インタビュー

FM802 DJ竹内琢也が気になるあの人にインタビュー vol.07 | tofubeats

FM802のDJ竹内琢也が音楽業界の気になる人にインタビューする「BEAT EXPO 10-minutes GRAVITY × Festival Life」。今回は、メジャー3作目となるアルバム「FANTASY CLUB」をリリースし、9月には東京と大阪でのソロライブを行うトラックメイカー、tofubeatsさん。アルバムのコンセプトや、活動を通しての変化について語ってもらいました。(interview 2017.5.23/30)

Festival Life × FM802 BEAT EXPO 10-minutes GRAVITY
vol.07 | tofubeats interview by 竹内琢也

-メジャー3作目となるアルバム「FANTASY CLUB」のお話をじっくりお伺いしていきたいのですが、セカンドアルバム「POSITIVE」は2015年だったので、およそ1年半ぶりのアルバムリリースですよね。「FANTASY CLUB」は、ファーストやセカンドとは違うムードで、EP「STAKEHOLDER」に近い印象を受けました。

メジャーデビュー以前にやっていた少しドープな音楽や、暗めの曲を小出しにしていこうと思って作ったのが「STAKEHOLDER」なんですが、今回のアルバムはそういう曲をいっぱい出していますね。フルアルバムということもあり、じっくりと、元々自分が好きだったことを詰め込んでみようと思って作りました。

-“元々自分が好きだったこと”というと、どういったものもことなのでしょうか?

「First Album」や「POSITIVE」は“J-POPを作ろう”というコンセプトで制作しましたが、今回はそういうものに縛られないようにしました。例えばもっとクラブミュージックっぽいものだったり、新しめのアプローチだったり、一般的にはそこまで売れていないとされている音楽でも、自分の好きなものはどんどん入れてみようと。

-「First Album」と「POSITIVE」を出したからこそ、今回は思い切って振り切ってみようという感じになったのでしょうか?

それもありますが、「前回はあれを出したから今度はこっち」というわけではなく、自分の中にどちらもやりたいという気持ちがあったんです。「First Album」や「POSITIVE」のときは自分の名義で“J-POPな気持ち”を解消しようという思いがあったんですが、「STAKEHOLDER」や「FANTSY CLUB」のリリースの間にもアニメの楽曲制作などしていたので、J-POPっぽいものを作る欲を満たせる仕事がいっぱいあったんです。

-なるほど!

それなら自分の名義でドープめのことをやってみようというようなバランス感覚があったかもしれないですね。

-J-POPを作りたいという欲求は、音楽としてのいわゆるJ-POPらしいものを作っていくということですか?

そうです。かつて世間のみんなを夢中にさせていた、あのJ-POPです。誰もが知っている曲ができたらいいなというようなことは、いつも考えているんです。ただ、音楽的なルーツでもあるクラブミュージックを作りたい気持ちもありますし、うまい感じで融合したり、どちらも好きになってもらいたいなという気持ちが昔からずっとありますね。なので、今はどちらもやるのが大事だと思っています。

-では、どちらかの気持ちが失われたというわけではないんですね。

単純にアウトプットを変えていくと、聴いてくれる人が新鮮に感じてくれるかなと。

-今回のアルバム、「FANTASY CLUB」冒頭の「CHANT #1」、「SHOPPINGMALL(FOR FANTASY CLUB)」、「LONELY NIGHTS」は、歌詞がすごく印象的でした。割とパーソナルなことを歌っているように思えるのですが、この3曲は普段tofubeatsさんが考えていることを歌詞にしたのですか?

誰かに歌ってもらうときはその人が歌うようなことを歌詞にするので、いろんなものが挟まるんです。でも自分で歌うときは、人に頼めないようなことを言った方が良いなってことがあるので、今回はそういう感じになりましたね。

-過去のウェブインタビューでは、「個人的なことを薄める」作業も大事だとおっしゃっていましたよね。

自分を無くすという作業が大事なんですよ。でも、今回もやってないわけではないんですね。歌詞の内容は刺々しく聞こえるんですけど、実はそこまで攻撃的なことは言ってなかったりもするんですよね。なんとなく今思っていることを、フワッとまとめとこうみたいな。単純に、今のムードがこういうムードなのかなという感じですかね。

-それは自分のムードですか?それとも世間?

世間から影響を受けた自分という感じですかね。あとから自分の曲を聴いて、あのとき俺はこう思ってたんだなと思うのが好きなんです。曲作るときには何となく作ったものが、あとからインタビューを受けて納得いったり。「今回はパーソナルだったのか!」と自分で確認することもありますよ(笑)。

-ところで、ショッピングモールとか複合商業施設とか、お嫌いなんですか?

そんなことないですよ(笑)。ショッピングモール、大好きです。

-「SHOPINGMALL」の歌詞は、けっこうショッピングモールを揶揄しているような感じがありますよね?

いや、これを揶揄していると受け取るかそうでないかは、聴く人次第だと思っています。聴く人の心を写す鏡みたいな曲なんですよ。

-そうかもしれませんね。

この曲を作った理由は、ショッピングモールに行ったときに、何もないなと感じると同時に、自分はショッピングモールしか使っていないということにも気づいたからなんですよね。ショッピングモールしか行く所がないし、生活はそこで成り立っているから、なくなったら困るんです。でも、何かがつまらないと思っているんですよ。このアンビバレンスな感情って大事じゃないですか。そういう、どちらともつかない気持ちを曲にできたらいいなと思っていたんです。

-なるほど。

どちらともつかない気持ちって、この時代、いっぱいあると思うんです。ネットでは過激な言葉が取りざたされているけど、本当のところはよくわからないということが多いんじゃないかと思っていて。それなら、「俺は全然分からないぞ!」というスタンスで、わからない気持ちに正面から向き合ってみたのが、今回の「FANTASY CLUB」のコンセプトです。

-わからないことと言うと、例えばどういったことでしょうか?

例えば、ショッピングモールに行ったときに「安い食品を売るから農家の人が困るんだ!」というようなことをついつい言ってしまいがちなんですけど、それを買って食べているのも自分なんですよね。しかも、それを楽しんでたりするんです。そういう人間が持っている、本来の矛盾みたいなものを曲にしたいというのは全体のテーマでしたね。

-「SHOPPINGMALL」の歌詞、例えば「君らが数百万回再生したバンドの曲が流れていた」や、「何かあるようで何も無いな」は、何かを否定しているわけではないんですね。

悪意も否定も、微塵もないですよ!

-「First Album」や「POSITIVE」のときと比べて、やりたいことは変わっていないんですか?

ずっと変わっていないです。ただ、僕が本来やりたかったことというのは、J-POPとクラブミュージックをちゃんと融合させることや、自分が好きなものの形を変えて多くの人に聴いてもらえるようにすることだったんですが、過去2作は、みんなが好きであろうものを頑張って作ることをテーマにしていたんです。今回はそこの少し比重を変えて、自分が本来好きだったものをどう理解してもらうかというテーマに変えたという感じですね。

-フィーチャリングゲストのラインナップがこれまでと少し違うのもそういう理由からですか?

そうですね。これまでは藤井隆さんとか森高千里さんとか、ある意味みんなが知っている方々と一緒にやって、僕が勉強をさせてもらうというやり方だったんですが、今回はどっちかというと、自分より年下のYOUNG JUJUとか、いつか呼びたいと思っていたsugar meさんのような、ある意味僕のやりたいことに協力してもらうメンバーを今回は揃えました。

-ゲストを呼ぶときは、曲が先にあって誰を呼ぶか決めるんですか?それとも、誰を呼ぶか決めてから曲を作るんでしょうか?

僕はいつも、誰を呼ぶか決めてから曲を書くんですが、今回は先に曲を作ってからゲストを決めました。その後また曲を直すような感じでしたね。

-tofubeatsさんといえば、ゲストに曲を合わせて書くみたいなイメージがありますが、だからこそ今回の形は、けっこう大きな変化じゃないですか?

今回は、曲を作ったときに「これは人に歌わせられないな」と感じる曲が多くできていたんです。自分の声はあまり好きではないんですが、「SHOPPINGMALL」のような曲は自分で歌わないと意味がなくなってしまうと思ったので。

-自分が思っていることだから、自分で歌ってみる、ということでしょうか。

そうですね。それに、自分で思っていることでも、「SHOPPINGMALL」みたいな歌詞を人に歌わせると、それこそ、悪意が生まれてしまうと思ったので、こういうのは自分で引き受けようと。

-今回のアルバム、「FANTASY CLUB」はどんなテーマで制作しましたか?

1時間、アルバムを通して聴いてもらうのが目標です。「1時間、曲を聴いてもらう」ことって今、すごく難しいと思うんです。5分の曲をフルで聴くのだって、飽きてしまったりするから難しいじゃないですか。でも、そんなことを言っておきながら、僕もそうなんですよ。僕も「Instagramで動画見て満足!」みたいな人生になっちゃっているんです(笑)。

-例が極端ですね(笑)。

もうそれだけ見てたら、暇潰れちゃうみたいなことあるじゃないですか。昔は電車の中で本を読んだりしてたのに、今はTwitterを見てたら満足しちゃっているような。そういう時代に、作る側として“1時間”とどう向き合うか。それって想像力なんじゃないかなと思ったんです。そういう理由があったので、想像力をテーマにしたくて、タイトルに「FANTASY」というワードを使ったんです。「CLUB」という言葉で締めくくって、アマチュアなイメージのタイトルにしました。でも、聴いてくれた人には、何かフィードバックのあるようなアルバムにしたいなと思って作りました。

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好きな声、シンパシーを感じるアーティストは?

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