私も見に行ったことがありますが、めちゃくちゃ面白いです。なかなか見る機会がないと思うので、ぜひ見てほしいです。いろんな感性が刺激されると思います。
ー家族連れも楽しめる工夫はありますか?
さっき言ったキッズエリアがありますし、フード・マーケットはもちろんのこと、神戸ポートミュージアム 1Fにある「 TOOTH TOOTH MART FOOD HALL&NIGHT FES」という施設をオフィシャルの室内休憩ラウンジとして使えるようにしています。屋内でオフィシャルに一息つける場所も用意していますので、家族連れでも比較的敷居の低い設計になっていると思います。
ートークセッションなども予定されていますか?
はい、オフィシャル休憩ラウンジのテラスで、やります。Festival Lifeの代表で、Kobe City Festivalアドバイザーでもある津田昌太朗さんがMCとなって、トークセッションを2日間で6セッションぐらい予定してます。各フェスの主催者だけでなく、兵庫県知事にもきて頂き街の観点からのお話をしてもらったり、あとは「神戸と食」などのテーマでのカンファレンスを開催する予定です。
ー神戸といえば「食」も楽しみです。フェス後の楽しみ方も考えられていますか?
ある飲料メーカーさんに協賛という形で協力してもらって、イベント側から三宮の街中の飲食店にビールの樽をお渡しさせて頂く、というプロジェクトを進行していまして、フェスは18〜19時頃の比較的早い時間に終わるので、帰りに三宮で「ご飯を食べて帰ろう!」という感じで、リストバンドを提示するとそのビールが無料で飲めるようにしています。これもフェスと街とのマッシュアップという感じで。
ーどんな人に来てほしいですか?
普通の人に来てほしいんです。「今週どこに行こうかな」と「関西お出かけ」「神戸お出かけ」で検索するような人たちに、来てほしい。10月の1週目の週末のお出かけスポットの選択肢の一つとして選んでほしいです。フェスではありますが、市民まつりみたいな感じで、「ちょっと行ってみようかな」という。「今日はショッピングモールじゃなくてマッシュアップに行こうか」というぐらいのライト層に来てほしいというのが、イベントとしての望みです。
ー音楽に特に興味がなくても楽しめる?
そうですね。「近所でやってる祭り」ぐらいの感覚の人にも来てほしいと思います。もちろん音楽好きや、誰が出るから、誰が出店するからという理由で来る人ももちろん歓迎ですが、そういう特定の目的がなくても楽しめるようになっていると思います。 このイベントの体験は、普段のショッピングモールとは違う面白さがあると思います。なぜなら、会場には日常では味わえない雰囲気があり、大量生産された既製品ではなく、作り手のこだわりや個性が光る音楽や、アイテムや表現に出会えるからです。
ー最後にこの記事を読んでいる方へのメッセージをお願いします。
七つのフェスがそれぞれのカラーを持って同時開催されるという、ものすごいエンターテイメント空間、万博のようなお祭り空間になることは間違いありません。なおかつ、全国的にも事例がない、当日見ないとわからない風景が繰り広げられると思います。ぜひ会場に足を運んでいただき、この全国初のフェスティバルを肌で感じてください。きっと楽しんでいただけると思います。
出演アーティスト
10月4日(土)
【ITAMI GREENJAM】
PUFFY
Def Tech
アバンギャルディ
ガガガSP
SARUKANI
G-Devith(from カンボジア)
【PINEFIELDS】
HUSKING BEE
w.o.d.
【ブジウギ音楽祭】
neco眠る
imai
NAGAN SERVER
どんぐりず
PARKGOLF
ナツ・サマー with Bagus!
テレビ大陸音頭
【ONE MUSIC CAMP】
ZAZEN BOYS
モーモールルギャバン
柴田聡子
【ARIFUJI WEEKENDERS】
浪漫革命
【六感音祭】
xiangyu
徳利
川辺素
【爆発メルヘンCity】
奇妙礼太郎
天々高々
澤部渡(スカート)
高井息吹
高野寛
10月5日(日)
【ITAMI GREENJAM】
スチャダラパー
RowHoo
Wadfah(from タイ)
【PINEFIELDS】
Hump Back
髭
FIVE NEW OLD
SABOTEN
【ブジウギ音楽祭】
民謡クルセイダーズ
韻シストBAND
NEKOSOGI
NEKOSOGI
鶴岡龍(LUVRAW)
SATTU CREW
Neibiss
【ONE MUSIC CAMP】
石野卓球
DSPS(from 台湾)
【ARIFUJI WEEKENDERS】
サニーデイ・サービス
U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESS
イルカポリス(from 台湾)
【爆発メルヘンCity】
儀間建太 / 林萌々子
真舟とわ
ONI
K-ing_ASKA IMPERSONATOR
【六感音祭×爆発メルヘンCity】
東郷清丸
テニスコーツ
池間由布子
【ONE MUSIC CAMP×六感音祭×爆発メルヘンCity】
向井秀徳アコースティック&エレクトリック
参加フェス一覧
・ARIFUJI WEEKENDERS
週末にちょっと特別なフェス体験。大阪・神戸から約1時間、兵庫県最大の都市公園「有馬富士公園」に広がる天然芝の広大な空間で、心躍る音楽ライブ、ここでしか味わえない絶品グルメ、こだわりアイテムのショッピング、会場まで送迎つきのキャンプなど様々なアクティビティを思いきり満喫できる体験型野外フェス。・ONE MUSIC CAMP
「みんなであそぶフェス」をコンセプトに兵庫県三田市の森の中にあるキャンプ場で開催される、関西を代表するキャンプフェス。ライブはもちろんキャンプや真夏のプール、フードやおしゃれショップなど大人や子どもが思いっきり「あそべる」アクティビティ盛りだくさん。大自然と最高の音楽で自由になってあそんでください。・PINEFIELDS
神戸にあるライブハウス”太陽と虎”やレコーディングスタジオ”Studio UMI”を運営する傍ら、日本最大級無料チャリティーフェス”COMING KOBE”を始めとし様々なイベント制作を手掛けるPINEFIELDS。
「ユーモア」を第一に誰よりも「楽しみ」「遊び」ながら極上のエンターテイメントを皆様へ。・ブジウギ音楽祭
飲食業態のBOOZYSが主催するからこその「極上の食事」と「心地よい音楽」が魅力のお祭り!
普段から大盛況の京阪神の飲食店が多数集結する、他に類を見ない本格的なフード&ミュージックフェスティバルです。
食と音が一体となった最高にハッピーでホットな体験を是非ご堪能ください!・六感音祭
出会い・繋がり・輪(縁)の調和 そこに実在する第六感を研ぎ澄ませ、そこから生まれる新しいきっかけが見つかる場所に という想いのもと2022年よりスタート。多種な音楽ジャンルの融合と厳選されたショップのラインナップ。各方面のカルチャーをMIXし、演者・出店者・オーディエンス共に参加できる空間を作る。・ITAMI GREENJAM
2014年から兵庫県伊丹市で開催されている入場無料のローカルフェスティバル。
地域の多様な異なるコミュニティや個人が一堂に会し、作り手としてそれぞれの違いを超えて表現を持ち寄る「ボーダレス市民文化祭」を掲げる。 未就学児から年配の方まで約1000人もの作り手が参画し、市民主体で開催する地方フェスの先駆けとして注目を集める。・爆発メルヘンシティ
「別名:ローカルカメレオンイベンター」
フェス・ライブ・DJ・マーケット・ライトパフォーマンス and more!とにかく”体感”を大事に、アッと驚く!ワッと楽しい!新感覚コンテンツを企画・制作・サポートしています。縁の下の力持ち的!きっとどこかでお会いしているはず!
10月兵庫「MASHUP FESTIVAL kobe」最終発表でアバンギャルディ、PARKGOLF、おばけ座ら45組追加
150以上のフェス情報を掲載!「フェス旅 日本全国音楽フェスガイド」4月発売決定。10-FEET、西川貴教、TOSHI-LOWのインタビューも収録
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