Creema YAMABIKO FES主催者インタビュー「遊び心と情熱で音楽シーンに定着するフェスへ」

2022年11月5日(土)・6日(日)に静岡・遊RUNパーク玉穂にて開催される「Creema YAMABIKO FES 2022」(クリーマ・ヤマビコフェス)。昨年初開催となったフェスだが、豪華なラインナップとアウトドアサウナやマーケットなど個性的なコンテンツが話題となり、コロナ禍ながら1万人が来場した。

今年は会場を新たに、くるり、クラムボン、KICK THE CAN CREWら12組の出演が決定。サウナ村やクラフト市に加えて、スポーツなどのアクティビティも増えてさらにパワーアップ。そんなフェスを主催するクリーマの代表・丸林耕太郎氏に、フェス開催のきっかけ、初開催の苦労、さらに企業とフェスの関係について当事者として思うことを語ってもらった。音楽シーンに定着するフェスを目指すという「Creema YAMABIKO FES」の展望とは?

11月静岡「Creema YAMABIKO FES 2022」第3弾発表で、KICK THE CAN CREW、リーガルリリー、birdの3組追加

INTERVIEW:丸林耕太郎(クリーマ代表取締役社長/Creema YAMABIKO FES 総合プロデユーサー)

-今日は「Creema YAMABIKO FES」(以下、YAMABIKO FES)について色々と聞いていきたいのですが、まずクリーマという会社について教えていただけますか?

クリーマという会社は、ハンドメイドマーケットプレイス「Creema」をはじめクリエイターのエンパワーメントを目的とする様々なサービスを展開しています。2013年、日本にまだまだ馴染みの浅かったクラフトカルチャーを広めるため、「ハンドメイドインジャパンフェス」(以下HMJ)というイベントを東京ビッグサイトではじめました。当初は、クラフトカルチャーや市場も今より全然小さかったんですが、カルチャーが根付くときって、それを象徴する何かがあると思うんですよね。例えば日本のロックフェスだったらフジロックのような。僕たちも、カルチャーの勃興につながるようなこれまでにないオルタナティブな場所を作る必要があると思ってHMJをはじめたんです。それが次第に大きくなっていって、Creemaも成長していきました。

-HMJをやっていたことが、Creema YAMABIKO FES開催につながったのですか?

そもそもHMJとは別に、以前から、音楽を中心に様々なカルチャーが融合するイベントをやりたいというのはあったんです。Creemaが国内では最大のサービスに成長し、会社の経営も安定したので、より大きな新しいチャレンジができるようになりました。そんな中でコロナ禍に入り、来場者とクリエイターが直接コミュニケーションを取るHMJのような大型イベントは開催できなくなりました。フラストレーションが溜まる中で、僕たちができることって何かないのかと考えたときに、屋外でソーシャルディスタンスが取れた野外フェスならできるんじゃないかと。また、コロナ禍でいろんな人のいろんな考えがぶつかりあって、世の中でいろんなことが分断されてみたいなことが起きつづけて、怒りに似た感情がどんどん大きくなっていきました。そんな状況の中で、年齢も立場も思想も関係なく、シンプルに、みんなが笑顔でハッピーに集まれる場所を作りたいと強烈に思うようになったんです。Creemaもそうだったんですが、戦略的に考えて企画したのではなく、そういう感情的な理由から始まりました。

-もともと考えていたこととコロナの状況が重なって、昨年秋に初開催になったんですね。

そうですね。たまたま静岡県の方からも会場に関するお話などもあって、音楽とクラフトのカルチャーを融合させた新しい野外フェスにチャレンジしたいという話をして。2021年のはじめくらいから動き始めたので、急ピッチで進めて11月に開催しました。

-初開催となった昨年の感想はいかがですか?

フェスをやる上でどんな人に来てもらいたいかといったターゲット設定は実はそんなにしていなくって、もっとシンプルな感覚でやりました。僕らが作る場所やセレクトしたラインナップに共感してくれた人が来てくれればいい。もっと言えば、自分たちの個人的な趣味やセンスもかなり入っているので、そういったことが伝わる人が集まってくれたらなと。それで蓋を開けてみたら、イメージしていた音楽とかカルチャーに興味があるピースな雰囲気の人たちがたくさん来てくれたし、お子さんを連れた若いファミリーも想定以上に多かった。世代とか思想とか置かれた環境とかに関係なく、音楽やカルチャーが好きなみんなが集まれるフェスにしたくてキッズエリアを充実させているので、そこはめちゃくちゃ嬉しかったですね。

-開催までの急ピッチだったということですが、苦労したことなどは?

初回ということで、アーティストのブッキングをはじめ、全部苦労しましたね。他にも、昨年の会場はもともとフェスをやっているような場所でもなかったですし、想定以上の来場者数だったので、飲み物の提供量とか、トイレの数、バスの本数や導線といった基本的なことから、コロナ対策も含めて本当に大変でした。特に初日は反省点が多く、出来る限りのことを2日目に改善しました。

今年も富士山が見える場所での開催!

-それでは今年の開催について聞かせてください。昨年が想定以上の来場者数だったことも踏まえて、今年は会場を変更したということでしょうか?

去年は1万人が来場してくれたんですが、キャパシティ的には限界でした。コロナ対策を考えなければもっと入るかもしれないけど、そうはいかないので。場所が広くなれば、同じ人数でももう少し余裕をもってゆったりできるし、みんながそれぞれの楽しみ方ができる。今年は去年よりさらに来てくれる人数も増えそうなので、変更しようということになりました。

-静岡・御殿場市での場所変更ですが、何か繋がりやこだわりがあるのでしょうか?

1回目と同様、「富士山バックのステージ」というのにはこだわりました。あと、このフェスをスタートするときから御殿場市とはご縁があって。こういうフェスやイベントを作る上では、街との連携も重要だと思うんです。去年の開催を経て良い関係が築けていたので、会場を変えるとしても、同じエリアでという前提で探していたら、いい場所が見つかったという流れです。

-今年の会場となる「遊RUNパーク玉穂」はどういった場所なのでしょうか?これまでフェスなどが開催されていない場所かなと。

おっしゃる通り、ここでフェスをやったことがない新たな場所です。ランニングロードがある大きな公園で、2020年にできたばかりなんです。去年の2倍以上の広さなので、サウナ村など、各コンテンツもさらに充実させます。規模を追いかけているわけではないけど、心地いい空間で気持ちよくやれたらと思っています。

-今年のラインナップについても教えてください。

直近の第3弾発表では、KICK THE CAN CREW、リーガルリリー、birdの3組が追加されましたが、くるり、スチャダラパー、クラムボン、KANA-BOON 、Yogee New Waves、chelmicoら全12組が出演してくれます。ラインナップ全体を通して、DJ的な感覚で選ばせてもらっているところはあります。流行ってるとか有名だからとかではなくて、作ろうとしている世界観、来てくれる方が求めているもの、そして、何よりも自分たちが好きだと思える音楽家かどうかという点を大切に、バランスを考えての12組になってます。

-音楽以外のコンテンツについてはいかがですか?テーマなどはあるのでしょうか?

音楽とクラフトカルチャーにまみれられる場所にしたい、というのが前提としてあります。それ以上のテーマは敢えて設定してないですが、強いて言うなら、こだわるポイントはリアルであること。流行ってる、今っぽいとかじゃなくて、自分たちが面白いと思うそれぞれのカルチャーの今を、ちゃんとリアルな形で届けたい。その場が最高に楽しいのはもちろんだけど、みんなの明日が楽しくなっていくきっかけになるような場にしたいと思っています。

-公式サイトを見ると、マーケット、サウナ、フードに加えて、アウトドアスポーツなどもあります。

去年より充実させたサウナ村や注目店の集まるロースターコーヒーの飲み比べエリアに、クラフト市やキッズエリアももちろんあります。新しいコンテンツでいうと、北欧のスポーツ「モルック」や、「カジュアルゲートボール」といった友達や家族で気軽に遊べるようなスポーツも楽しめます。会場が広くなって色んなことができるので、やってみようかと。自分たちが胸を張っていいと思えるものをフェスに組み込んでいます。

-少し話が逸れるのですが、丸林さんの話を聞いていて思ったのは、作っている自分たちが一番のターゲットで、そういうことが去年の集客にもつながったのかなと思いました。

まさにそうなんです。自分たちがターゲット。フェス全体もそうだし、出てくれるアーティストも作家さんもコンテンツも、自分たちが楽しめるかどうか、好きかどうかを大事にしています。好きだからこそちゃんと伝える使命感がより強くなる。より本気になれる。あと、去年やって、来てくれるお客さんと僕たち主催側の「趣味とか感性が近いよね」という仲間意識みたいなものを実はヒシヒシと感じました。だから自分たちが自信を持って面白いと言えるものを今年も厳選しました。

日本の音楽シーンに定着するフェスに

-今後はどんなフェスを目指していく予定ですか?規模拡大するのか?現状維持など何か展望があれば。

企業がフェスをやるとなると、事業のプロモーションをするイベントだと思われる方がいるんですが、僕たちにそんな感覚は全くありません。日本の音楽シーンに定着するフェスにしたいというのが大前提としてあって、覚悟を決めてやっています。何万人来場みたいな目標は定めてないですが、自分たちのスタイルを大切にしながら、当たり前に、音楽シーン、カルチャーに定着するフェスになるまでやりたいなと。

-既存のビジネスの延長というより、ひとつの事業としてやっていくというイメージですか?

そうですね。自分たちの感性や情熱を投入する大切なフェスだからこそ、自分たちの足で立てるフェスにしなければならないと思っています。フェスは毎年大赤字だけど、他の事業で補填する、プロモーションと割り切る、楽しいからいいや、みたいなやり方だと絶対ながくは続かない。そんなものだったら社長が変わったり、体制が変わったり、経営が悪化したりしたら、事業として真っ先に切られてしまうからです。だから事業単体として成立するものにする。それをやった上で、自分たちが作りたい場や世界観にこだわって、それを継続・進化させることが大事だと思っています。

-フェスを主催する企業もあれば、スポンサーにつく企業もありますが、フェスと企業の関係については何かお考えはありますか?

まずスポンサーに関してですが、そのお金があることによって成立するフェスもあって、そのフェスが結果的にいいフェスになれば、音楽カルチャー自体の発展になるし、アーティストの活躍の場も増えるからよいと思います。ただ自分たちが主催としてやるならまた違うと思っています。ある事業のプロモーションの受け皿とか、儲かりそうだからやるとかでは、絶対うまくいかない。カルチャーに対する愛情とか理解がないと、それって結局来てくれた人に伝わるし、出てくれたアーティストにも伝わってしまう。そうなると最初はお金かけて豪華なラインナップや見栄えにして人を集めたとしても続いていかないと思います。リアルじゃないものは必ず潰えるというのが持論です。

-その上で自分たちの足で立てるフェスにしていくと。

そうですね。好きや憧れだけではダメ。商売目的で安易に考えるのは論外。カルチャーへの愛情や理解があった上で、ちゃんとフェスをひとつの事業としても成り立たせる。それが“確実につづけていく”ための条件だと思います。そのあたりはちゃんと自分たちの中で意識しながら、これからも遊び心と情熱を大切に、日本の音楽シーンに定着するフェスを目指して頑張ります。11月の「Creema YAMABIKO FES 2022」でみんなと同じ時間、空間を共有できることを楽しみにしてます。

Interview/Text:津田昌太朗
Photo:Creema YAMABIKO FES

出演アーティスト

11月5日(土)

-スチャダラパー
-chelmico
-bonobos
-KICK THE CAN CREW
-リーガルリリー
-bird

11月6日(日)

-くるり
-クラムボン
-kiki vivi lily
-KANA-BOON
-Yogee New Waves
-IKE & rice water Groove Production

Creema YAMABIKO FES 2022

11月静岡にて音楽とクラフトの野外フェス「Creema YAMABIKO FES 2022」開催決定

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